「風が語りかけます。うまい、うますぎる!」これは埼玉県で有名なCMの言葉です。“うますぎる”埼玉銘菓とはどんなお菓子なのか、そして、印象的なキャッチフレーズが誕生した経緯を紹介していきます。
旧忍藩十万石の地で生まれた銘菓
十万石まんじゅうは、戦後に布かれた砂糖の統制が解除されたあとに、埼玉県の行田のお菓子メーカー「十万石ふくさや」によってつくられました。行田は武蔵国で十万石の勢力を築いた忍藩の領地で、十万石というのはその石高からとられています。十万石まんじゅうは、白くて長細い形のまんじゅうです。表面には「十万石」という焼き印が押されています。この焼き印は、シーズンごとのイベントに合わせて別の文字が入ることがあります。たとえば、平成から令和に変わったときは、「令和」の焼き印を入れて期間限定で売りに出されたこともあります。
ユニークな遊び心が込められていますが、味のほうもしっかりとしています。十万石まんじゅうは、皮の材料に国産のつくね芋とコシヒカリの米粉をメインで使用しているのが特徴です。中身は北海道十勝産の小豆を使ったこしあんで、砂糖をたっぷり使って甘く仕上げています。この皮とあんの塩梅がよく、口に含んだ時にちょうどいい甘さになるといわれています。添加物は一切使用していないので、自然の素材のおいしさを味わうことが可能です。十万石まんじゅうは、十万石ふくさやの各店舗と公式サイトのオンラインショップから購入することができます。賞味期限は5~6日となっているので、早めに食べるのがおすすめです。
「うまい、うますぎる!」というキャッチフレーズの誕生
十万石まんじゅうのCMで流れる「うまい、うますぎる!」という印象的なキャッチフレーズ。これは、世界的にも評価されている木版画家の棟方志功が考案したものです。棟方志功は行田市の作家ではありませんでしたが、行田市出身の渥美大童と交友があり、彼がふくさやの主人と棟方の橋渡しとなりました。ふくさやの主人は棟方の精力的な活動に感銘を受けて、この姿勢を見習いたいと思うようになったのです。そして、十万石まんじゅうのパッケージデザインをお願いしようと決めたのです。
ふくさやの主人は、依頼のために十万石まんじゅうを持って棟方のもとへ訪れました。棟方は甘党で、十万石まんじゅうを瞬く間に平らげていきます。そのとき「うまい。行田名物にしておくには、うますぎる」と言ったことが、キャッチフレーズの元となったのです。
十万石まんじゅうを気に入った棟方志功は、すぐにデザインに取りかかりました。忍城のお姫さまが生きていたら、同じ感想をもらしたに違いないということで、まんじゅうをほおばる姫の絵を描いて、その隣に「十万石幔頭」と書いたのです。しかし、まんじゅうの「まん」の字が「饅」ではなく「幔」になっていました。これをふくさやの主人が指摘すると、棟方は十万石まんじゅうが全国的に知れ渡ってほしいという願いを込めて、あえて「幔」と書いたと答えたのです。これにはふくさやの主人も感激し、こうして十万石まんじゅうの漢字表記は、十万石幔頭になったのです。
十万石まんじゅうが生まれた行田市ってどんなところ?
埼玉県行田市は、足袋の名産地として有名です。行田には江戸時代に武士の内職として、足袋づくりが盛んに行われていました。幕藩体制が終わり、明治時代が到来するとミシンが導入されて足袋の生産量は飛躍的に向上して、一大産地となったのです。足袋の生産量は時代の移り変わりとともに少なくなりましたが、伝統を伝えるために、行田市は「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」と題して、日本遺産認定の申請を行いました。この申し出は無事に受理され、平成29年4月28日に埼玉県初の「日本遺産」に認定されたのです。
十万石まんじゅうは、ゼロから完成させた本物の味
十万石まんじゅうは、戦後の物資が乏しい状態にも関わらず、本物の味にこだわってできたお菓子です。棟方志功の「うまい、うますぎる!」という言葉は、シンプルですが十万石まんじゅうの本質を表していると言えます。「うまい」この言葉が本物の証なのです。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 「うまい、うますぎる!」というキャッチフレーズも有名な、埼玉銘菓は?
A. 十万石まんじゅう
Q. 埼玉銘菓「十万石まんじゅう」のパッケージの絵を描いた画家は?
A. 棟方志功
Q. 埼玉県行田市が名産地として有名な、「足に関するもの」は?
A.足袋