広島風お好み焼きの元になったともいわれる、愛媛県松山市の郷土料理とは?

松山市のなかでも海に面した西側に三津浜港があります。三津浜港は松山市の中心エリアからは北西方向にある港で、周辺では広島風お好み焼きの元になったともいわれる料理が地元の人々に親しまれてきました。気取って食べるようなものでもなく、誰でも気軽に食べることができ、しかもなんとなく懐かしい感じがする、そんな愛媛県松山市のソウルフードについて詳しく紹介します。

広島風お好み焼きと似ているようで違う?

瀬戸内海を挟んですぐのところが広島というロケーションから、三津浜焼きは一見して広島風お好み焼きに似た感じです。たとえば、関西風のお好み焼きならば、生地にキャベツなどの具を混ぜて鉄板で焼くこところを、広島風お好み焼きでは鉄板の上で生地を薄く焼き、その上にキャベツなどの具を乗せ、さらに麺を乗せて作ります。三津浜焼きでも関西風のお好み焼きのように、生地に具を混ぜてしまわないというところは共通している点です。

しかし、似ているようで違うところもあります。三津浜焼きでも広島風お好み焼きのように、まずは鉄板の上で生地をクレープ状に薄く焼くのは同じです。ただ、薄く焼いた生地の上には先に麺が乗ります。そして、麺はあらかじめ味が付けられた中華そばまたはうどんの麺を使うのが特徴的です。生地の上で焼かれた麺を台のように見立てることから、麺の入っている三津浜焼きは台付きと呼ばれ、麺を入れずに中身が野菜だけというものは素焼きと呼ばれています。

三津浜では、すでに大正時代から水で溶いた小麦粉を焼いた上にネギなどを乗せ、ソースを塗ったものが食べられていました。「一銭洋食」と呼ばれ、市民に親しまれてきたこの時代の食べ物が三津浜焼きのルーツだといわれています。戦後になってからもさまざまなお店でお好み焼きが提供されてきましたが、地元の味「三津浜焼き」をブランド化して広めるために、三津浜を愛する平成船手組によって三津浜焼き推進プロジェクトが発足しました。

三津浜焼き推進プロジェクトで定められているのが「三津浜焼き10ヶ条」です。そのなかには、ちくわと味付けしたそばやうどんを使うこと、魚のけずり粉を隠し味として使うことなどが挙げられています。焼いた三津浜焼きは二つ折りにして、折る前、折った後の2度ソースを塗ることなども特徴です。ただし、ソースやトッピングなどは各店舗でオリジナルのものを工夫しならが提供することが定義されています。三津浜では昔から具に牛肉を乗せるのが一般的でした。また、海に面した土地柄から、海産物をトッピングするお店もあります。さらに、牛脂が乗せられることも多く、牛脂の甘みが溶け出す味わいも三津浜焼きの特徴のひとつです。

三津浜焼きが食べられるのはこんな街!

三津浜焼が食べられるのは愛媛県松山市です。松山市には松山城や道後温泉など全国的にも知られた有名スポットがあります。松山城は天災や戦災などで失われることなく江戸時代から残っている現存12天守のひとつです。国宝および重要文化財の指定も受けています。市街地に広がる小高い山に本丸や二之丸史跡庭園などがあり、公園として整備されています。

道後温泉は日本三古湯のひとつといわれるほど古い歴史を誇っている温泉で、万葉集や源氏物語のなかにも登場しています。傷を負った一羽の白鷺が見つけ、そのお湯で傷が治って飛び去ったという伝説が道後温泉発見の由来といわれ、道後温泉では白鷺がシンボルとなっているのです。砥部焼の陶板画がかけられた石造りの浴室が特徴の道後温泉本館は、現役の温泉施設として営業を続けながら国の重要文化財として指定されています。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでは2009年に三ツ星を獲得しました。道後温泉にはかつて聖徳太子や斉明天皇が訪れたといわれていることから、飛鳥時代をイメージした道後温泉別館 飛鳥あすか乃の湯泉も2017年にオープンしています。そして、1953年、四国で国体が開催されたことをきっかけに造られたのが市民に親しまれている道後温泉 椿の湯です。

