兵庫県の神戸市や高砂市で名物となっている「にくてん」といえば、牛スジを使ったどんな料理?

兵庫県神戸市の名物「にくてん」は、戦前から長く庶民に親しまれてきた食べ物です。にくてんの存在は徐々に減少傾向にありましたが「にくてん喰わん会」の発足により、神戸を中心に大きな注目を集めています。神戸市ではにくてんを提供する店も増えており、手軽に食べられるようになっています。今回ここでは、にくてんの歴史や特徴、家庭での作り方などを紹介します。

兵庫県神戸市を代表する名物「にくてん」とは?

兵庫県神戸市の名物にくてんとは、戦前に手軽なおやつとして親しまれていたお好み焼きの呼称として呼ばれています。名前の由来は諸説ありますが、牛スジと呼ばれる「スジ肉」と「天かす」が入っていることから、それぞれの文字を取って「にくてん」と名付けられたといわれています。

にくてんの特徴は、肉じゃがのように味付けされたジャガイモと、甘辛く煮込まれた牛すじとこんにゃくが入っていることです。具材の原点は、おでんの残りの具を使ったことに由来します。そのため、家庭によって内容が異なり、ジャガイモや牛すじ、こんにゃく以外の具材が入っている場合あります。

大阪や広島のお好み焼きの普及に伴い、にくてんの存在は徐々に忘れ去られ、一部の地域でのみ食べられるようになりました。しかし、その忘れ去られた「にくてん」の復活を目指して、平成16年にお好み焼き屋の12店舗が加盟する「にくてん喰わん会」が発足しました。それぞれの店舗では、お店自慢のお好み焼きに加えて、その店独自のレシピで作られる「にくてん」が提供されています。

また、にくてん喰わん会の加盟店では、全店共通のポイントカードの実施や、全店ですべてのメニューが10%オフになる会員証の発行などさまざまな特典が用意され、少しでもにくてんに興味を持ってもらえるようなサービスが行われています。さらに、B級グルメのイベントや祭りの出店にも積極的に参加して、にくてんの普及に貢献できる取り組みが実施されています。

ルーツを辿る!にくてんの歴史について

戦前、東京では「もんじゃ焼き」が駄菓子屋の店先で売られるようになり、関西では水で溶かした小麦粉を焼いた「どんどん焼き」が、手軽なおやつとして親しまれていました。特にどんどん焼きは今のお好み焼きの形とは異なり、熱くて持てない子どもたちのために、1本の棒に巻かれて売られていました。

安く手に入る「もんじゃ焼き」と「どんどん焼き」は、子どもたちのあいだで一大ブームを巻き起こしていましたが、決して食事として食卓に並ぶことはありませんでした。しかし、関西で「どんどん焼き」が普及した当時、英国から神戸にウスターソースが上陸し、日本中で洋食文化が普及し始めたのです。この洋食文化の広がりに伴い「どんどん焼き」にウスターソースを塗った「一銭洋食」が、庶民のあいだで食されるようになりました。

この一銭洋食が現代で親しまれている「お好み焼き」のルーツになったといわれています。一銭で売られていたことが名前の由来である一銭洋食は、子どもでも簡単に買える安い金額で空腹を満たせることが、不況の時代に愛された理由のひとつです。

戦前は、一銭洋食が子どものおやつという認識が大きかったため、米を主食としていた日本で、夕飯の主食としてにくてんを食べることはありませんでした。しかし、戦後の食糧難で食べるものがほとんど無い状況下で、何か食べるものを探し求めた結果、一銭洋食が食卓に並ぶ食べ物として格上げされたのです。

戦後の一銭洋食は、水で溶いた小麦粉に刻みネギや少しの肉片を入れて焼かれた簡素な食べ物でした。しかし、一銭洋食をベースに、キャベツやそばなど好きな具材を入れるようになり、おやつである軽食から主食に変化を遂げていったのです。それを、現代では「お好み焼き」と呼びます。このお好み焼きを、兵庫県神戸市では「にくてん」と呼ぶようになり、その後形や具材を変えて名物の食べ物として普及していきました。

