滋賀県の「フナ寿司」は、本来どの種類のフナを使用する?

滋賀県の伝統的な郷土食として有名な「鮒寿司」。塩漬けにした鮒をお米の力で乳酸菌発酵させた鮒寿司は、琵琶湖周辺ではお祭りや結婚式で欠かせないものとされてきました。今回はこの「鮒寿司」についてご紹介します。

握り寿司やちらし寿司の原型といわれている「鮒寿司」の作り方について

なれ寿司の一種である「鮒寿司」。味は酸っぱくて、チーズに近い濃厚なコクがあります。魚と酸っぱいご飯の組み合わせは、握り寿司やちらし寿司の原型といわれていますが、鮒寿司の酸っぱさは、乳酸菌発酵によって魚肉のタンパク質が旨味成分であるアミノ酸に分解されたために生じたものです。鮒寿司はまず、鮒の内臓や血合いをしっかりと除去して洗浄し、エラに塩を詰め込んで塩漬けにします。鮒寿司の鮒は伝統的には滋賀県にある琵琶湖の固有種「ニゴロブナ」が使われてきました。しかし、琵琶湖のニゴロブナは昭和60年頃から漁獲量が年々減少したため、韓国から輸入したゲンゴロウブナを使用して作ることもあります。

鮒を約3カ月間塩漬けしたら、余分な塩分を洗って陰干しし、水分を飛ばします(水分の混入量が多いと腐敗しやすくなります)。鮒のエラにご飯を詰め込んで桶に並べてその上にご飯を敷き詰め、鮒とご飯を交互に漬け込みます。こうすると空気中の乳酸菌がご飯の糖分や魚肉のタンパク質を発酵させて鮒をおいしくするだけでなく、生成された乳酸が有害な細菌の増殖を抑えて腐敗を防ぎます。鮒をご飯に漬けてからだいたい6カ月で食べることができ、桶に漬けておけば約3年は保存できます。稲作伝来とともに伝わったとされる鮒寿司は滋賀県では古くから食べられてきた伝統食であり、滋賀県の無形民俗文化財にも指定されています。

琵琶湖の豊かな生態系と漁場再生のための取り組みについて

多様な生態系を育み、滋賀県の食を支えてきた琵琶湖。琵琶湖は世界で20ほどしかない古代湖の一つであり、1,000種類以上の動植物が生息しています。琵琶湖の特色の一つとして、ここにしかいない生物(固有種)が多く生息していることがあげられ、魚類では前述したニゴロブナの他、ホンモロコやビワマス、イサザなど計12種が、貝類など底生動物を含めると計57種が固有種として確認されています。ニゴロブナ、ホンモロコ、ビワマス、イサザに加え、ゴリ、コアユ、スジエビ、ハスを加えた計8種は、琵琶湖を代表する魚介類「琵琶湖八珍」として認定されています。

しかし、高度経済成長期における水質の汚染や干拓事業による環境の変化、ブラックバスやブルーギルといった外来種の導入により琵琶湖の漁獲量は年々減少し、ニゴロブナにいたっては昭和40年ごろには年間500トンあった漁獲量が平成25年度には年間39トンまで激減しました。こうした問題を受けて、県や漁協のみならず県民からも琵琶湖を守る活動が始まり、昭和50年代の水質汚染の原因となるリンを含む洗剤の使用をやめようという「石けん運動」を皮切りに、魚類や鳥類の生息場所であるヨシ群の保全活動、ニゴロブナの稚魚を食い荒らす外来魚の駆除といった漁場再生のための取り組みが行われています。

鮒寿司を食べるには

鮒寿司はそのきついにおいから市場にはあまり出回っていないこと、材料となるニゴロブナの漁獲量が激減したために高級食材になってしまったことなどから、県外で食べる機会はなかなかありませんが、ネットや電話で通販購入できます。通販が可能な店の中には、皇室御用達としても認められた「魚治」(電話直販)や御用料亭から分家し江戸時代の鮒寿司の味を伝えている「阪本屋」など、鮒寿司の名だたる名店も入っています。また東京であれば、日本橋にある滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」でさまざまなメーカーの鮒寿司を扱っており、滋賀の味が楽しめる2階の「日本橋滋乃味」でも「鮒寿司の3種盛り合わせ」が食べられます。

「鮒寿司」に代表される滋賀県の伝統的な食文化を守るために

「鮒寿司」をはじめ、琵琶湖の魚介類は滋賀県の伝統的な食文化を作り上げてきました。しかし漁獲量の減少を受け、郷土食も徐々に失われようとしています。地域の食文化を守るためにそれを生み出した自然環境を守ること、これが今後の課題といえるでしょう。

滋賀県の伝統的な郷土食として有名な「鮒寿司」。塩漬けにした鮒をお米の力で乳酸菌発酵させた鮒寿司は、琵琶湖周辺ではお祭りや結婚式で欠かせないものとされてきました。今回はこの「鮒寿司」について、日本最大の湖・琵琶湖の情報を含めてご紹介します。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 滋賀県の「フナ寿司」は、本来この種類のフナのみを使用する、琵琶湖の固有種といえば?

A. ニゴロブナ

Q. 現地で伝統的に食べられている「ニゴロブナ」や「ホンモロコ」。どこの固有種の魚?

A.琵琶湖