岐阜県の飛騨高山地方で、厳しい寒さの中、生活の知恵から生まれ、現在まで親しまれている郷土料理があります。現在では旅館などで観光に訪れた人々にも振る舞われるこの郷土料理。一体どんな料理なのでしょうか。この記事でご紹介したいと思います。
生活の知恵から生まれた
岐阜県は日本のほぼ真ん中に位置する県で、県南部には濃尾平野が広がり、県北部は飛騨山脈がそびえる豪雪地帯としても知られています。その県北部の飛騨高山地方には、古くから朴葉味噌という郷土料理が伝えられています。
朴葉味噌とは、大きな朴葉の上で飛騨味噌やネギなどの薬味と、山の幸である山菜やきのこ乗せて焼いて食べる料理です。朴葉味噌は赤味噌のような濃い色をしていますが、見かけによらず塩分は控えめで、麴の優しい甘みやうま味が凝縮されているのが特徴です。そのおいしさは、農林水産省指定の『農山漁村の郷土料理百選』にも選ばれているほどです。
飛騨高山地方の山林には古くから朴の木が多く自生しています。その葉は人の顔ほどの大きさがあり、山椒のような爽やかな芳香を感じられます。枯れて塩漬けにされた朴葉は火に強くて丈夫なので、飛騨高山では古くからお皿の代わりとして朴葉が使われていました。(火を通さず、保存用としてのみ使う場合は枯れていなくても大丈夫です)盛られた料理を器の香りと一緒に食べるというのは、朴葉を使った料理ならではの、なんともオツな楽しみ方と言えます。
また、朴葉には高い殺菌作用があることも知られています。朴葉に食材を包んでおくとカビの発生を防いでくれるということから、古くから食材の保存にも重宝されてきました。お餅を包んだ朴葉餅や、寿司を包んだ朴葉寿司といった料理は、朴葉の持つ殺菌効果が活かされた料理だったのです。
朴葉味噌は偶然生まれた?
寒さが厳しい飛騨高山では、かつて冬になると保存食として作っておいた漬物や味噌が樽ごと凍ってしまうことも珍しくありませんでした。当然、凍ったままでは食べられないので、凍った漬物や味噌を溶かすために、それらを朴葉に乗せて七輪で焼いたのが朴葉味噌の発祥とされています。
朴葉の香りが移った漬物や味噌はまさに絶品。その香りと味は人々の食欲をそそり、そのあまりのおいしさはご飯が止まらなくなってしまうほど。「これでは家のお米がなくなってしまう!」という意味で、「朴葉味噌を三年食べ続けると身上をつぶす」とも言われていたほどです。朴葉味噌とは、飛騨高山の厳しい寒さと豊かな自然、そこに暮らすの人々の生活がうまく組み合わさって偶然生まれた、まさに究極の地元の味と言えます。
朴葉味噌を食べるには
風情ある街並みが残る飛騨高山は、毎年国内外から多くの人たちが訪れる観光地です。周辺の旅館などの宿泊施設では、食事の際に必ずと言ってよいほど朴葉味噌が出てくるほど、朴葉味噌は飛騨高山を代表する味覚として知られています。
朴葉味噌のほか、飛騨高山のもうひとつの特産品といえば飛騨牛です。朴葉味噌はどんな食材にも合うため、もちろん飛騨牛との相性も抜群です。高山市内には飛騨牛と朴葉味噌を味わえるレストランがたくさんあります。一緒に食べれば、一度に飛騨高山の味覚を楽しむことができますね。
朴葉味噌はいまや飛騨高山土産の定番となっており、高山のお土産屋さんや道の駅などでも気軽に購入することができます。インパクトのある見た目に、ご飯のお供にもぴったりな朴葉味噌はお土産にしても喜ばれます。
飛騨高山の冬が生んだ朴葉味噌
朴葉味噌の魅力、お分かり頂けましたか?飛騨高山を代表する味覚の朴葉味噌は、この地方ならではの厳しい寒さが生んだ偶然の産物だったのです。古くから地元の人々によって守られてきた朴葉味噌は、飛騨高山を訪れたら必ず味わっておきたい郷土料理です。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 岐阜県で昔から食べられている、味噌にネギやキノコ、山菜を絡めて焼いたものを、その時使うものから何という?
A. 朴葉味噌