江戸時代の記録にも登場する伝統野菜は、そのやさしい甘みと鮮やかな赤色で料理家を魅了し、いまや地域が誇る名物野菜としても知られています。
本記事では、奈良の山間で代々守られてきた、ひときわ赤く輝く在来カブの歴史や特徴、手に入れ方まで、幅広くご紹介します。
片平あかね入門:大和野菜を代表する真っ赤なカブの由来と歴史
奈良県の北東部、三重県との県境に位置する山添村では江戸期以前から細長い赤カブが祭礼料理に用いられ、種子は家ごとに守られてきたと伝えられています。明治期には交雑を防ぐため離れた畑で育てる手法が確立され、在来性が保たれました。石混じりの傾斜地でも育つ強靱さが山間部の暮らしを支え、現在も自家採種の文化が残っています。
地名に由来する片平という呼称は、かつて山添村片平地区で集中的に栽培された事実に根差しています。鮮紅色を意味する茜染めになぞらえた“あかね”が後に付与され、平成期に入りブランド登録が行われました。地域団体商標が整備されたことで市場での識別力が高まり、赤カブ全体との差別化が進んでいます。
大和野菜制度は奈良県農林部が2004年に制定し、県内原産、歴史的栽培実績、独自の風味を備える作物を選定します。片平あかねは早期に認定を受け、県主催のフェアや学校給食に採用されました。公的認証により生産者の誇りが高まり、種子保全と販路拡大の両面で恩恵が及んでいます。
片平あかねの風味と栄養価
片平あかねの果肉は繊維が細かく、包丁を入れると水分がじわりとあふれるほどみずみずしいです。生で薄切りにするとシャキッとした歯切れが際立ち、口に広がるやさしい甘さの中に、ほんのりとした辛みがアクセントになります。軽く塩を振るだけで味が調い、ピクルスやサラダの風味が一段深まります。
果皮の鮮紅色はアントシアニン系色素のペラルゴニジン配糖体が主因で、紫キャベツより含有量が高めです。ポリフェノールの一種である本成分は活性酸素の抑制や血行を促進すると言われ、ビタミンCやカリウムも豊富で、塩分排出や肌の保護に役立ちます。
片平あかねレシピ集|映えるサラダから温かい煮込みまで
片平あかねは皮の赤みが魅力のひとつですが、水に長く浸すと色が抜けやすくなります。調理前に軽く水洗いし、皮をこすりすぎないよう注意が必要です。保存は乾燥を避け、湿らせた新聞紙に包んで野菜室へ。カット後は密閉容器で冷蔵し、数日以内に使い切るのが理想的です。
薄切りにしてレモン果汁とオリーブオイルで和えるだけで、色鮮やかなサラダに仕上がります。甘酢を使えば、さっぱりとしたマリネに変化し、冷蔵庫で数日持つのも便利な点です。どのレシピも見た目の華やかさと風味の良さが引き立ちます。
また、加熱することで甘みがぐっと引き立ち、さまざまな料理に応用できます。輪切りにして出汁で煮ると、味がしみ込みやすく、煮物に最適です。また、オーブンで焼けば表面が香ばしくなり、メイン料理の付け合わせとしても重宝されます。
片平あかねを手に入れる|直売所・通販・ふるさと納税&食べられる店
片平あかねは山添村の直売所や桜井市の道の駅で秋冬に多く並びます。奈良市内のアンテナショップ「奈良まほろば館」でも週末ごとに数量限定で入荷があり、都市部でも入手可能となります。いずれも担当スタッフに用途を相談すると調理向きサイズを案内してくれる点が魅力です。
ふるさと納税サイトでは片平あかねを中心とした季節野菜セットが出品され、寄付額一万円前後で五キロほど受け取れる仕組みです。返礼品を定期便に指定すれば月ごとに旬のタイミングで届くため、鮮度を保ったまま楽しめる利点があります。
奈良市内の創作レストラン「蔵奏」は片平あかねのローストを大和牛の付け合わせに採用し、季節限定コースで提供します。桜井駅近くのベーカリーカフェ「アカネテーブル」は塩麹マリネをフォカッチャに挟み、鮮やかな断面がSNSで話題となりました。山添村の農家食堂「里山食彩」では塩とオリーブオイルだけで蒸し焼きにし、素材本来の甘みを体験できる昼定食が人気です。
本記事では、その歴史や栄養価、調理法から入手先、提供しているレストラン情報まで幅広くご紹介しました。旬の味わいをぜひ直売所や通販で楽しみながら、健康とともに地域の食文化にも触れてみてはいかがでしょうか。
ザ・ご当地検定の問題
Q.細いダイコンのような形をした、奈良県在来のカブの真っ赤な品種は?
A.片平あかね