海に出ると「ベニザケ」と呼ばれる、青森県の十和田湖でとれる魚とは?

雄大で美しい景勝地である青森県十和田湖。広さは秋田県にもまたがり周囲約46km、大きさは日本で12位に入ります。この湖で、ある魚を釣ることが毎年秋に解禁されます。

ベニザケの陸封型の名称

ヒメマスはベニザケの陸封型を指して使われる呼び方です。ベニザケは鮭の仲間で、川や湖で生まれ海へ下り、そこで生育します。鮭が川と海洋を行き来することはよく知られていますよね。産卵のために川を遡上する鮭の群れを、映像で見たこともあるのではないでしょうか。しかし、地理的条件などにより湖に一生とどまる鮭もありました。これを陸封型と呼び、ベニザケの陸封型はヒメマスと呼んで区別しているのです。ヒメマスは一般的には鮭ほど大型化せず、体長は20〜30cm程度です。姫という名の通り、銀白色の美しい色合いが目を引き、産卵期のオスの背は鮮やかな紅色に染まります。食味は鮭同様にクセがなく食べやすいとされ、鮭の仲間らしくピンク〜オレンジ色の身であるのも特徴です。

十和田湖のヒメマス養殖の歴史

天然のヒメマスは元々、北海道の阿寒湖とチミケップ湖に生息していました。アイヌの人々がこれをカパチェッポと呼んでいたので、北海道ではヒメマスについてチップという呼び方をすることもあります。現在では上記以外の湖にも生息していますが、これは明治時代に移植が試みられたことがきっかけです。初めて移植されたのは、北海道の支笏湖で1894年(明治27年)のこと。青森県十和田湖でも同時期にヒメマスの移植が始まり、定着するようになりました。

十和田湖は、火山活動による陥没した地形に雨水がたまってできるカルデラ湖です。海抜400m、湖の最深部は深さ326.8mで深さは日本で3位を誇ります。濃い藍の水の色の美しさや、湖から伸びる奥入瀬渓流の景観も県で屈指の名風景です。しかし、奥入瀬渓流の銚子大滝が湖への魚の遡上を阻むため、十和田湖には長いこと魚はすめないといわれてきました。明治時代、ここに水産資源を移植できないかと考えたのが、養魚事業家の和井内貞行でした。和井内は1884年(明治17年)から、十和田湖で鯉などの魚の放流を初めました。和井内家は、度重なる放流事業で家計が傾き、借金を重ねていたといいます。それでも、和井内は十和田湖に放す魚を探し求めました。北海道のヒメマス移植の話を聞くと、ヒメマスの卵を買い求め、人工での卵のふ化に成功。1905年(明治38年)に放流した稚魚が親魚となったことを確認し、ついに養魚が達成されたのです。もはや十和田湖で魚が幻ではなくなった、歴史的な事業でした。現在も十和田市ではヒメマス放流事業を行っており、毎年の漁獲量が安定するよう保護しています。

十和田湖の自然と楽しむヒメマス料理

十和田湖の自然が育んだヒメマスは「十和田湖ひめます」というブランドで販売されています。お土産には、保存がきくように干し魚にされた商品などもあり、現地で買い求めることができます。ヒメマスはきれいな湖の水で育つため、新鮮なうちに食べるのが良いといわれています。刺し身で食べれば脂の甘みが感じられますし、シンプルな塩焼きや天ぷら料理で食べても美味しく楽しめます。十和田湖近辺では、ヒメマス料理を提供するレストランやホテルも多数あります。

十和田湖の自然と一緒にヒメマスを楽しむなら、ぜひ釣りにチャレンジしてみたいところ。十和田湖での釣りには、釣る魚により1日200〜2000円の遊漁料を支払います。釣りが可能な期間や禁漁区域、一日の採捕尾数制限などのルールがありますので、釣りに行く前に十分に確認することが必要です。釣り方は、岸から釣る方法のほかに、船から釣ることもできますので、お気に入りの釣りスポットを見つけて楽しんでみてはいかがでしょうか。

ヒメマスとともに青森県の自然や文化に触れよう

青森では、ヒメマスの仲間であるベニザケも質の良いものが豊富に捕れ、加工製品は全国で販売されます。大間のマグロや、湖で捕れるしじみなど、豊かな漁業文化を持つ青森。ヒメマスはそんな豊かな文化に触れるきっかけにもなるはずです。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 海に出ると「ベニザケ」と呼ばれる、青森県の十和田湖でとれる魚は?

A.ヒメマス