お好み焼きとは異なる!にくてんの特徴とは

にくてんの原型とも言えるお好み焼きの焼き方には、小麦粉で溶いた生地と具材を混ぜてから焼く「混ぜ型」と、鉄板に小麦粉で溶いた生地を薄く伸ばし、その上に具材をのせていく「のせ型」があります。お好み焼きが有名な2大都市と言えば大阪と広島ですが、焼き方はそれぞれで異なり、大阪では混ぜ型、広島はのせ型が主流です。

お好み焼きのルーツとなる一銭洋食は、先に生地を伸ばしてから具材をのせる「のせ型」が基本でした。しかし、一銭洋食にさまざまな具材を入れて、お好み焼きと呼ばれるようになると、店の開店を良くして稼ぎを増やすために、店側が具材を混ぜた生地を用意して、お客様自身で焼くスタイルへと変化していったのです。

一方、にくてんは生地の上に具材を重ねていくのせ型が一般的です。お店では、両面をしっかり焼いて表面に甘いソースをたっぷり塗り、二つ折りにしてまたその上からソースを塗って提供されます。お店で食べられるのはもちろんのこと、二つ折りで持ち運びやすいことから、自宅に持ち帰って食べる人も多いです。

家庭でも作れるレシピを紹介

12店舗が加盟する「にくてん喰わん会」の発足により、さまざまな種類のにくてんを食べることが可能になりました。しかし、にくてん喰わん会の加盟店は、にくてんを提供するうえで値段は一律400円、具材には必ずジャガイモ、牛すじ肉、コンニャク、キャベツ、青ネギ、天かすを入れるという条件が課せられています。

最低限の具材が入っているにくてんが1枚400円というのは、お好み焼きの値段と比べても破格の値段です。しかし、本来は家庭料理であり、戦前戦後には子どもたちに親しまれてきたという歴史から、現代でも同じように身近な存在でありたいという願いも込めて、にくてん喰わん会の発足当時から加盟店舗では一律でこの金額が維持されています。

本来にくてんは、おでんの残り物を具材にしていたことから、家庭料理として愛されてきました。作り方は、まず小麦粉を水で溶いた生地を、お玉の底の部分を使って鉄板に円形状に薄く広げます。広げた生地にある程度火が通ったら、粉カツオ、天かす、ジャガイモ、キャベツ、牛すじ肉、コンニャク、青ネギの順番に具材を乗せていきます。ジャガイモと牛すじ肉は、事前に甘辛く煮て準備しておきましょう。

ここで気をつけたいポイントは、時間をかけすぎると最初に広げた生地が焦げる可能性があるため、手際よく具材を乗せていくことです。具材を生地の上に乗せたら、その上からさらに生地をかけて裏返し、具材を挟み込むように両面をしっかり焼いていきます。

中の具材に火が通ったことが確認できたら、生地の上からソースを塗って、生地を二つ折りにします。その二つ折りにした生地の上からさらにソースを塗りましょう。ソースの上からお好みで、紅ショウガや青ノリをかけるのもおすすめです。

にくてんの作り方は非常に簡単で、家庭でも手軽に作ることが可能です。しかし、にくてん喰わん会が発足したことにより、にくてんを提供するお店が増えました。作り方や具材はある程度決まっていますが、ジャガイモや牛すじを煮るための味付けや、生地の上に塗る甘辛いソースはお店独自のレシピがあり、それぞれで異なったにくてんを食べることができるでしょう。

兵庫県神戸市の名物にくてんを食べに行こう!

注目度が高まる兵庫県神戸市の名物にくてんは、にくてん喰わん会に加盟する12店舗をはじめ、兵庫県内のさまざまな場所でにくてんが食べられるようになりました。戦前から食べられていたという長い歴史を持つお好み焼きを呼称したにくてんは、お好み焼きとは少し異なるレシピが存在します。自宅で作って食べることもできますが、兵庫県神戸市を中心にお店が増加しているため、本場のにくてんを食べ比べしてみてはいかがでしょうか。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 兵庫県の神戸市や高砂市で名物となっている「にくてん」といえば、牛スジを使ったどんな料理?

A.お好み焼き

Q. 兵庫県の名物「にくてん」の復活を目指して、平成16年に発足された会は?

A. にくてん喰わん会

Q. お好み焼きのルーツともいわれ、かつて西日本の駄菓子屋などで売られていた食べ物は?

A.一銭洋食