列車の旅の楽しみの一つと言えば、駅弁ですよね。今回ご紹介する「桃太郎の祭ずし」は、誕生から50年以上も販売され続けているロングセラーのお弁当なのです。
かわいいピンクの桃の器に入った人気の駅弁
「桃太郎の祭ずし」は、岡山県を代表する駅弁のロングセラー。桃太郎のイラストが描かれた色鮮やかな紙の箱を開けると、桃の形を模したピンク色のユニークな容器が出てきます。ふたを開ければ、ぎっしりと敷きつめられた錦糸卵の上に、10種類以上の具材が散りばめられ、色鮮やかで食べる前からワクワクします。
その内容は岡山名物の「ママカリの酢漬け」をはじめとして、「有頭海老煮」「焼きあなご」「鰆の酢漬け」「ままかり酢漬け」「たこ酢漬け」「あさり煮」「たけのこ煮」「椎茸煮」「青菜漬け」「錦糸卵」「青菜漬け」、そして箸休めになる「酢蓮根」や「紅しょうが」という豪華なラインナップ。どれから食べようか迷ってしまいます。
酢飯や錦糸卵は関西風のやや甘めの味付けで、煮物はしっかりと味が浸みていており、酢漬けはソフトで優しい味わい。どの具材も酢飯との相性は絶妙で、飽きることなくお箸が進みます。ユニークな桃型の容器はプラスチックでできているので、旅の思い出として持ち帰って再利用できます。観光で訪れた方が、お土産として大量に購入する方も多いという大人気のお弁当なのです。
「桃太郎の祭りすし」の由来
「桃太郎の祭りすし」は岡山県の「ばら寿司」という郷土料理を駅弁としたものです。ばら寿司の誕生は古く、江戸時代の初期まで遡ります。備前岡山の初代藩主である池田光政は、厳しい藩の財政から、藩主自らも質素倹約を心がけており、「食膳は一汁一菜」というお触れを出して、庶民たちの贅沢を戒めました。このことに反発した庶民は、多くの魚や野菜を混ぜ込んだすし飯を作り、これを「一菜」としたのです。江戸時代もなかば頃になると、家々でそれぞれ工夫を凝らしたお寿司が、冠婚葬祭の時などに振る舞われるようになりました。酢飯にさまざまな具材を混ぜ込んで、ひとつひとつ味付けした山の幸や海の幸を飾るという手の込んだお寿司は、岡山の郷土料理です。酢飯の上にばらばらと具材をのせることから、「ばら寿司」と呼ばれるようになりました。
岡山の老舗のお弁当屋さんで作られている「桃太郎の祭りすし」
「桃太郎の祭ずし」を作っているのは、岡山市に本社をかまえる三好野本店です。三好野本店の歴史は古く、天明元年(1781年)創業の米問屋でした。当時は、津山藩松平家に仕え、藩米を取り扱う蔵元を務めていたそうです。明治時代になると、高級旅館「三次野」を営み、明治24年(1891年)の岡山駅の開業と同時に、駅の構内に支度所という飲食を伴う待合所を開きました。そこで提供した、奈良漬を添えたおにぎりを販売したのが、駅弁を始めるきっかけになったそうです。
数多くの駅弁を手掛ける中で、地域色を出すために注目したのが岡山の郷土料理である「ばら寿司」でした。家庭で作るばら寿司は酢飯に椎茸やかんぴょうなどの具材を混ぜ込みますが、こうすると劣化が早くなってしまいます。そこで、酢飯の上に具材を並べるに置き、本来の「ばら寿司」とは差別化するために「祭ずし」の名前で販売しました。その後、さらに岡山らしさが感じられるようにと、桃太郎の伝説にちなんで桃型の容器に変え、名前も「桃太郎の祭ずし」と変更しました。現在では観光客はもちろん、地元の人々にも親しまれているお弁当です。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 名物駅弁「桃太郎の祭り寿司」といえばどこの都道府県のもの?
A. 岡山