皆さんは「しもつかれ」という料理名を聞いたことがあるでしょうか。おそらく北関東出身の方々は耳にしたことがあるかもしれません。しもつかれとは栃木県周辺の地域にみられる郷土料理で、もともとはお供え物として使われた縁起物の料理です。
しもつかれの歴史
しもつかれの歴史は江戸時代から始まります。江戸時代中期、浅間山の噴火や冷害などの影響で農作物に深刻な被害が生じ、何年もの不作が続きました。その結果、町には作物が出回らなくなり、人々は深刻な飢餓状態に陥りました。これを「天明の飢饉」といいます。被害は非常に深刻で人肉を犬肉としてだまし売ったとさえ伝えられています。そんな状況に打ちひしがれた下野の住民が豊作を祈るために神社にお供えしたのがしもつかれです。当時は深刻な飢餓状態でしたからお供え物をするにしてもふさわしい食べ物がありません。そのため家庭に余っているサケの頭や酒粕、大根や大豆などの残り物を集めて作りました。
しもつかれはこんな料理
家庭によって多少違いがありますが、一般的なしもつかれのレシピを簡単にご紹介します。材料はサケの頭、大根、にんじん、大豆(缶詰)、油揚げ、酒粕、塩、醤油です。下ごしらえとして、大根とにんじんを鬼おろしでおろしておきます。また、サケの頭は軽く湯がいて、流水で血や汚れを取り、においが取れるまで水にさらしておきます。下ごしらえが終わったら先ほどの大根とにんじんをなべに入れ火を通し、柔らかくなったらサケの頭を入れて3-4時間煮込みます。鍋の中の水分の量を確認しながら必要に応じて水を足します。3-4時間するとサケの頭が柔らかくなるので硬い骨だけ取り除き、大豆と油揚げをいれ塩、しょうゆ、酒粕で味を調えれば完成です。
しもつかれはサケの頭、大豆、大根、にんじんなどが入っていることから栄養のバランスがとれるヘルシーな料理です。「7軒の家のしもつかれを食べれば病気にならない」という言い伝えがあるほど健康に良いとされ、昔は近所の人たちと分け合って食べました。一方で、外食やレトルト食品が発達した現代では、料理に時間のかかるしもつかれを作る家庭がずいぶんと減ってしまいました。また、地元の居酒屋やレストランでもしもつかれがメニューに並ぶのは極めてまれです。なお、栃木県では年に数回しもつかれが学校の給食で出されることがありますが、その独特の見た目や味から、残り物ナンバーワンにランクインするほど子供達には人気がありません。こうした事情から地元民でさえもしもつかれを食べる機会がずいぶんと減ってきているのですが、地元の道の駅やスーパーなどではしもつかれが店頭に並ぶことも多いです。
しもつかれを食べるには
上記でしもつかれのレシピをご紹介してきましたが、本場の味を食べてみたいと思われている皆さんのために、しもつかれが買える地元のお店を2軒ほどご紹介していきましょう。まず1軒目は栃木県佐野市の道の駅「どまんなかたぬま」です。「どまんなかたぬま」は佐野田沼ICを降りて2kmのところにあります。新鮮な地場野菜やいちごなどが買えるので地元民もよく利用しますが、土日は他県からの観光客でにぎわっている道の駅です。佐野プレミアムアウトレットからも近いのでついでに立ち寄られる方も多い印象です。こちらの総菜売り場では年間を通してしもつかれが店に並びます。売り切れてしまうこともあるので必ず手に入れたい方は電話で確認してみるといいでしょう。続いて2軒目はJR宇都宮駅から車で5分の場所に位置する「東部宇都宮百貨店」です。店内の食品フロアに「地場野菜アグリランド」と呼ばれるコーナーがあるのですが、そこで宇都宮近郊の農村の人たちが作っているしもつかれが売られています。
栃木県に来たらしもつかれを食べてみよう
昔は残り物で作られたしもつかれですが、現在では希少価値が高い郷土料理です。特に切り干し大根やふきの煮物などのような和食総菜が好きな方には好まれる味です。和食が好きな方やご高齢のご家族へ、話のネタとして買っていくのも喜ばれそうですね。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 栃木県の郷土料理「しもつかれ」に使われる魚は?
A.サケ
Q. 栃木県の言い伝えで、七軒の家のしもつかれを食べるとどうなるとされている?
A.病気にならない