魚を塩漬けにし、さらに糠漬けにした、福井県の郷土料理といえば?

福井県の郷土料理をご紹介します。魚を糠漬けにしたものです。魚の糠漬けというのは、珍しいですよね。どのようなものか、イメージが湧かない人も多いかもしれません。しかし、一度食べると、その美味しさがクセになるとまでいわれるほどのものです。また、栄養を豊富に含んだ優れた発酵食品でもあります。ここでは、美味しくて栄養豊富なその郷土料理について、その歴史や食べ方を紹介します。最後には簡単な作り方も載せていますので、是非試してみてくださいね。

「へしこ」ってどんな料理?

へしこは、福井県のなかでも特に若狭地方で昔から愛され、よく食べられてきた郷土料理です。魚の糠漬けのことを指し、使われる魚の種類として代表的なものはサバですが、ほかにもイワシやフグ、ブリを漬けこんだものがあります。時には、イカやハタハタなどもへしこにされることがあり、地元の福井県の商店では年間を通してへしこを購入することができます。魚を糠漬けにする調理法自体は、福井県以外にも北陸地方のいくつかの地で見られますが、福井県のへしこは魚を塩漬けにしたあと、さらに下味をつけてから糠に漬け込むことが特徴です。

塩と糠だけでは塩辛くなりがちなところを、醤油やみりんなどで下味をつけることによって食べやすくなるのです。また、毎日食べたとしても飽きない味わいになります。漬け込む時間や手間はかかりますが、手作りしている家庭も多く、その場合は下味に使う調味料を工夫することで家庭ごとに少しずつ異なる味わいとなっています。へしこが食べられるようになったのは鎌倉時代からとされています。日本海に面した福井県は、昔から美味しい魚介類が豊富に採れる地でした。そのため、海産物の加工技術も発達し、優れたものを持っていました。その一方で、日本海は荒天になることも多く、毎年11月頃になると漁に出る機会は少なくなります。

そこで、培った水産加工技術を活かして魚をあらかじめ漬物にしておくことで、漁に出られないときに不足しがちなタンパク源が補われました。それが、へしこです。その美味しさもさることながら、魚を漬物にするという珍しさもあり、いつしかへしこは福井県を代表する郷土料理となったのです。2007年には農山漁村の郷土料理百選に選ばれています。また「へしこちゃん」というゆるキャラも誕生しています。身体の部分には、へしこを漬け込む際に使われる木樽が模されていて、頭部は赤いリボンを付けたサバというキャラクターです。2009年の「ゆるキャラアワード」ではグランプリを獲得していますから、見覚えのある人もいるかもしれませんね。

このよう、にへしこは地元に深く根付き、愛されている郷土料理なのです。ちなみに、へしこという名前の由来には諸説あります。魚を漬け込むことは、この地方の漁師言葉では「圧し込む(へしこむ)」と言います。そこから来ているのではないかというのが、ひとつです。また、干潮(ひしお)という魚を塩漬けにすると出てくる水分のことを表す言葉がありますが、それが訛ったのではないかという説もあります。

栄養豊富で優れた発酵食品の「へしこ」

へしこは「海のチーズ」と呼ばれることがあります。漬け込むことによって濃厚になった旨味と、まったりとした口当たりは、まさにチーズのようで非常に美味です。また、へしこは、栄養を豊富に含んだ優れた発酵食品でもあります。塩分もそれなりに含んでいますから、食べる量にやや気をつける必要はありますが、それさえクリアすれば日々摂取したい食品です。ではへしこは、どのような栄養を含んでいるのでしょうか。まず、へしこに使われる青魚自体の栄養成分があります。

青魚には、DHAやEPAという血液をサラサラにする成分が多く含まれています。ミネラルやアミノ酸も豊富です。青魚を食べると頭がよくなるといわれることがありますよね。そのような青魚の持つパワーに加えて、漬け込むための糠にも豊富なビタミンが含まれています。このように、使われる食材がもともと豊富な栄養成分を持っているのに加え、成分のなかには発酵することによってさらに含有量が増えるものもあります。つまり、へしこは、身体に良いさまざまな栄養素がギュッと詰まっている非常に理にかなった料理なのです。

「へしこ」は、食べ方いろいろでどれも美味しい!

