「花と味覚と歴史のまち」と呼ばれる北海道厚岸町。カキの名産地として名高く、小さな町ながら毎年40万人前後の観光客が訪れています。今回は厚岸の特産品、カキの歴史やブランド、おいしいお店についてご紹介します。
苦難の連続だった厚岸町のカキ養殖の歴史
北海道厚岸町の「あっけし」の読み方は、アイヌ語の「アッケウシイ」(オヒョウニレの皮をはぐところ)または「アツケシ」(カキの漁場)に由来するといわれています。その名のとおり、厚岸は古くからカキの名産地として知られ、寛政3年、最上徳内らによって記された「東蝦夷道中記」には厚岸の名産品としてにしん、塩くじらなどの海産物とともに塩カキがあげられています。明治時代になると民間人の小島利兵衛が干しガキやカキ醤油、カキの佃煮などさまざまな商品を開発し、「厚岸のカキ」というブランドを築きました。しかし乱獲によってカキの漁獲量は急激に減少し、明治末期には天然のカキはほとんど獲られなくなりました。
そこで厚岸町では、明治36年ごろから厚岸湖(厚岸湾と直接つながった汽水湖)でカキの養殖に取り組み始めましたが、当初は全くうまくいきませんでした。昭和10年に宮城県から稚貝を大量に購入し、カキ島(厚岸湖の入口あたりにあるカキ殻が堆積した浅瀬の集まり)にまくと、カキの漁獲量は徐々に回復しました。しかし昭和58年、冷夏の影響で海水が異常な低温になり、カキが大量死するという事件が起きました。大打撃を受けた厚岸町では、また宮城県から稚貝を購入して養殖が続けられましたが、平成11年に厚岸町カキ種苗センターが建設されると、純厚岸産のカキを復活させるべくカキの種苗生産が始まりました。その後「マルえもん」「カキえもん」「弁天カキ」というブランドが次々と誕生したことで「厚岸のカキ」はますます有名になり、厚岸町にはたくさんの観光客が訪れるようになりました。
「マルえもん」「カキえもん」「弁天カキ」!厚岸のカキのおいしさの秘密とブランドカキをご紹介
厚岸町のカキのおいしさの秘密は、別寒辺牛川をはじめ周辺の河川から森や湿原の養分が厚岸湖に流れ込むことにあります。この養分のおかげで餌となるプランクトンが増え、カキがおいしくなります。厚岸町でも戦後、農地の開墾やゴルフ場開発で多くの森林が伐採されましたが、このことが一般に知られるようになると、漁業関係者自らが「厚岸町緑水会」という林業グループを結成し、森に木を植えるようになりました。他にも、カキが産卵して体力を消耗しないよう、養殖しているカゴごと水温が低い場所に移動させて産卵時期を調整するなど、厚岸町ではおいしいカキを作るためにさまざまな努力をしています。
そんな厚岸のカキには数種類のブランドがあり、そのうち一番多く生産されている「マルえもん」は宮城県から購入した稚貝を養殖したものです。小ぶりですが身が詰まっており、甘くてすっきりとした味わいが特徴です。一方、「カキえもん」と「弁天カキ」は純厚岸産のマガキです。その違いは何か、というと養殖の方法にあります。「カキえもん」はシングルシードという、貝殻粉末にカキの幼生を一粒一粒付着させて稚貝にするという養殖方法で育てられています。この方法で育てられたカキは身が丸くなり、味も濃厚ですが、非常に手間がかかります。「弁天カキ」は、まずホタテの貝殻にカキの幼生を付着させ、ある程度大きくなったら貝殻から外して網カゴで育てるという方法で養殖されています。この方法だと、身の甘さはそのままに、ふっくらと大きく育ちます。厚岸町では、「カキえもん」と「弁天カキ」のブランド化をさらに推進する予定です。
厚岸で絶品のカキを味わう!おすすめのお店をご紹介
厚岸でカキを味わうなら、道の駅「厚岸グルメパーク」がおすすめです。2階のレストラン「エスカル」では和洋のカキ料理が楽しめ、「炭焼炙屋」では併設された魚介市場で購入したカキをはじめとする海産物を炭火で焼いて食べることができます。また、厚岸大橋を渡ってすぐのところにある厚岸漁業組合直売所「エーウロコ」では、買ったばかりの生ガキを自分で剥いて食べることができます。「マルえもん」や「カキえもん」も水槽で生きたまま販売しているので、新鮮なカキが味わえます。
厚岸のカキを存分に楽しむ!厚岸牡蠣まつりに行ってみよう
厚岸では春と秋の年2回、「牡蠣まつり」が行われ、期間中は会場で販売されているカキなどの海産物を炭火で焼いて食べることができます。炭火で焼いたカキは、身がプリッとしてうまみも増します。厚岸を訪れる際は、ぜひこのカキを味わってみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q. カキの名産地、北海道の「厚岸」。何と読む?
A.あっけし