「おこし」は全国に様々な種類があり、大阪名物の粟おこしや岩おこしのほかに東京浅草の雷おこし等もその名が知られています。しかし、その違いについて考える機会は少ないかもしれません。岩おこしとの違いに触れながら粟おこしについて紹介しましょう。
「おこし」の由来と粟おこしの特徴について
弥生時代から「おこし」の原型となるお菓子はあり、奈良時代に神前に供えるため糒と蜜を固めて作った食べ物が粟おこしの起源になったと言われています。しかし、平安時代に唐との貿易で行き来した遣唐使が日本に持ち帰った唐菓子から「おこし」の歴史が始まったというのが通説です。「おこし」という名前は「おかし」が訛ったことに由来するとされていますが、「興し」という縁起の良い音の響きが起因となっているという説も有力です。
粟おこしは室町時代に貴族が間食やおやつに食べる高級和菓子でしたが、江戸時代には穀物と水飴さえあれば誰でも作れる庶民のお菓子として定着し、駄菓子屋の人気商品になっていったのです。粟おこしと言えばその名のとおり元は粟が原料でしたが、次第にもち米やうるち米を用いるようになり粟は使われなくなりました。乾燥して常温でも日持ちが良いため非常食としても重宝され、大日本帝国陸軍の大阪駐屯地で乾パンとともに戦闘食として準備されていました。
元々材料は米や雑穀などシンプルな自然素材ばかりでしたが、梅紫蘇・柚子・黒胡麻など様々な風味が加えられ味わい深い和菓子として進化してきました。粟おこしを作るには、まず米を蒸して餅にしたら、薄く伸ばして乾かし、粉砕し細粒状にします。次に、この細かい粒に塩を加えて釜で炒り膨脹させたら、塩抜きをしてゴマなどを混ぜ、熱した糖蜜や水飴とからめます。こうしてできた固形物を板状にして冷ましたら、長方形に形を整えます。さらに四角形に切って食べやすいサイズにすれば出来上がりです。
おこしの主成分となる米には炭水化物が多く太る原因となると言われますが、骨や筋肉を作るたんぱく質も豊富なうえ、亜鉛・鉄分・カルシウムなどのミネラルも含まれています。亜鉛は臓器機能を維持し細胞を再生する重要な働きをします。カルシウムは骨や歯の形成に欠かせず、骨粗鬆症を予防するだけでなく、情緒安定にも不可欠な重要な成分です。鉄分は赤血球を作るヘモグロビンの成分になります。米に含まれるビタミンB1は毎日身体を動かすエネルギー生産に欠かせません。食物繊維も米には含まれており、腸の働きを助けて栄養分の吸収を良くし血糖値の上昇を抑えます。
岩おこしと粟おこしの違いについて
大阪府のもうひとつの名物として知られる岩おこしは、粟おこしと原料が同じで形も似ています。岩おこしと粟おこしの違いは、細かい粒子のサイズと固め方にあります。岩おこしの粒子の方がより細かく水飴や糖蜜で隙間なくがっちりと固めているため、とても硬くて歯ごたえがしっかりしています。岩のように硬いお菓子なので「岩おこし」という名前が付いたという説もあります。ピリッとした生姜で黒砂糖の甘さを抑えている点も特徴的で、甘党でない人にも好まれるお菓子です。
江戸時代に大阪の運河を工事する際、地面を掘り起こしたところ巨石が大量に出てきたことから「岩おこし」という名前が付けられたとも言われています。江戸時代のお米は一般庶民に手が届かない高価品でしたが、商業地として栄えていた大阪では市場で庶民でも米を入手することはさほど難しいことではありませんでした。そこで米を原料とする岩おこしは、大阪の庶民のお菓子として定着化が進んだのです。
岩おこしには粟おこしと同様に梅鉢の御紋が記されています。菅原道真が太宰府に流される時、大阪市の上本町付近で船を待つために休息していたところ、都落ちする道真を哀れに思った女性が「おこし」を渡そうとしました。すると、道真は婦人の厚意にいたく感激して、菅原家に伝わる梅鉢の御紋入りの着物の袖を返礼として与えたと言われています。この言い伝えにより大阪名物の岩おこしには梅鉢の御紋が記されるようになったのでした。
大阪府に行ったら、粟おこしと岩おこしを食べ比べてみよう
大阪に行ったら粟おこしと岩おこしを食べてみましょう。岩おこしは硬いので歯が欠けないよう注意してください。どちらも興隆を願う縁起物でもあるので、お土産や贈答品にも向いていると言えるでしょう。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 大阪の名物菓子「粟おこし(あわおこし)」の原料となっているのは?
A.コメ
Q. 次のうち、大阪名物の「おこし」はどれ?
A.岩おこし