山形県の「寒鱈汁」で、ふんだんに使われる食材とは?

極寒の日本海が庄内地方に与えてくれる最高のご馳走が寒鱈です。その寒鱈を丸ごと使った味噌仕立ての鍋を寒鱈汁といいます。冬の訪れが楽しみになる絶品です。

タラを使った鍋の王様

山形県庄内地方は日本海に面し、冬期間は厳しい寒さに包まれ、吹きつける強風と唸るような荒波が打ちつけます。そんな1月初旬から立春にかけて水揚げされるタラを、この地方では寒鱈と呼びます。身が引き締まっていることはもちろん、産卵のためイカやタコなどを食べながら大陸棚へと上がってきますから、充分に脂ものっているのです。地元民が愛してやまない冬の味覚です。このタラをぶつ切りにして丸ごと食すのが、庄内名物、寒鱈汁です。胴とガラを全部入れる鍋で、どんがら汁とも呼ばれています。

タラを使った鍋ならタラチリが有名ですが、青森のじゃっぱ汁や秋田のざっぱ汁などと同じようにタラを余すことなく使うところに特徴があります。なかでも寒鱈汁は野菜が少ないため、タラの味を真正面から堪能でき、コラーゲンをたっぷりと食せる鍋なのです。忘れてはならないのが、あぶらわたと呼ばれる肝で、濃厚な旨味はまさに海のフォアグラです。それに勝るとも劣らないのが、きくわたと称される白子です。甘味とコクの共演に舌が歓喜します。

つくりかたはシンプルだが忘れられない味になる

地元の料理店や居酒屋で出されることはもちろん、一般の家庭でも料理されます。もとは漁師料理ですから、つくりかたはシンプルで豪快です。1本の寒鱈を頭から内臓までぶつ切りにして全て鍋に入れます。灰汁を取りながら煮て、火が通ったら味噌を加えます。肝をすり潰して入れると表面に皮膜ができるため、冷めにくく風味を逃がしません。白子は生で食べることができるほど鮮度がよく、しかも繊細です。そのため最後に入れるのがコツです。あとは、かたちが崩れないよう気をつけながら煮ます。ぐつぐつと煮立てると、白子が壊れるだけでなく、味噌の味も壊れてしまうので注意が必要です。相性がいいのは豆腐と長ネギで、器に盛りつけたあとで岩ノリをトッピングするのが通の食べ方です。シメの雑炊には、ぴりりと七味を利かせることがおすすめです。

山形県には銘酒が揃っていますから、この寒鱈汁は最高の肴になります。しかも鱈の白子や肝まで余すところなく堪能できるわけですから、寒い冬を乗り越えるための滋養効果にも期待できるのです。庄内地方では、毎年、寒鱈汁まつりも開催されています。

厳しい自然環境が生むのは最高の美しさ

庄内地方は、北に出羽富士と称される鳥海山、東に出羽三山、南にはブナの原生林で有名な朝日連峰の山々が控えます。日本海からもたらされる海の幸だけではなく、四季折々の山の幸にも恵まれているのです。さらに、開湯1000年を超える温泉があり、長いあいだ湯治場として利用されてきました。出羽山楽郷のひとつに数えられています。いにしえから鳥海山と出羽三山は山岳信仰の聖地として崇拝されており、死後も衆生救済に尽くすことを願った即身仏が数多く奉られてきました。そのような謹厳な世界は、じつは自然のなかにも見て取れます。

日本海に沈む夕陽は美しく、とくに鳥海山や庄内浜からの眺めは人気が高いです。そんな絶景スポットで、空気が澄んでいる日であれば、グリーンフラッシュを見ることができるかもしれないのです。太陽がその本体を水平線に沈める間際、オレンジ色の光が一瞬だけ緑に変わる場面に遭遇する可能性があります。緑閃光とも呼ばれ、観た者は幸せになれるという言い伝えが残っています。シャッターチャンスを狙うなら、燃えるような海はもちろん、宵に包まれる瞬間がおすすめです。

山形庄内地方に伝わる最高のソウルフード

山形庄内地方に住む者にとって、なくてはならない存在が寒鱈汁です。どんなに厳しい冬が訪れても、かじかんだ指先と心を温める定番の鍋なのです。最高の鮮度を誇るからこそ、白子と肝の混じり気のない旨味を堪能できます。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 山形県の「寒鱈汁」で、ふんだんに使われる食材は?

A. 鱈の白子

Q. 山形県の「寒鱈汁」のことを、地元では何と呼ぶ?

A.どんがら汁