初めてへしこを見たときには、どのようにして食べればよいのか少し戸惑うかもしれません。しかし、新鮮なへしこはそのままでも問題なく食べることができます。糠をきれいに洗い落として皮を剥ぎ、薄くスライスしてからお刺身として食べてみましょう。糠漬けになった魚の味をダイレクトに味わうことができます。ご飯に乗せて、海苔やわさびを添えたお茶漬けとして食べるのも、ピッタリの食べ方です。ご飯が何杯でも進みます。少し凝りたいときには、酢醤油やレモン汁を用意して、それを付けながら食べるのもサッパリとして良いですよ。お刺身で食べる以外には、スライスしたへしこを軽く炙って焼きへしこにしてから食べるという方法があります。

香ばしさが加わり、生のものとは一味違う美味しさを味わえる人気の食べ方です。変わったところでは、パスタに入れたり、ピザに乗せたりというものもあります。アンチョビの代わりといったところでしょうか。奥深い味わいがあるへしこは、ジャンルを問わずどのような料理に使っても良い風味をプラスして美味しくしてくれます。

へしこの作り方

へしこを購入できるお店は福井県には数多くあります。是非一度は実際に福井県を訪れて、本場のへしこを味わいたいところですが、それが難しいときには通販でも購入することができます。代表的なサバのへしこだけではなく、お店によってはフグのへしこやイワシのへしこなどもあり、それぞれ調味料に工夫を凝らしていますので好みの味のお店を探してみるのも楽しいでしょう。また、自分で作ってみるというのもおすすめです。準備や漬け込むのに時間はかかりますが、なんといっても自分で作ったへしこの美味しさは格別です。

しかも、購入するよりも安く、好きなときにいつでも食べられるというのも良いですよね。では、へしこのなかでも代表的な「サバのへしこ」の作り方を、簡単に紹介しましょう。ちなみに、サバのへしこは、サバが旬を迎える秋から冬の時期にかけて作るのが通常です。まず、新鮮なサバを用意します。サバを用意したら、内臓を抜きます。へしこには、頭が付いたままのサバを使用しますので、割りばしを口から入れて内臓だけを抜いておきましょう。内臓を抜いたサバは、サバの重量の14%の塩をまぶし、2週間から3週間、塩漬けにします。そのあいだは冷暗所でも良いですが、冷蔵庫に入れておくほうが安心です。

また、塩をエラなどにまぶせていなくて、腐敗させてしまうという失敗をすることがあるため気をつけましょう。塩漬けが終わったら、糠を用意して本漬けに入ります。塩を落として醤油やみりん、唐辛子を加えた糠と共に漬け込みます。糠はサバの上下に隙間なく詰め込みます。また、醤油やみりんは、糠1kgに対し醤油100cc、みりん50ccがおおよその目安です。この割合は家庭によって異なります。ここにさらに、塩漬けにしたときに出たサバエキスや酒粕などを加えるレシピもありますので、色々と試しながら自分のレシピを作っていきましょう。

最初の塩漬けがしっかりできていれば、醤油やみりんは少量でも大丈夫です。糠と共に容器に入れたら、しっかり漬け込みたい場合には上から重石を乗せ、冷蔵庫の中か常温に置いておきます。漬けているあいだは混ぜてはいけません。常温であれば3週間、冷蔵庫では1カ月で食べられるほどになります。そのあとはお好みで熟成期間を調整しましょう。漬け込む期間が短ければアッサリとした、長ければ濃厚な味のへしこになります。お店で売られているものは、1年から2年程度熟成させたものが一般的なのですが、例え半年程度の熟成期間でも充分に濃厚で奥深い味わいを楽しめますよ。

福井県の郷土料理「サバのへしこ」を作ってみよう

へしこは、福井県の若狭地方で愛されている郷土料理です。その歴史は古く、なんと鎌倉時代からともいわれています。そのままお刺身として食べるたけではなく、焼いたりピザに乗せたりと色々な食べ方ができ、どれも美味しいのが魅力です。また、へしこは栄養を豊富に含んでいる優れた発酵食品でもあるため、美容や健康のためにも、是非日々の食卓に取り入れたいところですね。家庭でもへしこは作ることができますので、一度挑戦してみてはいかがでしょうか。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 鯖を塩漬けにし、さらに糠漬けにした、福井県の郷土料理といえば?

A.へしこ

Q. 福井県の郷土料理「へしこ」で、主に使われる魚は何?

A.サバ