乾燥させた海藻を煮溶かして具を練りこみ、羊羹のように固めた長崎県の郷土料理は?

日本の郷土料理には、変わった名前が付いていることがよくありますが、今回ご紹介する、長崎県の島原地方に伝わる郷土料理もその1つ。とある国の名前と同じなのですが、その国とは無関係なのです。

「いぎりす」って?

「いぎりす」は、乾燥させた「いぎす草」と呼ばれる紅藻類の海藻を、米のぬか汁や大豆のゆで汁等を用いて鍋で煮溶かし、味付けした野菜や魚、あるいはピーナッツなどの具材を練りこみ、ようかん状に固めたもの。冠婚葬祭や人が集まる時に振る舞われるハレの日の料理として、食べられています。また中に具を入れないものを「白いぎりす」といい、こちらは仏事の時に用いられ、細く切り、白あえやごましょうゆでいただきます。名前は「いぎりす」ですが、英国とは何の関係もなく、材料の「いぎす」がなまって「いぎりす」になったようです。

いぎりすの由来

いぎりすのルーツとされているのが、愛媛県の今治地方に伝わる「いぎす豆腐」です。いぎす草を原料に使用し、生大豆粉を混ぜて、小エビなどを入れて煮固めて作ります。いぎす豆腐は地元の小料理屋で提供されている他にも、スーパーやお総菜店でも販売しています。

遡ること1637年、江戸時代に起きた島原の乱では一揆に加わった農民の多くが死亡し、人口が激減していまいました。そのため、島原を復興させるために江戸幕府が大規模な移住政策を行い、四国の各藩から強制的に農民を移住させたといいます。免税特権を与えられ「公儀百姓」と呼ばれた移民によって四国から持ち込まれたのが、いぎす草を使う瀬戸内の食文化といわれています。島原特産のそうめんも、日本三大素麺の一つである小豆島由来とされています。

いぎりすを食べてみよう

島原鉄道島原駅から歩いて5分ほどのところにある「中屋商店」の喫茶部は、島原市内で唯一「いぎりす」を食べさせてくれるお店です。実は「いぎす草」そのものは無味で、中に入れる具材が味のポイントになるのだそう。中屋では、白身魚を煮てほぐしたものと細かく刻まれたニンジンが入っています。いぎりすは昔は各家庭で作られていましたが、作るのに手間がかかってしまうので、現在では手作りする家庭は少なくなったということです。いぎりすを一口食べてみると、口の中にほんのりと磯のかおりが広がり、おかずとしてはもちろん酒の肴としてもぴったりです。

島原にはユニークな郷土料理がたくさん

島原には他にも、名前を聞いただけでは想像つかないような郷土料理があります。

「ろくべえ(ろくべ、六兵衛)」という郷土料理は、さつまいもの粉と山芋で作った麺をしょうゆベースのやさしいだし汁で食べます。太くて短い麺は弾力があり、噛むとさつまいもの甘みがほのかに感じられ、ねぎや七味唐辛子をかけるとおいしさがさらに増します。

また「かんざらし」は白玉粉で作った小さな団子を冷やし、砂糖やはちみつ等で作った特製のシロップをかけていただきます。弾力がありながらしっとり感が残っている食感は、やみつきになりそうなおいしさです。

全国各地の「いぎす」

今回ご紹介した長崎県の「いぎりす」や愛媛県の「いぎす豆腐」以外にも、いぎす草を煮溶かして固めた料理は青森、山形、新潟、京都、福岡など、日本海沿岸地域を中心に広い地域で食べられています。地域によってさまざまで、青森県の「えごてん」、新潟県の「えご」、佐渡の「いごねり・えごねり」、長野県の「いご」、京都の「うご」、福岡県の「おきゅうと」などと呼ばれ、郷土の味覚として親しまれています。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 乾燥させた海藻を煮溶かして具を練りこみ、羊羹のように固めた長崎県の郷土料理は?

A. いぎりす