真っ白な見た目から名前が付いた、山口県の宇部地方で食べられている押し寿司は?

山口県の宇部地方に真っ白な見た目の押し寿司があります。酢飯をただ広げただけのように見えるその真っ白な押し寿司の名前は、一体何と呼ばれているかご存じでしょうか?

山口県の郷土料理「ゆうれい寿司」?!

山口県宇部市(やまぐちけんうべし)。瀬戸内海に面したこの町は、200点を超える野外彫刻が設置され、彫刻の街として市街地や公園など市内の至る所でアートな作品に出合えます。
そんな宇部市にはユニークな「ゆうれい寿司」が郷土料理として語りつがれています。
山間地域である山口県宇部市内の吉部地区(きべちく)(旧・厚狭郡楠町吉部)で「ゆうれい寿司」が作られ始めたのは、江戸時代中期と言われています。その場所は山間部なので魚貝類が獲れず、お米だけでお寿司を作ったのが始まりです。
酢飯を広げた真っ白でのっぺらとした見た目で、「具が消えた」という表現からその名前が付いたのだそう。
現代の「ゆうれい寿司」は、お米の真っ白さに具がないのかとおもいきや、酢飯の下には色とりどりな具材がたくさん入っています。そんなユニークな美味しい郷土料理「ゆうれい寿司」が最近、再び注目を浴びているようです。

「ゆうれい寿司」に潜んでいるのは…?!

「ゆうれい寿司」が語りつがれてきた山口県宇部市内の吉部地区は、山々から湧いてくる良質な水を使った「棚田(たなだ)」でお米が栽培されていて、「全国米食味鑑定コンクール」で「奨励賞」を受賞するほど、お米の美味しさには定評があります。
「ゆうれい寿司」は、そのお米に柚子酢を加え風味豊かに仕上がった酢飯が敷かれていて、酢飯の上には、幽霊を連想させる「柳の葉」に見立てた細く切ったきゅうりがハの字に添えられています。
昔はこの酢飯だけで具は一切入っていないものを「ゆうれい寿司」と伝承されてきたようですが、最近人気の「ゆうれい寿司」には具を加えて現代風にアレンジが加えられています。
白い酢飯の下には、宇部市吉部地区の「椎茸」や季節の「山菜」を甘辛く佃煮風に煮込んだものや、エビや錦糸卵、桜でんぶなどが潜んでいます。それらを大きな木枠に敷き詰め、上から「もろぶた」で押し固めます。具と酢飯の2層にすることで、切ると断面が美しくなります。
かつては地域の秋祭りなどの行事や盆、正月などハレの日に近所の人たちで集まって作り、それを正方形に切り分けてみんなで食していました。
そんな特別な食べ物である「ゆうれい寿司」。現在は『楠こもれびの郷』で毎月第2、第4土曜日に限定で販売されています。『楠こもれびの郷』では「ゆうれい寿司」をはじめ、郷土の文化を伝えていくための取り組みを積極的にされています。

「ゆうれい寿司」が100年フードに?!

文化庁では、我が国の多様な食文化の継承・振興への機運を醸成するため、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を、100年続く食文化「100年フード」として認定しています。
認定には「伝統」「近代」「未来」の3部門があり、2回目となる令和4年度は、90件の応募に対し70件が認定されました。「伝統」部門で選ばれた中の1件に「ゆうれい寿司」が認定され、「100年フード」認定市内第1号となりました。
しかし、吉部地区で古くから伝わる「ゆうれい寿司」は、宇部市を代表する郷土料理ですが、地域の高齢化、後継者不足によりその存続が危うくなってきていました。
そんな中、100周年を機に市民はもちろん、市外の方にも広く知っていただき、この味と伝統を末永く引き継いでいきたいという思いで、さまざまな取り組みに励んできました。
認知度の向上をねらって、ゆうれい衣装での販売や、「ゆうれい寿司」のPR動画を作成するなど、こうした市民プロジェクトで「ゆうれい寿司」のブランド化に成功したのだそうです。
実はこの「ゆうれい寿司」、小僧寿しチェーンではちょっと前から夏になると売り出されています。期間限定品なので見つけたらこちらもぜひ。なにより現地での「ゆうれい寿司」も堪能してみてください。

ザ・ご当地検定の問題

Q.真っ白な見た目から名前が付いた、山口県の宇部地方で食べられている押し寿司は?

A.ゆうれい寿司