泡立てたお茶にご飯や具を入れて食べる、島根県松江市の郷土料理は?

島根県・松江市は、島根県東部に位置し、宍道湖(しんじこ)や中海(なかうみ)に囲まれた水の風景が美しい街です。また国宝・松江城の城下町でもあります。その松江市にある、ちょっとユニークな郷土料理をご紹介しましょう。

お茶を泡立てる音から名前が付いた

茶処として知られる松江市に『ぼてぼて茶』という郷土料理があります。乾燥した茶の花を入れて煮出した番茶を、抹茶茶碗のような丸みのある筒茶碗に注ぎ入れ、長めの茶筅で泡立てます。この泡立てたお茶の中に、おこわ、煮豆、きざんだ高野豆腐やお漬物などを少量ずつ入れれば出来上がりです。お箸を使わずに、茶碗の底を軽くトントンとたたいて、寄せた具が残らないように一気に口に流し込んで食べます。『ぼてぼて茶』というユニークな名前は、お茶を泡立てる音から付けられたと言われています。

ぼてぼて茶の由来

ぼてぼて茶の由来は諸説あります。松江藩主・松平不味(ふまい)公が鷹狩りに出かけた際に、空腹しのぎに飲んでいたという説や、奥出雲のたたら製鉄の職人達が過酷な労作業の合間に、立ったまま食べられる間食や労働食だったという説、また上流階級の茶の湯に対抗し、庶民が考え出した趣味と実益を兼ねた茶法といわれるものもあります。

ぼてぼて茶を味わおう

ぼてぼて茶は現在でも松江市の伝統美観地区の中心、小泉八雲記念館前にある『塩見茶屋』でいただくことができます。こちらでは既に泡立てられたお茶と具材が用意されているので、そのまま具材をお茶に入れるだけで、ぼてぼて茶を味わうことができます。店内ではぼてぼて茶用の「お茶の葉」や茶碗、茶せんが一揃い販売されているので、購入して家でもぼてぼて茶を楽しむことができますし、お土産にも良さそうですね。

「日本三大茶処」の一つ・松江

松江市は京都、金沢と並ぶ日本三大和菓子として有名です。同時にお茶の消費量が高いことでも知られており、江戸時代から続くお茶処でもあります。これも大名茶人であった松江藩主・松平治郷 (不昧公) が茶道『不昧流』を大成させたことで、茶の湯の文化が浸透したためとされています。

不昧公が茶会で使われた和菓子や茶道具などは「不昧公好み」として今も受け継がれており、松江では四季の変化を楽しみながら、お茶と共にゆったりと過ごすひとときが今日も身近に息づいているのです。

大名茶人として名高い松平家7代藩主『不味公』

ぼてぼて茶の由来の一つとされる松平不味公は、江戸時代後期の大名茶人として知られる松平家7代藩主です。『不昧公』と現在でも親しみを込めて呼ばれることが多いですが、これは隠居後に剃髪して名乗った号の『不昧』からのもので、名は松平治郷です。

不昧公が藩主となった当時の松江藩は財政難に苦しんでいました。窮迫した藩の財政を、藩政改革を断行し、産業振興策で収入増を図り、建て直すことに成功したのです。また幼少のころより茶の湯や禅学を熱心に学び『不昧流』として今も伝わる自らの茶道観を確立させました。著書である『贅言』は、茶の湯への執心を諌めた家老朝日丹波への反論でもあり、当時の町人たちがこだわった「形式」や「道具」の茶の湯を批判して、侘びの精神を説きました。『不昧流』は自然体のお手前を基本とし「美」を重んじ、質素ながらも趣のある茶の湯を心がけるものです。

また不昧公は、藩財政を立て直した後は大名家などから、世の中に散り散りになっていく茶道具を集めることに注力しました。そのコレクションは、後に『雲州名物』と呼ばれることになり、愛好家などに高い評価を受けています。また、松江藩内での美術工芸の振興も図り、漆工や木工、陶芸の分野にてたくさんの名工を育てました。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 泡立てたお茶にご飯や具を入れて食べる、島根県松江市の郷土料理は?

A. ぼてぼて茶