山梨県の「大塚にんじん」が育つ環境でもある、肥沃な土地のことを、俗に何という?

日本各地で栽培されている野菜の中には、別の土地で栽培されていた野菜の種を植えたところ意図しない形で変化したものが沢山あります。その意図しない変化をした野菜の中で、山梨県の特産品大塚にんじんという野菜を紹介します。

大塚にんじんってどんな野菜

山梨県の大塚にんじんはどんな野菜なのかというと、品種は国分鮮紅大長という種類になります。国分鮮紅大長はその名の通りに、一般に出回る人参よりも太くて大きいだけでなく、人参特有のオレンジ色も通常の物よりも濃くほぼ赤色に近い状態なのが特徴です。さらに見た目が大きいだけが特徴ではなく、大塚にんじんに含まれている栄養素も優れています。

大塚にんじんは土壌の養分を大量に吸収して大きくなるので、にんじんの代名詞ともいえる栄養素カロテンの含有量がスーパーで出回るサイズの物よりも2倍ほど多く、それ以外のビタミンB群やビタミンCも同様に倍の含有量を誇っているのです。栄養価にも優れている大塚にんじんですが、元々山梨県の野菜というわけではなく北東に隣接する群馬県高崎市の名産になります。国分鮮紅大長は群馬県高崎市で、通常の人参の品種を植えたところ突然変異を起こして通常よりも2倍の大きさに成長したことが始まりです。それから突然変異した品種を改良し続けることによって、土壌の状態に関係せず大きく育つ国分鮮紅大長の種を開発することに成功し関東全域に広めます。

ただ群馬県高崎市で生まれた国分鮮紅大長は60センチの大きさですが、大塚にんじんはその倍の120センチまで育っています。なぜ大本の高崎市では60センチなのに山梨県では倍の大きさに育ったのかというと、その大きな要因となっているのがのっぷいというキーワードが関係しているのです。

大塚にんじんを生み出したのっぷいとは

のっぷいというのは、山梨の方言で肥沃な大地という意味です。大塚にんじんが大きく育つ理由はこの肥沃という言葉が重要であり、肥沃は土の養分が沢山で作物がよくできることを意味します。なぜ山梨県は土の養分が沢山で作物がよくできるのかというと、それは山梨県の自然環境が関係しているのです。

山梨県は日本の内陸部に位置し、富士山を含めた活火山がそびえる盆地になっています。この活火山が肥沃を生み出す要因になっており、大塚にんじんの産地大塚市の土壌というのは太古に八ヶ岳が噴火したことによって火山灰が堆積した火山灰土壌です。しかし火山灰土壌というのは、江戸時代の時に鹿児島県で桜島が噴火した際に発生した火山灰によって野菜が全滅したように野菜の生育には本来全く向かない土壌になります。それなのに山梨県では丈夫な野菜が育つのは、鹿児島とは一つだけ自然環境の条件が違うからです。

その条件というのが鹿児島の場合は火山灰を降らせる桜島は海で隔たれた孤島ですが、山梨県の場合はすぐ近くに活火山が存在します。活火山は噴火に熱によって溶けた鉱石が土壌に染みこんでいますが、この溶けた鉱石が野菜を大きく育つうえで重要なミネラルです。鹿児島は火山が離れているのでミネラルが入ってこないのですが、山梨県では近くにあるため雨や雪解け水と一緒に流れることで栄養価の高い土壌になります。

さらに大塚にんじんが本家の群馬県高崎市よりも大きく成長するのも、この火山灰土壌が関係しています。にんじんにかぎらず土壌の中で育つ野菜は、育っている途中に堅い土があったり大きめの石があるとストレスを感じてそこで成長が止まってしまう性質があるのです。しかし火山灰土壌というのは、噴火によるエネルギーによって岩が粉々に砕かれて出来ています。ほぼ粉のような状態なので、とても柔らかいだけでなく石もないです。そのため柔らかい火山灰土壌に植えることでストレスが無く成長できるだけでなく、山の水のミネラル分と農家の土壌研究が功を奏し120センチという大塚にんじんを生み出すことになります。

大塚にんじんは自然環境の違いが生み出した産物

本来火山灰土壌は鹿児島県が実証しているように、本来であれば野菜の生育には向かないのです。一点だけの自然環境の違いがのっぷいを生み出すことになり、それが大塚にんじんのような地元で愛される特産物を生んだ理由になります。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 山梨県の「大塚にんじん」が育つ環境でもある、肥沃な土地のことを、俗に何という?

A.のっぷい