スルメとニンジンの細切りを味付けして和えた「いかにんじん」は何県の郷土料理?

いかにんじんの歴史は古く、食べられるようになってから少なくとも100年以上は経っているといわれています。また、いかにんじんはその名前の通り、スルメイカとにんじんを使用するのですが、同じようにスルメイカやにんじんを使うものとして、北海道の松前漬けがあります。いかにんじんは、この松前漬けのルーツとなったという説もあるのです。

いかにんじんは、どのようにして生まれたのか?

いかにんじんは、福島県のなかでも福島市などの北部で生まれたとされています。福島ならではの地理的条件や気候に上手く合った郷土料理です。聞いたことがある人も多いかもしれませんが、福島県は浜通り・中通り・会津地方の3つの地域に分けられます。浜通りは福島県沿岸部です。中通りはちょうど真ん中の地域で、東北新幹線が通っている辺りです。会津地方は福島県の西部になります。この3つの地域は、気候的に異なった特徴を有していますが、文化や歴史もそれぞれ異なった独自のものを持っています。

それぞれの地域のあいだに阿武隈高地と奥羽山脈をはさんでいて、3つの地域での行き来が難しかったため、自然と歴史や文化も異なったものに分かれて発展したとされています。つまり、異なった文化を持つほどに往来が難しかった福島県内の北部で、新鮮な海のものを入手することは、昔は非常に難しかったと考えられるのです。しかも、福島県は冬の寒さが厳しく、食材が乏しくなります。そのような地理的・気候的条件のなかで、保存が比較的きくスルメイカとにんじんを用い、日持ちのする料理を作ったことは、非常に理にかなった自然なことであったと言えるでしょう。また、冬ににんじんの鮮やかな色が食卓に上るのは、目にも楽しいものであったに違いありません。

交通事情が格段に良くなった現代でも、いかにんじんは冬の保存食として福島の人に愛されています。微妙に調味料の配合を変えたり、入れる具材を工夫したりと、その家庭ごとの味わいがあります。

いかにんじんの栄養

いかにんじんは、スルメイカとにんじんを使用したシンプルな料理ですが、栄養価は非常に高いです。まず、にんじんは健康野菜です。β-カロテンが豊富に含まれており、風邪の予防や視力回復に力を発揮します。冷え性や便秘を改善してくれる効果もあるといわれていて、身体にちょっとした不調を抱えやすい人にとってはうれしい野菜です。そしてスルメイカは、低脂肪かつ低カロリーながらタンパク質を非常に多く含有しています。

人間の身体をつくるのは何と言ってもタンパク質ですし、タンパク質不足は認知症を招くという説もありますから、健康に過ごすためには適度なタンパク質の摂取が欠かせません。さらに、イカの栄養成分で有名なものに、タウリンがあります。栄養ドリンクなどにも入れられている疲労回復成分です。タウリンは肝臓の働きを助ける効果があるとされています。このように、いかにんじんには、栄養豊富な2つの食材が使われており、疲労回復には最適の料理と言えるのです。加えて、いかにんじんは多めに作っておいても日持ちがします。

保存方法にもよりますが、清潔を保って冷蔵庫に入れておけば、1週間ほどは大丈夫です。仕事から疲れて帰ってきたときにも、いかにんじんとお米さえあれば何とか食卓が整います。栄養成分に疲労回復効果があり、さらに調理の手間も省くことができるとあれば、疲れたときの食事としては万全です。いかにんじんを作らない手はありませんよね。次項では早速、いかにんじんのレシピを紹介しましょう。

いかにんじんのレシピと、美味しいアレンジ

用意する材料は、大き目のにんじんを3本と、スルメイカを3枚、昆布10cm×10cmのものを1枚です。スルメイカは、ゲソは使わず胴体のみです。また、小さめのもので構いません。昆布も薄いもので十分です。これらを全て、4cmから5cmくらいの長さの千切りにします。スルメイカと昆布は硬くて、包丁で千切りにするのは難しいので、キッチンバサミを使いましょう。スルメイカは最初に少しだけ炙ると、より切りやすくなります。さらに、乾物であるスルメイカや昆布は、戻ると大きさが増します。にんじんよりも気持ち細め、小さめを意識すると、出来上がりの大きさが揃い、食べやすさも見た目の美しさもアップします。

材料を全て切り終えたら、次に調味液を準備します。しょうゆ80cc・みりん40cc・お酒40cc・砂糖大さじ1と2分の1・お酢大さじ1を、小鍋に入れて軽く沸騰させます。沸騰させるのはお酒のアルコール分を飛ばすためですが、軽く湧き立てばよく、しっかりと煮きる必要はありません。保存容器に、千切りにしたにんじん・昆布・スルメイカを入れたら、調味液が熱いうちに注ぎ入れ、全体によく馴染ませます。粗熱が取れたら保存容器の蓋を閉め、冷蔵庫で1日から2日、寝かせれば完成です。食べるときにゴマを振りかけると、より風味が増します。

ここでは昆布を使うレシピを紹介しましたが、本来のいかにんじんはスルメイカとにんじんだけで作ります。その際は、調味料に少し出汁を加えたりすることもあるようです。しかし加えなくても、スルメイカから良い味が出るので、十分に美味しくできます。また、お酢を加えずに鷹の爪を少し入れたり、砂糖を多めにしたりするなど、調味液についてはさまざまなレシピがあります。お好みで色々と試してみると良いでしょう。スルメイカを切るのがどうしても大変な場合には、あらかじめ細く切って売られているスルメソーメンのようなものを利用しても構いません。その際には、調味液で塩分などを調整します。

いかにんじんは松前漬けのルーツとなったともいわれているほどなので、昆布だけではくカズノコなどとの相性も抜群です。入れると食べ応えがよりアップして、ちょっとしたおもてなしにも向く一品となります。また、いかにんじんはご飯のお供として、お酒のおつまみとして、そのまま食べても飽きずにすぐに食べてしまうほど美味しいのですが「多く作りすぎた」というときにはアレンジも自由自在です。まずはかき揚げを作るときに、材料に少し加えてみましょう。にんじんがすでに切られているので、あらためてかき揚げ用に準備する必要がなく便利ですよ。

また、にんじんに味がしっかりついていますから、揚げたあとに味をつけなくても、そのままで美味しいかき揚げになります。野菜炒めに入れるのも良いでしょう。にんじんの彩りを足すだけではなく、昆布とスルメイカの出汁が加わるため、ワンランク上の仕上がりになります。いかにんじんを漬けたあとの調味液も、煮物などに使い回してしまいましょう。

いかにんじんは通販でも購入が可能

作っておくと本当に便利で美味しい、いかにんじんですが「一度は本場の味を食べてみたい」「スルメイカはちょっと高いし、細く切るのが面倒」というときは、通販でもいかにんじんを購入できます。細く切られたスルメイカと調味液などがセットになった「いかにんじんキット」などもあるので、試してみてはいかがでしょうか。

ザ・ご当地検定の問題

Q. スルメとニンジンの細切りを味付けして和えた「いかにんじん」は何県の郷土料理?

A.福島県