高級炭の代名詞「備長炭」。名前の由来は?

高級炭の代名詞「備長炭」。ウバメガシを材料に作られる白炭で、香りがよく、長く燃焼します。鰻店や焼き鳥店など飲食店にも好んで使用される「備長炭」ですが、この名前の由来が一体何なのかご存じですか?

「備長炭」は開発者の人名から?!

和歌山県には紀州備長炭という名物があります。備長炭は炎や燻煙が少なく、一度火が付くと長く燃え続け、香りよく味良く料理が仕上がり調理に向いていることから、飲食店などにも好んで使用される高級炭です。叩けば高音で響くほどの硬さも特徴です。

この「備長炭」という名前は諸説ありますが、紀州(和歌山)の炭問屋の商人、備中屋長左衛門(びっちゅうやちょうざえもん)が、自らの名前を取って「備長炭」としたのが始まりと言われています。
和歌山の備長炭はウバメガシという木を材料に作っていきます。備長炭は、炭の中でも極めて高品質な木炭です。木炭は、黒炭白炭に分かれますが、備長炭は白炭に部類します。高熱で燻された後、炭を冷ます工程で灰をかけるので全体が白くなります。
備長炭は、焼き物に使うだけではなく、水に入れれば浄水作用があり、炊飯器に入れればお米が美味しく炊きあがります。また臭いを吸着することから脱臭剤としての使い方もあり、多岐にわたって活躍をします。

「備長炭」の仕掛け人「備中屋長左衛門」

日本最古の木炭は旧石器時代の遺跡にあるほど「炭」の歴史は古く、炭焼きの作り方は弘法大師・空海が仏教とともに日本各地に広めていったとされています。紀州においても空海が木炭の作り方を教えたとされています。
その木炭を高温で燻し高品質な白炭(備長炭)にしていくアレンジの仕方は、和歌山県田辺市秋津川で生業をしていた無名の炭焼き師が始まりなのだろうとのこと。
そして江戸時代は元禄の頃、紀州田辺の商人・備中屋長左衛門が、この地元・田辺に伝わる白炭を江戸に卸す際に使った商品名が「備長炭」です。
紀州のウバメガシを材料に作った「備長炭」は火力が強く、長く安定して燃えるという質の良さから江戸中で人気となりました。そしてその技術は日本各地へと広がっていったということです。
電気やガスが無かった時代に、木炭の火力を保つこと、木炭の品質を良くすることは大事なことでした。木炭産業の発展に多大な貢献を果たした備中屋長左衛門は、その功績により深水長左衛門という名で大年寄にまで出世をしたのだそうです。そしてこの「備中屋長左衛門」という名前は4代に渡って引き継がれていきました。

備長炭のよいところ

「紀州備長炭」にはウバメガシが使われており「姥目樫」とも「馬目樫」とも表します。和歌山の会津川上流などには多く育成していておよそ20年で成木になると言われています。
備長炭の炭焼きはウバメガシを伐採するところから始まり、窯におさまるように原木をまっすぐに整える工程、窯の中に原木を立てて窯いっぱいに並べていく工程、窯の口を塗りかためてふさぎ、燻して一週間様子を見る工程、出した木炭に灰をかけ冷まし大きさを整えるように割る工程、箱詰めをする工程…とたくさんの手作業、力作業が必要です。
「紀州備長炭」は高温の窯で焼いて作ります。炭素以外の水分や油やガスなどが含まれていないので、調理に使う際には素材がパリッと焼きあがり、炭自体も長時間燃焼します。煙も少ないため、素材に雑味が付かず炭火焼や燻製にも重宝されます。
燃料以外に利用される「消臭効果」や「浄化作用」は、備長炭に空いた無数の小さな空洞によるものです。この空洞(細孔)はさまざまな物質を取り込んだり吸着したり出来るのです。しかも備長炭1g当たりテニスコート1面強(200~300平米)の表面積があるそうです。
水道水のカルキ臭を取り除いたり、冷蔵庫や下駄箱などでの臭いを取り除いたりできるのはこの空洞のおかげです。
和歌山には、備長炭記念公園があり、製炭技術は「無形民俗文化財」になっています。電気やガスが発展してもこの備長炭を使った美味しさはマネのできないものでもあります。ぜひこの先も長く伝わっていってほしい技術です。

ザ・ご当地検定の問題

Q.高級炭の代名詞「備長炭」。名前の由来は?

A.開発者の人名