ふぐの刺身を「てっさ」、ふぐのちり鍋を「てっちり」といいますが、この「てっ」とは何に由来する?

高級魚の1つ、ふぐ。大皿に花のように美しく盛られたお刺身の「てっさ」に、ぷりぷりとしたふぐの身が存分に味わえる「てっちり」。一度は食べてみたい料理ですね。ところで、「てっさ」「てっちり」の「てっ」は何から由来するものかご存知でしょうか?

ふぐは「鉄砲」!?

その昔、食べるとあたり、あたれば死ぬこともあるということからフグのことを「鉄砲」と呼ばれていたそうです。毒にあたると死ぬフグと、弾にあたると死んでしまう鉄砲をかけたのですね。ふぐの刺身は「てっぽう」と「さしみ」が合わさって、それが「てっさ」になりました。また、「ちり」とは白身魚の切り身を野菜や豆腐とともに水炊きにした「ちり鍋」のことで、魚の切り身を熱い鍋の中に入れると、身がちりちりと縮んでいく様子から「ちり鍋」と名付けられたと言われています。この「鉄砲」と「ちり鍋」の二つが合わさり「鉄のちり鍋」となり、「てっちり」へと変化していったようです。ちなみに、フグのお鍋は「鉄砲鍋(てっぽうなべ)」とも呼ばれています。

長い間、食べることができなかった魚

日本でふぐが食べられてきた歴史は古く、縄文時代から食されてきましたが、しかし、その長い歴史の中で禁じられた時代もありました。

戦国時代、1590年に天下統一を果たした豊臣秀吉は朝鮮へ出兵する際、肥前(現在の佐賀県北部、唐津市西部、東松浦半島西部あたり)に前線基地となる名護屋城を築きました。そこで兵士たちがふぐを食べて毒にあたり、多くの死者が出てしまうということが起こったのです。そのため秀吉はふぐを食べることを禁止し、禁止令は時代が変わっても継続されることになりました。ようやく解禁されたのは明治22年のことで、なんと250年以上もの間禁止されていたのです。しかし、当時は解禁といっても一部の地域のみのことで、全国的に許されたのは太平洋戦争が終わってから。実に長い間、ふぐは禁断の魚だったのです。

とは言うものの、おいしいものが食べたい気持ちは今も昔も変わりません。禁止されていた期間も実は庶民の間では密かにふぐは食べられていました。公にには言えないので、ふぐのことを「てっぽう」という隠語で呼び、こっそり流通させていたのです。

てっさの食べ方

てっさは直径30~50センチほどの大皿の上に、花のように綺麗に盛り付けられるのが特徴です。その盛り付け方法には、菊の花のように盛り付ける「菊盛」や、牡丹の花のように盛り付ける「牡丹盛」というものがあります。どちらにしろ美しく、どうやって最初に箸を入れればいいのか迷うところ。食べ方は諸説あるのですが、てっさの盛り付けを崩さず、最後まで美しくいただくためには、中央から箸をつけるのが正解とされています。まずは添えてあるネギ1、2本をお刺身の2~3枚で巻いて、お好みの薬味を入れたポン酢につけていただきましょう。

ちなみに、箸をざざっと横滑りさせ一気に何枚もの刺身をすくい上げて食べる、いわゆる「長嶋食い(長嶋茂雄さんが初めて行ったことが起源とされる)」は、マナー違反なので、気をつけてください。

食べるだけじゃない、おいしいふぐひれ酒

ふぐは身を食べるだけじゃなく、こんがり焼かれたふぐひれを、熱々に燗した日本酒にひたしていただく「ひれ酒」も人気。ひれの香ばしさや旨味が日本酒に移り、凍える季節にうれしい冬の味わいです。ふぐひれ酒をおいしくいただくためには、気をつけるべきポイントがいくつかあります。まずは、ひれを弱火でじっくり時間をかけて焼くこと。焼きが足りないと生臭さが残る場合があり、少々焦げるくらいまで、ていねいに焼きましょう。一般的に熱燗というと、60℃前後の温度が多いのですが、ひれ酒は75~80℃くらいの超熱燗にします。ひれに含まれているアミノ酸などの旨味が日本酒にしみ出す温度が70℃以上のため、それより低い温度ではおいしいひれ酒を楽しむことができないのです。そして、飲む前にアルコールをとばしましょう。アルコールを飛ばすことで、超熱燗にもむせることなく飲みやすくなるのです。

ザ・ご当地検定の問題

Q. ふぐの刺身を「てっさ」、ふぐのちり鍋を「てっちり」といいますが、この「てっ」とは何に由来する?

A. 鉄砲