三重県の料理「なばなのおひたし」の「なばな」とは何のこと?

三重県の特産品の一つに「三重なばな」があります。なばなは元々菜種油を取るために栽培されており、葉や茎を食用にしたのは三重県が始まりと言われています。その歴史や、なばなのおひたしの作り方などを紹介します。

最初は馬のエサとまで言われた三重なばな

菜の花は洋種アブラナ科の野菜で、アブラナは漢字で「油菜」と書きます。この名前からも、菜種油を取るのがメインの葉物野菜ということがわかりますよね。昭和中期に電気が広く使われるようになるまで明りはランプだったので、油は大切な資源でした。その油を取るために、三重県では江戸時代から菜の花栽培が盛んに行われていました。菜種油の伝統的な絞り方は、種を取って乾燥させてから焙煎して砕き、蒸して圧搾する玉締めという方法です。実に手間隙かけて油が作られていたわけですが、電気が使えるようになってからは、その必要性は薄れてきました。生活利便性は向上したものの、菜の花農家の経営は困難になってしまいます。

しかし、農家の人達は、それまで家庭で菜の花の葉や茎の部分を食べていて美味しかったため、これを販売すれば良いのではと考えました。ところが市場の反応は思わしくなく、馬のエサじゃないか、とまで言われ、販売当初は口に入れてもらうことも叶いませんでした。それでも、農家の人達は諦めませんでした。味の改良を試み、美味しく育つ栽培方法をマニュアル化し、三重で栽培される菜の花の味を統一。見た目を綺麗にし、高級感を出して再販しました。そうした努力の甲斐あって、菜の花は「三重なばな」という立派なブランド野菜に成長し、作るだけ売れる状態になっています。

三重なばなは9月中旬から収穫が始まり、4月頃まで販売が続きます。花の蕾を食べる菜の花と違って、葉や茎を食べるのが三重なばなです。そのため、購入するときは蕾が付いていないもの、付いていても小さいものを選びましょう。花が咲いているものは葉や茎に苦味が出て茎も硬くなっています。当然ながら葉が変色しているものも避けてください。

三重なばなの食べ方で代表的なのは、なばなのおひたしです。めんつゆの素などを使うと簡単に作れるおひたしですが、時間のあるときはぜひ出汁から取ってみてください。出汁は300ccの沸騰したお湯に鰹節10gを入れて、2分ほど火を通してから濾したら出来上がりです。この出汁1カップに対して、大さじ1半~大さじ2の薄口醤油を入れて浸し汁を作っておきます。濃い口醤油でも構いませんが、薄口醤油だとなばなの綺麗な緑色を保てますよ。浸し汁が熱いまま葉物野菜を入れると変色してしまう恐れがあるので、十分に冷ましておいてください。

次に沸騰したお湯に塩を入れてなばなを茹でますが、硬い茎から茹でるのがポイントです。茎を茹でる時間は数十秒くらい、葉の部分はささっとお湯にくぐらせる程度で構いません。ゆでた後は、冷水などに取って色止めしましょう。なばなをしっかりと冷やして絞ったら、切らずに浸し汁に浸します。切ってから浸すと、味が濃くなりすぎるかもしれません。浸す時間は、最低でも30分は欲しいところです。時間を置いた後は好みの大きさに切って盛り付け、浸し汁をかけて完成です。仕上げにカツオ節や海苔、ゴマをかけても美味しく食べられます。

三重なばなは、βカロテンが豊富です。βカロテンには抗酸化作用があり、老化防止やガン抑制作用など、様々な健康効果が期待できます。その他、ビタミンB群やビタミンEなどのビタミン類やミネラルが多く含まれています。花の蕾を食す菜の花と少し栄養素が変わってくるので、どちらも食べるようにすると栄養バランスが良いかもしれませんね。

秋から春は三重なばなを食べてみて!

三重なばなは菜種油を絞るために菜の花栽培していた農家が、味を改良してブランド化させた野菜です。抗酸化作用が期待できる野菜なので、9~4月にかけて出回る時期は積極的に取ってみてはいかがでしょうか。その際は、ぜひおひたしを作ってみてくださいね。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 三重県の料理「なばなのおひたし」の「なばな」とは何のこと?

A.菜の花