徳島県の祖谷(いや)地方をはじめ、現在では徳島全域でも食べられている、そばの実の皮を剥いて干したものを何というかご存じでしょうか?
蕎麦の実を挽かずに炊き上げる、徳島の「そば米」?!
徳島県の祖谷地方は、奥深い自然が広がる山村地帯です。雄大な自然美や絶景が堪能でき、日本三大秘境のひとつに数えられている、秘湯と呼ばれる祖谷温泉にも足を運べる観光地でもあります。
そんな祖谷地方では、そばの実をすり潰さず、そのまま米の代わりに使用する「そば米」(そばごめ)と呼ばれる食べ物があります。昔から親しまれていて、雑炊にしたり、鍋物の中に入れたり、サラダの具材にしたりと、食する機会は多いのだそう。
そばの実を挽かずにそのまま調理に使う地域は全国でも珍しいのですが、徳島県内では現在、祖谷地方だけではなく県全域で「そば米」は食べられるほどに広がったのだとか。そのことから「そば米」を使った「そば米雑炊」や「そば米汁」は徳島の郷土料理として紹介されています。
元々徳島県には平地が少なく、特にこの祖谷地方は山間部がほとんどを占めていて米が育ちにくい地形にありました。ですが蕎麦は高い山に囲まれた祖谷地方の地形でも早く育てることができるため、米の代わりに「そば米」が普及したのだそうです。
「そば米」ができるまで
そばの実を茹でて、そば殻を取り除き、乾燥したものが「そば米」です。お米と同じように炊き上げたり、雑炊にしたりして食べます。プチプチした食感が楽しく、美味しい食材です。
「そば米」を作るには…
・蕎麦の刈り取りを行います。
・2週間ほど天日干しした後、からさおで叩いて蕎麦の実を落とします。
・ケンド(土ふるい)とトウミ(選別機)を使って、不要な茎や葉を取り除きます。
・塩水で茹でた蕎麦の実を、ムシロの上に広げて2週間ほど干します。
・乾いた実をだるま臼と呼ばれる精米機で脱穀し、トウミ(選別機)に蕎麦の実を入れて殻を飛ばします。
・さらに10日間ほど日陰で干し、最後に殻や小石などを取り除くと「そば米」の完成。
手間暇のかかる「そば米」ですが、普通の米よりは早く育ち、早く食べられるのだと言います。
そばの実をそのまま食している地域は珍しいのですが、他県にも山間部で見られる食し方のようです。
・長野県「そばまい」…主に米と混ぜて炊き上げる。
・山形県「むきそば」…主にゆでた後にだし汁を掛け醤油、みりん、砂糖などで味付けをする。
徳島県では「そばごめ」と呼ばれていますが、呼び方も食べ方も少し違っているところから、その土地土地の食文化として根付いていることが伺えます。
徳島のソウルフード「そば米雑炊」?!
「そば米」の始まりは、源平合戦に敗れた平家の落人がこの祖谷地方にやってきて、米の代わりに栽培期間が短いそばの実を育て、「そば米」として食したことで定着したと言われています。
そしてその平家の人たちが正月料理として作っていたのが「そば米雑炊」なのだそうです。
この「そば米雑炊」は、野菜や山菜と一緒に炊く料理でしたが、特別な時には山鳥を入れることもあったのだそうです。
今でもこの「そば米」雑炊には、徳島の特産であるにんじんやちくわ、徳島ゆかりの山菜・野菜をたっぷり使用します。さらに、大根やこんにゃく・干しシイタケをいれて味も食感も食べ応えも満足な雑炊となっています。
鶏肉の美味しさもバランスが良く、徳島産のすだちもひと絞りすると爽やかで美味しさが増します。「そば米」のプチプチとした食感と食材の織りなす美味しさで長く好まれている「そば米雑炊」ですが、徳島の美味しさを詰めこむことができるところも地元の人々に長く食べられてきた理由かもしれません。
「そば米」は茹でると4倍以上の大きさまで膨らむので食べ応えもあります。
そばの実は、たんぱく質、ミネラル、食物繊維などが多く含まれていて栄養価の高い食材です。そばの実でできたそば米に、ビタミンたっぷりの野菜や肉をたっぷり加えて作る「そば米雑炊」は栄養バランスのとれた一品であり、美容にもダイエットにも嬉しい料理です。
優しい味わいにほっとする「そば米雑炊」は、近年ではフリーズドライ製法にしたお手軽な商品も販売されていますが、県内のスーパーマーケットやインターネットストアでも「そば米」を手に入れることができますので、お家で作ってみてはいかがでしょうか?
いつものお米の雑炊とは違った楽しい食感と風味が味わえますよ。
ザ・ご当地検定の問題
Q.徳島県の祖谷地方で食べられている、そばの実の皮を剥いて干したものを何という?
A.そば米