長野県南部、上伊那郡の飯島町には「さくら丼」というご当地グルメがあります。この「さくら丼」は、地元飲食店で考案されたものです。いったいどんな丼料理なのでしょうか。
明治から始まる南信州の馬肉食文化
長野県の南部、上伊那郡は、西に中央アルプス、東に南アルプスを望む山間地域です。「暴れ天竜」として知られる天竜川が流れるこの地域には、馬肉を食べる食文化があります。といっても、馬肉食が始まったのは明治以降。江戸幕府によって禁じられた肉食が明治時代になって解禁され、東京など都市部では牛鍋などがブームになりましたが、古来より農耕馬を使ってきた南信州では、老いて働けなくなった馬が食用として利用されるようになったといいます。
馬肉食はそこから徐々に広まり、最初は老いた農耕馬の処理を兼ねていたものから、一つの食文化へと発展し、需要の拡大とともに地域の馬だけでは供給が間に合わず、東北、北海道など馬を多く産出する地域から食肉として買い付けるほどになりました。大正時代に入ると、馬のもつ煮込み料理「おたぐり」なども生まれます。
南信州に本格的に馬肉食文化が定着したのは、戦後のこと。終戦直後の食糧難で、馬肉はタンパク源として一般家庭でも利用されるようになりました。その当時は、馬肉は安価に購入できるものだったようです。そして、日本が敗戦から復興し、豊かになっていく中で、馬肉食も馬刺しや馬のすき焼きなど、プロの料理人が作る洗練された料理へと進化していきました。
飯島町で生まれた「さくら丼」
2005年、南信州の中でも、特に馬肉食が盛んな飯島町の飲食店が集まって「飯島さくら(馬)を咲かす会」が結成され、飯島町の新たなご当地グルメとして「さくら丼」が考案されました。ここで言う「さくら」は馬肉のこと。質の良い馬肉は桜色をしていることから「さくら肉」とも呼ばれます。
さくら丼の定義は馬肉を使った丼ものであるということだけ。使う馬肉の部位、調理法などは各店に任されているために、様々なバリエーションのさくら丼があります。馬刺しを大胆にあしらった、馬肉だと知らなければマグロ丼に見えるようなもの、馬カツを乗せたカツ丼、薄切り肉を煮てご飯に乗せた牛丼風の馬丼、ローストビーフならぬローストホースをハヤシライスに乗せたものまであって、さくら丼のバリエーションをコンプリートするだけでも楽しめそうです。
さくら丼を食べるなら人気ローカル鉄道飯田線で
さくら丼は、長野県上伊那郡の飯島町で食べられます。飯島町は、JR東海のローカル線「飯田線」に乗り、飯島駅で下車します。飯田線は愛知県の豊橋駅を始発とし、長野県に入ってからは天竜川の流れに沿うようにして北上していきます。険阻な峡谷を走る飯田線は秘境駅にも出会えるローカル線として古くから鉄道ファンに人気でした。また、アニメ作品の舞台になったことで「聖地巡礼」のさきがけのような存在にもなっています。
鉄道ファンでなくても、旅情あふれる飯田線の旅は、特に都市部に住む人には非日常を体験できるおすすめコース。その旅の途中で、さくら丼やその他の馬肉料理などを味わうのも、また楽しいのではないでしょうか?
飯田線に乗って飯島駅まで行くには、東海道新幹線で豊橋駅まで行って飯田線に乗り換える北上ルートと、JR中央本線の特急あずさなどで岡谷駅まで行って飯田線直通線に乗り換える南下ルートがあります。飯島駅を目的地とする場合は、岡谷駅で乗り換えたほうが飯田線での移動時間が短くなります。
さくら丼は女性にもおすすめなヘルシーグルメ
飯島町では、馬肉は、牛肉や豚肉と比べて低カロリーで高タンパク、鉄分やカルシウムも多く含むため、女性にもおすすめのヘルシーな肉だとPRしています。人気秘境路線とそこでしか食べられないヘルシーなご当地グルメを同時に楽しめる旅はおすすめです。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 長野県で食べられる「さくら丼」に使われるお肉は何肉?
A.馬肉
Q. 長野県を流れる一級河川「天竜川」は、氾濫を繰り返したことで何と呼ばれた?
A.暴れ天竜