炭焼き料理によく使われる高級木炭「備長炭」の元となる、和歌山県の県の木は?

炭といえば「備長炭」。そう思い浮かぶ方が大勢いるのではないでしょうか。非常に馴染みの備長炭ですが、和歌山の県木に指定されている、その元となる木が何かはご存知ですか?

最高品質の木炭「紀州備長炭」

紀州備長炭はウバメガシを原料に作られる、固くて良質な白炭(「はくたん」または「しろずみ」)です。料理の加熱や焼き物には最適の材料となるので、全国の料亭や飲食店、またバーベキューなどで広く使われています。

和歌山県は日本有数の白炭の産地で、その品質の高さは世界中にある木炭の中でも秀逸です。高品質を誇る理由は原料となるウバメガシをはじめ、窯の構造や製炭方法にも関係しています。そのため、昭和49年には紀州備長炭の製炭技術が和歌山県の無形民俗文化財に指定されました。

紀州備長炭の特徴

紀州備長炭が評価される最大の理由は、その火力。赤外線量が高く、表面を素早く均一に焼き上げるため、食材の旨味を逃さずに閉じ込めます。遠赤外線が食材の中まで熱を通し、短時間でおいしさを失わず、ジューシーに焼くことが可能なのです。

紀州備長炭の歴史

今を遡ること江戸時代、紀州備長炭が誕生しました。紀州備長炭発祥の地である秋津川は和歌山県・田辺市の中心部から北へ、右会津川に沿って上流に向かうと、豊かな山林の合間にあります。当時より高品質な炭として有名だった「田辺炭」に目をつけた紀州田辺(和歌山県田辺市)の炭問屋「備中屋長左衛門」が、「備長炭」と名付け、江戸に卸したのが始まりと言われています。火力が強く長く燃える備長炭の評価は、たちまち江戸中に知れ渡ることとなり、後にその技術が全国へと広がっていきました。

紀州備長炭の製炭工程

紀州備長炭は職人の手によって大変な労力で作られています。まずは職人が自らウバメガシなどの原木を伐採するところからスタート。和歌山の険しい山の中で、木と向き合う作業はたやすいものではありません。伐ってきた原木は曲がりくねっており、これにのこぎりやナタなどで切り目を入れ、木片で作った楔を打ち込み、真っ直ぐする作業を行います。そして、数本ずつ束ねた炭材を窯の中へ立てて入れます。紀州備長炭の焼き方の特徴のひとつが、この「立て詰め」です。

窯口で雑木を燃やし、窯の中の原木を乾燥させます。窯の中の原木に着火したら窯口をふさいで原木を蒸し焼きにします。煙の色と臭いで窯の中がどうなっているかを判断し、排煙口の大きさの調節や窯口に小さな穴を開けたりと、炭化を常に最高の状態に保つように細心の注意を払います。

窯口を徐々に広げて空気を送り込まれると、窯の中で炭化された炭は真っ赤になって燃え始めます。これを「ねらし」と言い、この作業によってさらに炭化が進むのです。この時、窯の中の温度は1000度以上にもなります。「ねらし」をかけた炭は少しずつ窯口の外にかき出し、素灰(灰と土を混ぜたもの)をかけて、火を消します。灰の中から取り出した炭を一定の長さに断ち割って、直径や形によって等級ごとに選別します。このように、紀州備長炭は大変な手間ひまをかけて作られているのです。

燃料だけじゃない紀州備長炭

備長炭は叩くとキーンとクリアな音色が響きます。その特性から風鈴や炭琴(たんきん)と呼ばれる楽器が作られています。備長炭を入れてお米を炊くと、その遠赤外線効果によって、芯からふっくらとおいしく炊き上がります。また水道水に入れておくと備長炭の無数の小さな穴が臭いを吸着し、カルキ臭が軽減します。しかも含まれるミネラル分が溶け出してまろやかな水へ。備長炭には調湿効果もあり、除湿と加湿を行って室内の湿度を調節してくれます。お風呂に入れれば遠赤外線効果で血行が良くなり、体の芯からポカポカに温まります。このように備長炭は様々な多方面で役に立っているのです。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 炭焼き料理によく使われる高級木炭「備長炭」の元となる、和歌山県の県の木は?

A. ウバメガシ