兵庫県丹波篠山市の大山地区に、約120年前から伝わる郷土料理「とふめし」があります。豆腐やニンジン、ゴボウなどを炒めてご飯に混ぜたこの料理には、山里ならではの歴史と、隠し味としてある食材が使われています。地域の人々がどのように守り伝えてきたのか、その背景をご紹介します。
サバの水煮が隠し味?とふめしに受け継がれた120年の知恵
山に囲まれた丹波篠山で、なぜサバが使われるようになったのか。その答えは、若狭湾から京都へと魚を運んだ「鯖街道」にあります。そのルートの一つがこの地域まで延びており、塩漬けにしたサバが手に入りやすい環境でした。塩サバは保存がきくため、山里の食卓にも気軽に取り入れられる貴重なたんぱく源です。時代が移り、より手軽に使えるサバの水煮缶が普及すると、自然な流れで塩サバの代わりに使われるようになり、現代のとふめしへと受け継がれています。
そもそも、とふめしが生まれたきっかけは、村の長老の一言でした。寄り合いのたびに大量のご馳走を用意する女性たちの苦労を見かねた長老が、「おかずとご飯を混ぜてしまえばいい」と提案したことが始まりです。江戸時代、灘の酒蔵へ出稼ぎに向かう丹波杜氏が携行する弁当にも、とふめしが詰められていたと伝わっています。食べる人への気遣いから生まれたこの料理は、長い年月をかけて今の形になりました。
消えかけた味が地域の声で戻ってきた理由
長い歴史を持つとふめしも、時代の変化とともに地域住民が集まる寄り合いの機会が減り、集いの場で提供される場面が少なくなっていきました。「地域の食文化をこのままにしてはおけない」と感じた大山地区の女性たちは、地元に「コミュニティキッチン結良里(ゆらり)」を開き、地域住民だけでなく丹波篠山を訪れる観光客にも提供し続けました。しかし、施設の建て替えや代表者の逝去が重なり、食堂はいったん閉店したものの、「あの味をもう一度」という声が地域内外から寄せられ、別の施設で提供が再スタートしています。
地域の外からも注目されるきっかけになったのが、丹波篠山市の学校給食への採用です。子どもたちが日常の給食としてとふめしを口にすることで、郷土料理として自然に身近な存在になっています。農林水産省の「うちの郷土料理」にも掲載されており、兵庫県を代表する郷土料理として知られるようになりました。地域の女性たちの活動と、給食という公の場が支えとなって、とふめしは今も丹波篠山に根づいています。
一杯で二度楽しむとふめしの食べ方とアレンジ
とふめしはまず、炊きたてのご飯にしっかり具材が混ざった状態でそのまま食べるのが基本です。サバの旨みとゴボウ・ニンジンの風味が一体となり、シンプルですが食べ応えがあります。さらに、食べ進めたところで白だしをベースにしただしを注ぐとまた違った風味が味わえ、わさびや刻みネギを添えれば、さっぱりとした締めの一杯としても楽しめます。
お店で味わうだけでなく、とふめしは特別な材料を用意しなくても自宅で作れる料理です。木綿豆腐・ゴボウ・ニンジン・油揚げ・サバの水煮缶があれば、基本の材料はそろいます。サバ缶は汁ごと使うことで旨みがご飯全体にしみ込み、深みのある仕上がりになります。郷土料理でありながら、缶詰一つで手軽に作りやすいのも、とふめしの魅力です。
丹波篠山でとふめしを食べるには
とふめしは、丹波篠山市内の一部の食事処で提供されており、現地を訪れることで本場の味を楽しめます。ただし、提供状況は時期や店舗によって異なるため、事前にWebで最新情報を確認してから訪問することをおすすめします。地元ならではの雰囲気の中で食べるとふめしは、レシピを見て自宅で作るものとはまた違った体験になるはずです。
毎年10月には、丹波篠山の秋の味覚を一堂に集めた「丹波篠山味まつり」が開催されます。黒枝豆や丹波栗など地元を代表する食材が並ぶ中、とふめしに出会える機会もあります。ただし、出店内容は年によって異なるため、訪問前にWebで最新の出店情報を確認するようにしてください。
鯖街道がつないだ歴史と、長老の思いやりから生まれたとふめしは、約120年を経た今も丹波篠山の食文化に深く息づいています。サバの水煮缶を使えば自宅でも手軽に再現できるので、ぜひ一度作って本場の味を感じてみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q.兵庫県丹波篠山市の豆腐を使った郷土料理「とふめし」。隠し味として使われるのはなに?
A.サバの水煮









