京都府の伏見稲荷大社前には稲荷煎餅やわらび餅など様々な食べ物屋が並んでいますが、今ではあまり目にしない、珍しいものを提供するお店があります。いったいどんな物を提供しているのでしょうか?その名物が誕生した歴史についてまとめてみました。
伏見稲荷大社前で食べられるスズメの焼き鳥の味と、誕生の由来
京都府の伏見稲荷大社は全国でも屈指の有名な稲荷神社で、日本人参拝客だけでなく外国人観光客も多く訪れます。伏見稲荷大社前の参道に並ぶ食べ物屋や土産物屋の中に、3軒ほど焼鳥屋があります。この焼き鳥屋では鶏肉を使いません。ウズラのほかに特別に仕入れたスズメを焼き鳥として売っています。ウズラは肉の部分を食べやすくするよう身を捌いてありますが、スズメは頭の形をそのまま残した丸焼きで客に出しています。
スズメの目や嘴がはっきりとわかる見た目に抵抗感を覚える人もいるかもしれません。しかし、頭からかじると鳥レバーのようなほろ苦い風味の脳が口の中に広がり独特の味わいが忘れられないという人もいます。身はパリッとした骨煎餅のような食感で、ウズラの骨でダシを取って酒・みりん・砂糖と合わせた濃い目の醤油タレと山椒の香りが鼻をくすぐります。初めての人も1羽の丸焼きを平らげると癖になり、ビールのおつまみとして食が進むでしょう。
伏見稲荷大社前の参道の店で出されるスズメは、近所を飛んでいるところを捕まえてきたものではありません。スズメは野鳥なので原則として捕獲が禁じられています。中国からの輸入品が減ったため、狩猟免許を所持した猟師が京都のほかに香川・長野・新潟で天然のスズメを捕獲して伏見稲荷大社前の焼鳥屋に提供しています。スズメ猟の解禁時期は11月で12月頃には最も脂が乗った美味しいスズメが入荷されるため、美味しいスズメを食べたいのなら晩秋から初冬にかけて伏見稲荷大社前の焼鳥屋を訪れると良いでしょう。
旬の時期を過ぎると捕獲されたスズメは冷凍保存され、伏見稲荷大社前の店では原則として1年中スズメの焼き鳥を出すことが可能になっています。ただし、狩猟期間は毎年11月15日から2月15日の3カ月に限定されており、国内の捕獲量も限りがあって品切れになれば国産のスズメを食べることはできません。とは言っても、良く肥えて臭みの無い安価なスズメがベトナムから輸入されるようになったので、滅多に品切れになることは無いでしょう。
そもそも、スズメの丸焼きが食べられるようになったのはなぜでしょうか?これには2つの説があります。1つは稲作の天敵として忌み嫌われたスズメを退治する際に、見せしめとして丸焼きを食べるようになったというものです。昔から稲作は日本の基幹産業でしたが、稲穂を干していると無数のスズメが襲来して米粒をさらって行くので、農民はスズメを追い払うため収穫の時期になると常時監視の目を光らせていなければなりませんでした。伏見稲荷大社は商売繁盛とともに五穀豊穣にご利益があるとされる神社で、五穀を食い荒らすスズメが丸焼きとして参道を往来する参拝客に提供されたという言い伝えがあるのです。
もう1つの説は、伏見稲荷大社への供え物としてスズメが選ばれたというものです。周辺の猟師が供え物としてスズメを献上した後みんなで焼いて食べたのが始まりということです。元々日本では野鳥を捕らえて食べる習慣はありました。豚や牛が高級品で庶民には手が届かなかったので、野生の小鳥に投石したりカスミ網を使ったりして捕らえて食べていたのです。野鳥は庶民の重要なタンパク源でした。スズメを焼き鳥として食べる習慣は、伏見稲荷大社前の焼き鳥だけでなく関東の一部にも残っています。
冬季に伏見稲荷大社にお参りに行ったら、参道の焼鳥屋でスズメを食べてみましょう。
日本では鶏肉の他に鴨や雉を食用としていることは知られていますが、スズメも昔は庶民の食べ物だったのです。スズメ猟の旬の時期に伏見稲荷大社に行く機会があったら、参道の焼鳥屋で先人の食生活に思いを馳せながら1羽でも食べてみることをお勧めします。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 京都の伏見稲荷大社で名物となっている焼き鳥に使われる鳥は?
A.スズメ