長崎県の郷土料理「ヒカド」。どこの国のシチューが変化した料理?

長崎県の郷土料理「ヒカド」をご存知ですか? 名前だけではどんな料理か想像するのは難しいですよね。実はある国の言葉が由来となっています。どこの国でしょうか?

ヒカドって?

「ヒカド」はポルトガル語の「Picado(細かく刻む、調理する)」という言葉が由来となっています。すりおろしたサツマイモでとろみをつけた具だくさんのスープです。長崎は開港をきっかけに、ポルトガルやスペインから宣教師や貿易の関係者が多くやってきました。彼らから豚や牛の肉を使ったシチューが伝わったものの、その当時肉は手に入れるのが非常に難しく、地域で採れる野菜や魚などを使うようになったといわれています。ヒカドはサツマイモ本来の甘みを感じられるやさしい素朴な味で、冬の寒さが厳しい時期に食べると体の中からポカポカと暖まります。

ヒカドの歴史

安土桃山時代、長崎は多くの教会が建ち並び、大勢のポルトガル人が暮らす町でした。地元の人々が彼らとの交流で色々な異国の料理を教えてもらっていたと思われます。1614年に発布されたキリスト教の禁教令により、滞在していた宣教師たちは追放され、ポルトガル料理も作られなくなりましたが、手に入れられなくなった肉の代わりに魚を使ったりと、工夫しながら受け継がれていきました。

江戸中期の料理本によると、ヒカドは中国風の調理をする「南蛮料理」の一種として掲載されています。具材は、にわとり(またはカモ)、エビ、イカ、大根などが使われていました。徐々に庶民の間に広まっていき、具材のアヒルがマグロに代わり、サツマイモを使うようになっています。ヒカドの特徴でもあるとろみは、本来パンを使用してつけられていましたが、禁教令によってパンも手に入らなくなったため、代わりにすりおろしたサツマイモを使うようになったそうです。もともと長崎は砂糖が手に入りやすい地域でもあったので甘めの味付けを好むので、サツマイモの甘味やとろみは地域の人々に受け入れられ、いつしか長崎の郷土料理として定着することになったようです。

ヒカドを作ってみよう

ヒカドの作り方は簡単なので、ご家庭でも作れます。

材料は4人分で、豚肩ロース肉50g、カジキマグロ50g、大根約1/10本、にんじん約1/2本、角切り用のサツマイモ約1/2本、すりおろし用サツマイモ約1/4本、干し椎茸約2枚、青ねぎ2~3本、調味料としてサラダ油少々、薄口しょうゆ小さじ2、塩少々、酒大さじ1/2、だし汁500cc

まずはマグロの下ごしらえをします。角切りにして塩と酒で下味をつけます。豚肩ロース肉は食べやすい大きさに、大根、にんじん、サツマイモ、干し椎茸は1.5cm程度に大きさをそろえて角切りにします。この細かく刻むところが「ヒカド」と呼ばれる由縁ですね。鍋に油を入れ、下味をつけたマグロの角切りを鍋に入れます。表面に焼色がついたら、一度鍋から取り出しておきましょう。同じ鍋で、豚肉、にんじん、干ししいたけを炒め、そこに大根とサツマイモも加えて更に炒めたら、だし汁を入れます。ぐつぐつと沸騰してきたらアクを取り除き、取り出しておいたマグロを加えます。サツマイモをすりおろし、鍋に加えます。火の通りが早くすぐにとろみがつきます。塩、酒、薄口しょうゆで味を調えて煮込みます。器に盛り付けて、小口切りにしたねぎを散らして出来上がりです。溶き卵を流しこみ、ふんわり仕上げてもおいしいです。また使う魚は旬のものを選びましょう。甘鯛やイトヨリなどでも代用できますよ。肉や魚、お野菜もたっぷり入っていて栄養満点のヒカドは、朝食から夜食までどの一品として食べてもおいしくいただけそうですね。実はサツマイモを使っているので、同じサツマイモからできた芋焼酎とも相性がいいのだとか。一度、作ってみてはいかがでしょうか。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 長崎県の郷土料理「ヒカド」。どこの国のシチューが変化した料理?

A. ポルトガル