埼玉県を代表するせんべいをご紹介します。バリバリとした歯ごたえと、香ばしい香りがたまらないせんべいです。そのせんべいとは、どのようなせんべいなのでしょうか。
保存食だったせんべいが洗練されて献上品になった
草加せんべいは平成18年、一般社団法人・本場の本物ブランド推進機構が行う事業で地域食品ブランド「本場の本物」として認定されました。これは、その土地ならではの伝統的な製法と食材で、本物の味を作り続けてきたことが認められた食品のことです。草加せんべいの基準は、埼玉県草加市か八潮市、川口市、そして越谷市にて、関東圏で収穫されたうるち米を使って製造したせんべいです。また、最低10年の製造経験を持つ人の管理下で、押し瓦を使った型焼きか押し瓦方式を使った堅焼きという製法で焼くということも決まっています。
それに加えて、翌年には地域団体商標にも登録しました。この動きを受けて、草加せんべい振興協議会と草加市では、ブランドを確立するための協定を締結。各事業所の工場に専門機関を派遣し、製造工程や衛生管理、食品表示などに目を光らせ、品質を落とさないよう尽力しています。「本場の本物」の基準がそのまま草加せんべいの特徴になります。味は各事業所が使う米の品種や味付けによって異なりますが、醤油味が定番です。草加市内には製造所と販売所合わせて50軒以上があり、なかには機械だけに頼らず天日干しをしたり、手で焼いたりする製造所もあります。
草加せんべいの作り方は、まず粉末のうるち米に熱湯を注ぎ、練って玉にして、蒸篭で約90分蒸すのが第一段階です。第二段階は、米のアクを取るために練り玉を石臼でついてから、冷水に約1時間さらします。その後再度石臼でついて粘りと張りを出し、伸して型抜きをするのが第三段階となり、干すのが第四段階です。天日干しの場合は、数日間太陽に当てます。干した後、さらに焙炉という機械で熱を加えて、芯までカラカラに乾かします。最後にひっくり返しながら焼き、醤油を塗って完成です。焼く際にせんべいが反ったりむやみに膨らんだりするのを避けるために使うコテを押し瓦と言います。
草加市の農業は野菜の栽培が主流で、米はそれほど多くありません。しかし、昔は稲作の栽培が盛んだったため、農家の人達は余った米を保存する目的で、蒸した米を団子状にして乾燥させていました。この堅餅と呼ばれるせんべいは塩を振って焼いて、おやつに食べていたと伝えられています。そして、江戸時代に草加宿が置かれて物売りや茶屋が並び出すと、せんべいも販売されるようになりました。保存が利くうえに美味しいと旅人に評価され、次第に土産物として各地に広まっていきました。当初は塩味だったわけですが、幕末に醤油が庶民にも普及してきた頃から醤油を塗って焼かれるようになります。せんべいを作る店は明治後半になって増え出しましたが、専門店ではなく、雑貨店がせんべいも売るという店が大多数でした。
せんべいがさらに有名になったのは、川越で開催された特別大演習がきっかけです。埼玉の名産品としてせんべいを天皇陛下に献上したところ、「皇室が召し上がった草加のせんべい」として、広く知られるようになったのです。この動きを受けて、地場産業として草加せんべい作りを確立するようになっていきました。昭和時代に移っても草加せんべいは人気でしたが、太平洋戦争の激化により、米の入手が難しくなってしまいます。同業者が続々と廃業していくなかで、何とか経営を続けていた業者があったおかげで技術が現代に伝えられているのです。
戦後は高度経済成長が起きたため、草加せんべい人気を復活させるまでに大した時間はかかりませんでした。即売会を百貨店や駅で行うたびに売り切れ、認知度が高まっていきます。しかしその反面、草加せんべいに似せて作った商品が出回るようになってしまいます。品質の低い商品も少なくなかったので、草加せんべいの評判は落ちてしまいました。「本場の本物」などの認定は、この問題を打破するための取り組みだったのです。
焼き立てが最も美味しい!
草加せんべいは、関東近郊で作られたうるち米を使用して埼玉県の4市で作られたものだけが名乗れます。せんべいは焼き立てが最も美味しいと言われるので、現地に行った際は、買ったその場で食べるのがおすすめです。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 江戸時代から作られている、埼玉県を代表する和菓子は?
A.草加せんべい