穴の開いた円形をしている、新潟県で昔から親しまれている焼き麩といえば?

お麩は小麦粉に水を加えてデンプンを抽出し、そのデンプンを練って弾力を生み出した後に高温の火で炙って作る日本の伝統食材です。そんなお麩は全国にいろいろな形で根付いていますが、その中で丸い形に成型された新潟県のお麩を紹介します。

過酷な冬を乗り切るため

車麩の特徴は一般的に出回るお麩よりも大きいだけでなく、ちくわのように中央に穴が開いていることです。なぜちくわのような穴が開いているのかというと作り方が関係しており、強力粉から水でデンプンを抽出して練って弾力を生み出すまでは工程はおなじです。違いは焼きの工程の部分で、根って弾力を生み出したデンプンを一本の鉄の棒にどんどん巻き付けていきます。

そして鉄の棒に巻き付けたでんぷんを、高温のガスの火で回しながらきつね色の焼き色がつくまであぶって作るのです。この車麩という名称は、焼きの工程で回しながら焼く光景が車輪が回っているように見えることそして完成したお麩を切った時に車輪に見えたことが由来になります。

一般的なお麩の食べ方としてはお吸い物や煮物に副菜として使う方法が定番ですが、新潟の車麩ではお吸い物や煮物だけでなく一口大に切って炒め物の具材にしたりトンカツのように衣をつけて揚げたりと副菜ではなく主菜として扱われています。なぜ新潟県で車麩が主菜として扱われているのかというと、新潟の冬の環境が大きくかかわっているのです。

お麩の歴史は古く、室町時代に中国と貿易を開始した際に持ち帰ったものが始まりとなります。当時の日本は米作が中心で小麦粉は栽培しておらず、中国との貿易で流通するだけだったので特別な日でしか食べられない貴重品だったのです。小麦粉の栽培ができるようになったのは徳川家康が天下統一を果たした江戸時代であり、戦乱の世が終わり一時的にとはいえ外国との貿易が再開されたことを機にヨーロッパや中国から栽培方法が伝わったことで全国に伝わります。ただこの時はまだ焼き麩ではなく、柔らかい食感と弾力を楽しむ生麩が主流です。

新潟は隣接する長野県の山々から質の良い水が流れるので米作が盛んな土地ですが、小麦もほぼ似たような自然環境で育つため貴重な食材として栽培が開始されます。質の良い水で育つので高品質の小麦粉が出来るので、団子やうどんにして親しまれています。そんな新潟で車麩が誕生したのは、先に言ったとおりに新潟県の自然環境が大きく関係しています。

新潟県は日本海側に位置する県で、太平洋側と違って標高の高い山が存在しないです。その高い山が存在していないことによって、頂上付近に存在する湿った空気が入らないことで湿度が低くお米や小麦の病原菌が発生しにくいことが質の良い穀物が出来る理由になります。しかし高い山が存在しないことは、決して良い面ばかりではないです。標高の高い山がない事によって、冬場は北極から発生した冷たい空気が直接覆うことになるので積雪が10センチ以上も積もってしまう豪雪地帯になります。

現在ではハウス栽培や他の県からの流通があるので問題はないのですが、流通ルートやハウス栽培が出来ていない時代では冬は農作物を育てることが一切できなくなります。そんな環境のため、新潟では秋のうちに収穫した肉や魚そして野菜はすべて燻製や塩漬けにしたりして保存性を高めて乗り切ります。しかし野菜は長期保存が可能であっても、肉や魚の収穫量は限定的なので保存性を高めても体を温めるために必要なたんぱく質が限りなく少なくなってしまうのです。

そこで中国から伝わったお麩の製法を基に、大量に取れた小麦粉を使って地元産のお麩を作ることにします。その時に短時間で作る目的と、長期保存を目的に焼く工程を入れたことが新潟県の車麩が誕生した瞬間になるのです。その後車麩は貴重なタンパク源として普及し、新潟の伝統食材として親しまれることになります。

車麩にはその土地の先人の知恵が詰まっている

副菜としてのイメージがあるお麩は、新潟県では車麩という形で色々な工夫がされ主菜として扱われています。その理由は新潟県特有の冬の環境を生き抜くために、先人たちが築き上げてきた知恵が継承されてきたことで発展してきたことが分かるのです。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 穴の開いた円形をしている、新潟県で昔から親しまれている焼き麩といえば?

A. 車麩