石川県の「とり野菜鍋」。この「とり」の意味は?

歴史ある数々の観光資源や温泉を有する石川県。日本海に面していることから、豊かな海の幸にも恵まれています。そんな石川県の食文化を語る上では『とり野菜鍋』は外せません。石川県民のソウルフードとも言えるとり野菜鍋を知っていますか?

とり野菜味噌の誕生エピソード

石川県のスーパーマーケットで必ず販売されている、とり野菜味噌。石川県民なら知らない人はいないとも言われるご当地調味料です。このとり野菜味噌とは、石川県かほく市に本社を構える『株式会社まつや』の商品です。

とり野菜味噌のルーツは江戸時代にまで遡ります。株式会社まつやの初代当主、松屋和平は北前船の廻船問屋を営んでいました。当時の北前船の航海は過酷なもので、航海中に体調不良を訴える人が続出していました。この状況をいかにして改善するべきか、松屋和平が至った答えが「食事でたっぷりの栄養を摂ること」でした。そこで、松屋自らが考案し、栄養面に配慮して調合された味噌が現在のとり野菜味噌のベースになったのです。当時、彼がこの味噌を使って作った鍋料理は、過酷な環境で働くたくさんの船員たちの健康を支えました。

後の昭和34年、株式会社まつやが創業されたときから、この味噌はとり野菜味噌という商品名で呼ばれています。先代のエピソードからも読み取れるように、とり野菜味噌の「とり」とは、鶏肉を意味しているのではなく、たっぷりの野菜や魚から「栄養を摂る」という意味があるのです。

とり野菜味噌ってどんな味噌?

とり野菜味噌の特徴はなんといっても、「いろんな食材と合うこと」これに尽きます。主な原材料となる米味噌は国内製造にこだわっています。この米味噌が生み出す豊かな風味とコクは、何度でも食べたくなる、飽きのこない味の秘訣です。この、とり野菜味噌の風味を最も楽しむことができる料理が「とり野菜鍋」です。野菜や魚のうま味が存分に引き出されたこの鍋は、野菜嫌いの子供でもパクパク食べてしまうほど。商品名に込められた願い通り、自然と野菜からたくさんの栄養を摂ることができるのです。

子供でも食べやすいベーシックな味付けのものだけでなく、まつや特製の豆板醬が入ったピリ辛タイプや、とり野菜味噌と白味噌をブレンドした酢味噌タイプなど、様々な種類が販売されています。どんな食材とも相性抜群なので、鍋料理以外にもいろいろな料理に使えます。株式会社まつやの公式ホームページには、とり野菜味噌を使ったおいしいレシピもたくさん紹介されています。まつやのとり野菜味噌は、普段の料理のレパートリーをぐんと広げてくれる万能調味料なのです。

とり野菜味噌のおいしさ、全国に拡大中

もともとは石川県発祥の調味料として、県民に愛されてきたとり野菜味噌ですが、そのおいしさは石川県だけに留まらず、少しずつ全国に拡大しています。石川県以外では、まず2015年に愛知県を始めとした東海地区での販売がスタートします。八丁味噌を特産品に持ち、古くから東海地区には食事に味噌を取り入れる文化がありました。その地区で、八丁味噌以外の味噌文化を浸透させようとしたというこの試みは、とり野菜味噌にとって大きなチャレンジだったのです。そのおいしさは東海地区でも受け入れられ、多くのスーパーマーケットで販売されています。

その後、関西や首都圏での販売も始まり、2017年までにほぼ全国で知られる存在となりました。テレビ番組やテレビコマーシャルなど、メディアにも多く取り上げられているほか、カップラーメンやレトルトカレー、菓子パンなどとのコラボレーションにも積極的です。

伝統のおいしさは時代を超えて。

石川県民にとっては当たり前だった調味料も、そのおいしさはじわじわと全国へと広がってきました。かつて、船員たちの健康を守るために作られたこの味噌は、時を経て全国の家庭へと広がり、今も私たちがおいしく栄養を摂るサポートをしてくれているのです。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 石川県の「とり野菜鍋」。この「とり」の意味は?

A. 野菜や栄養を摂取する