風光明媚な手賀沼のほとりに広がる街、千葉県我孫子市。明治末期から大正にかけて作家たちが多く集まった街としても知られていますが、それにちなんだご当地カレーが話題を呼んでいます。いったいどんな特徴があるのでしょうか。
カレーに味噌!?それはある陶芸家の一言から始まった
「白樺派」は大正時代を中心に巻き起こった、理想主義や人道主義を掲げた芸術運動です。作家の武者小路実篤と志賀直哉が発刊した雑誌「白樺」を中心に活動が展開され、作家の有島武郎や長與善郎、画家の梅原龍三郎や岸田劉生など錚々たるメンバーが集まって一大ムーブメントを起こしました。
そんな中、白樺派メンバーの一人であった思想家の柳宗悦が千葉県我孫子市に移住します。我孫子には彼の叔父で近代柔道の創始者として知られる嘉納治五郎が別荘を持っており、この叔父の誘いで声楽家の妻・柳兼子とともに引っ越してきたのです。柳宗悦に誘われて志賀直哉も移住してくると、後を追うように白樺派のメンバーが次々に集まり、静かな湖畔の街は一挙に芸術村の様相を呈するようになりました。
手賀沼の柳邸は敷地がとても広く、その庭の一角を借りてイギリス人陶芸家のバーナード・リーチが窯を持ち、制作に励んでいました。彼もまた白樺派のメンバーであり、柳宗悦が提唱する民芸運動にも深くかかわった人物です。あるとき、自宅でカレーライスを食べている柳兼子を見たリーチは、ふとこう言いました。「そのカレーに味噌を入れたらおいしくなるのでは?」兼子が早速試してみると、なんと今までにないおいしさのカレーができました。それを近所に住む芸術家たちにふるまったところ、大人気となったのです。
「白樺派のカレー」を名乗るには、この4項目を満たすべし!
柳兼子はこの時のエピソードをエッセイに綴り、それが時を超え2001年になって地元郷土史家の目に留まりました。とはいえレシピは残っていなかったので、彼は兼子のカレーを再現するために当時の食材などについてとことん調べ、おそらくこの味であろうというレシピをまとめるに至りました。このカレーは地元NPO法人によって「白樺派のカレー」と名付けられ、イベントで地元の人たちに食べてもらったところ大評判に。一躍新たなご当地グルメとして町おこしに一役買うことになったのです。このカレーには以下の4つの特徴があり、これを満たしていないと「白樺派のカレー」を名乗ることはできません。
・隠し味に味噌を使う(粒味噌が良い)
・地元産の野菜と米を使う漬物などを添える場合はそれも地元産のもので
・肉も国産品を使う(国産であれば牛・豚・鳥・鴨のいずれでも可)
・カレー粉は日本に最初に紹介され当時の定番だった「C&B純カレー」を使う
学校給食にも登場!通販で買えるレトルトやパイ生地で包んだ派生商品も
味噌の隠し味が効いてマイルドな中にコクがあると評判の「白樺派のカレー」は、我孫子市内のレストランで食べることができます。飲食店で出す場合は指定のランチョンマットを使用することになっていますが、カレーを持つ柳兼子をデザインした大正レトロ風のデザインが評判を呼び、お土産に持って帰る人もいるそうです。このランチョンマットは、「白樺派のカレー普及会」のHPからダウンロードすることもできます。
また、2017年には大学とコラボしてレトルトも誕生、全国のスーパーや食料品店で取り扱いがあるほか、ネット通販でも購入することができます。ポーク・ビーフ・チキンの3種類があり、レトロなパッケージデザインが目を引きます。さらにパイ生地でカレーを包んだ「白樺派のカレー パスティ」も登場。スナック感覚で気軽に楽しむことができ、お土産にも最適です。
我孫子文学散歩に訪れたらぜひ味わいたい大正ロマンの味
我孫子には「白樺文学館」など白樺派ゆかりのスポットもありますし、自然豊かな手賀沼も人気の観光地となっています。上野から快速で35分程度と都心からも近いので、文学好きな方はもちろん、グルメな方も気軽に訪れてみてはいかがでしょうか。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 千葉県我孫子市のご当地グルメとなっている、地元の野菜を使ったカレーは?
A. 白樺派のカレー