三津浜焼きの地元である三津浜は市の西側にある伊予灘に面した港町で、松山市駅や道後温泉からは車を利用して約30分でアクセスすることができます。伊予鉄高浜横河原線の三津駅からは徒歩で15分もあれば着くことが可能です。古くから瀬戸内海の海運の拠点として発展し、現代でもフェリーターミナルがあり、山口県の伊保田港や柳井港とのあいだを結んでいます。松山市は江戸時代の文豪である夏目漱石ゆかりの地です。著書の『坊ちゃん』は松山が舞台になっているほか、漱石自身も松山に赴任してきました。そして、漱石や坊ちゃんの主人公がはじめて松山に来たとき、最初に上陸したのが三津浜港です。また、国木田独歩の『忘れえぬ人々』でも、三津浜の魚市場の様子が描かれています。

三津浜港の北側、河口の対岸にある港山とあいだには「三津の渡し」と呼ばれる渡し船が運航されており、わずか3分程ですがちょっとした船旅を楽しむことが可能です。かつてこの地を訪れた江戸時代の俳人・小林一茶も渡ったといわれ、港町の風景を眺めることができます。また、三津浜には昔ながらの雰囲気が漂う三津浜商店街があるほか、少し住宅地に入り込んだ路地でもお店を見つけることができるなど、散策が楽しめる街並みです。さらに、レトロな洋風建築の建物やおしゃれなカフェ、雑貨店なども点在しています。

三津浜焼が食べられるお店

三津浜焼き推進プロジェクトに参加協力している店舗は2019年5月時点で42店舗あります。たとえば、伊予鉄高浜線の山西駅からすぐ近くの住宅街にある「木下お好み焼」は歯ごたえのある大きめのキャベツとパリパリに焼かれた生地、甘みと酸味のバランスがいいソースが特徴の三津浜焼が食べられるお店です。また、須賀町にある「ひよこ」というお店では、牛脂の甘みとオリジナルソースの味が楽しめる三津浜焼きで、生地はモチモチしています。

三津駅と港のフェリー乗り場の中間あたりにある「お好み焼みよし 三津店」はレトロな雰囲気の外観で、座席数が10席もないくらいの小さなお店ですが、老舗のお好み焼き屋さんです。地元の製麺所で作られた面を使用し、牛脂や豚肉の旨味、秘伝のオリジナルソースが味わいを引き立ててくれます。お店それぞれに少しずつソースの味や中に入る具が違うため、好みの味を探すのも楽しみでしょう。入り組んだ住宅地のなかなど、思わぬところにお店を見つけることもあり、散策しながらお店を探すのも旅の醍醐味です。

家でも楽しめる三津浜焼!その作り方とは?

あらかじめ生地に具を混ぜて焼く関西風のお好み焼きに比べると、三津浜焼きを家で作るのは難しいと考える人が多いかもしれません。しかし、ポイントを押さえておくと自宅でもフライパンやホットプレートを使って作ることが可能です。具のキャベツは千切り、ちくわを食べやすい大きさに切るとともに、中華めんやうどんにもあらかじめ味を付けて焼いておきます。麺は食べやすいように少し細かく切っておいてもいいでしょう。生地は1人前分で小麦粉50gに出汁と水100ccを加えて混ぜ、薄いクレープ状に焼きます(全部ではなく生地は残しておく)。

そして、生地の上にまず麺を乗せ、その上にキャベツやちくわ、ほかに天かすや豚肉などを乗せて残りの生地を回しかけるという手順です。焼けて生地や具が馴染んできたらひっくり返してコテで抑えながらまとめ、卵を割り入れてクレープ状に焼きのばしたところに裏返して乗せます。その上にソースを塗り、生地を半分に折りたたんでさらにソースを塗るのが三津浜焼きを作るコツです。もともと三津浜焼きは具やソースなどに各店舗のオリジナリティがあるため、基本を押さえておけば家で作るときも自分好みにアレンジしてかまいません。

松山市に出かけるなら港町で親しまれてきた三津浜焼きも味わいたい!

愛媛県松山市には松山城や道後温泉などの観光地があり、全国から多くの人が観光に訪れます。しかし、松山市で楽しめる観光スポットは有名どころだけではありません。松山市の中心街からわずか30分程度でアクセスできる三津浜港周辺では、昔ながらのどこか懐かしい雰囲気を漂わせる街並みがあります。そして、地元の人に長く親しまれてきたグルメ「三津浜焼き」もじわじわと人気がアップしてきているのです。松山に観光に出かけるならば三津浜にも立ち寄り、ほかにはないこの地ならではのグルメも味わってみてはいかがでしょうか。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 広島風お好み焼きの元になったともいわれる、愛媛県松山市の郷土料理は?

A. 三津浜焼き

Q. 観光地として人気の、愛媛県松山市の温泉は?

A.道後温泉

Q. 愛媛県の松山が舞台となっている、夏目漱石の著書は?

A.坊っちゃん