滋賀県の郷土料理「鮒寿司(ふなずし)」といえば、どんな種類の寿司?

日本一の湖・琵琶湖を擁する滋賀県。その特産品としてマニアックな人気を誇るのが、琵琶湖の固有種「ニゴロブナ」を使った「鮒寿司」です。鮒寿司は、現在一般的に寿司として知られる握り寿司ではありません。いったいどんなお寿司なのでしょうか。

滋賀県特産の「鮒寿司」とは

滋賀県の大部分を占める琵琶湖。そこには「ニゴロブナ」というフナの一種が生息しています。かつては大量にとれたそのニゴロブナを使った「熟れ寿司(なれずし)」が「鮒寿司」です。熟れ寿司とは、魚、炊いた米と塩を使って発酵させた料理。その原型は東南アジアや中国にあるとも言われ、現在では一部否定されているものの、この熟れ寿司が、やがて酢飯を使った押し寿司になり、それがさらに握り寿司になったとも考えられています。かつて熟れ寿司には、アユ、ナマズ、ウナギ、ドジョウなど他の魚を使ったものから、イノシシ肉や鹿肉などを使ったものまでありました。滋賀県では現在でもニゴロブナの他にアユの熟れ寿司も作られているようです。

滋賀県の鮒寿司は、まず春になり産卵のために浅瀬や河川に移動してきたニゴロブナを捕獲、その内蔵を取り去り、そこに塩を詰めて桶に並べ、夏になってから一度塩抜きをしてから干し、フナの腹やえらぶたに炊いた米を詰めてからまた桶に並べ、米と交互につめて保存するという工程を経ます。こうすることで乳酸発酵が始まり、タンパク質が分解されてうまみがましていきます。はやければその年の秋には食べることができるし、そのまま1年、2年と発酵させることもあります。

鮒寿司はニゴロブナの減少で希少な食べ物に

鮒寿司は大量にとれるニゴロブナを長期保存するための料理でした。しかし、現在はニゴロブナの減少により希少な高級料理となっています。ニゴロブナを減少させた原因は、琵琶湖の水質悪化、そして外来種による圧迫です。1960年代の高度成長期、琵琶湖周辺には住民が増え、そして下水道の不備により生活排水が琵琶湖へ流入する河川へと垂れ流しになりました。琵琶湖へ流入する河川は100本以上あるのに、流出するのは瀬田川1本のみ。特に洗剤など化学物質による汚染は琵琶湖からはほとんど流れ出ず、蓄積するばかりで、琵琶湖は汚れ、ニゴロブナだけでなく多くの生物が減少しました。

そこに、ブラックバス、ブルーギルなど外来生物による汚染も広がります。ブラックバスは稚魚を、ブルーギルは卵を食べてしまうので、汚染により減った在来種はさらに減っていくばかりになりました。そのため、ニゴロブナの漁獲高も、1960年代には500トンもあったものが、1990年代後期には20トン以下と、1/25にも減少してしまいました。原料の極端な減少により、庶民の保存食だった鮒寿司は、値段が高騰してしまったのです。ただ現在では水質浄化と外来魚駆除などが徐々に功を奏し、ニゴロブナは少しずつ増えてきています。

夏の琵琶湖では鮒寿司作り体験もできる

鮒寿司は発酵を利用した料理であるため、独特の臭気があることで知られています。この臭気は人を選び、まったくダメという人もいれば、ハマってしまう人もいます。冒頭で述べた「マニアックな人気」というのは、ハマってしまった人からは絶大に支持されているという意味。においさえクリアすれば、発酵によりうまれた豊かなうまみに魅了されるはずです。鮒寿司は、身を切って生で食べる、お茶漬けにして食べるなどの食べ方があります。

鮒寿司は都内の滋賀県郷土料理店でも食べられるし、通販で購入することもできます。でも、その土地で生まれたものは、その土地の気候風土の中でいただくのが一番です。また、滋賀県の琵琶湖湖畔の各漁協、琵琶湖の東岸に突き出した三角形の烏丸半島にある琵琶湖博物館などでは、7月から8月に鮒寿司を作る体験会を開いています。食べに行くだけではなく、自分で作ってみるとさらに楽しいと思います。琵琶湖博物館へは、滋賀県の米原(まいばら)駅もしくは京都府の京都駅を起点とするJR琵琶湖線に乗り、草津駅下車。駅前から「びわこ博物館」行きバスに乗ります。

琵琶湖に近い京都の観光とあわせて鮒寿司はいかが?

琵琶湖は京都からも近いので、京都観光とともに琵琶湖まで行って鮒寿司を味わってみるのもいいかもしれません。また、琵琶湖沿岸にはおごと温泉など温泉地もあるので、琵琶湖+温泉旅行というプランもおすすめできます。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 滋賀県の郷土料理「鮒寿司(ふなずし)」といえば、どんな種類の寿司?

A. 熟れ寿司