青森県だけで栽培されるブランド野菜「嶽きみ」が人気です。しかし、これだけの人気を得るのは容易でなく、大変長い時間がかかっています。今回は、ブランド確立までのストーリーと周辺観光情報をお届けします。
嶽きみの栽培ストーリー
「嶽きみ」は「だけきみ」と呼びます。特徴は18度以上という高い糖度で、生食も可能なところです。平成20年4月には、地域団体商標登録がなされました。この制度は、一定の人気が認められないと登録が難しいとされています。今や全国でもトップクラスの人気を誇るトウモロコシにまで成長しましたが、実は長い歴史を持ちます。初めて嶽地区でトウモロコシが栽培されたのは、昭和30年頃のことでした。
栽培を始めたのは鈴木春雄さんという人で、1948年に樺太からやっとの思いで引き揚げてきた集団のリーダー的存在でした。鈴木さん一家は岩木町常盤地区に入植し、未開拓の地を自力で切り開いていきます。試行錯誤で農作物を栽培し、最終的に大豆と菜種、小豆を主体に育てるようになりました。
入植から6年後、種苗屋からアメリカ産のクロスバンタムという品種を紹介されて栽培を開始します。すぐに販売することは叶いませんでしたが、美味しかったのでこの土地で栽培を続けることが可能かどうか、4年間奥さんと2人で試しに育ててみました。大丈夫だと確信すると、周囲の仲間にも栽培を勧め、収穫量を増やしていきます。販路を拡大することには難儀したものの、個々の仲買人が努力してくれたお陰で、昭和40年頃までに小さい規模ながらも販路が確立されました。
昭和57年には農協を通しての出荷も可能となり、初年度の出荷量8万本から毎年倍ずつ増量して販売できるようになっていきます。消費者は圧倒的な美味しさに驚き、「嶽きみ」や「嶽のきみ」という愛称で呼ぶようになりました。生産地が嶽高原であり、津軽弁でトウモロコシを「きみ」と言うからです。消費者の愛称がブランド名になった農作物は、全国を探しても珍しいでしょう。
アクティビティの後は温泉に浸かって岩木山を拝む
嶽きみは、通販サイトなどでもお取り寄せすることが可能です。青森県内では、8~9月頃に直売所やスーパーなどに並びます。収穫シーズンには嶽きみの他、りんごの収穫体験も可能です。収穫旅行というのも贅沢なひと時かもしれません。嶽きみが栽培されている嶽地区は岩木山の麓、標高450~600m付近となります。岩木山は津軽富士とも呼ばれる、津軽のご神体です。アクティビティを目的に訪れる人も多く、冬は思いっきり雪で遊ぶことを目的としたイベントを開催する百沢スキー場が人気です。
そして、春には世界一長い桜並木を見に、沢山の人が足を運びます。ここの桜が植え始められたのは昭和60年のことで、発案者は嶽きみの初栽培者である鈴木さんです。初秋には津軽最大の祭りである「お山参詣」が行われます。集団で五穀豊穣と家内安全を願って登拝し、ご来光を拝みます。
日中の観光で疲れたら、嶽温泉で汗を流すのがおすすめです。こちらは6つのホテルや旅館が集まる温泉地で、和室を中心とした部屋を設けた宿が多く、雄大な岩木山を眺めながら温泉に入れる宿もあります。温泉が沸いているのが見つかったのは300年ほど前、その120年後に建てられた湯小屋が温泉宿の始まりと言われています。泉質は硫化水素性、なおかつ含ミョウバン、緑バン、酸性塩化土類泉となっており、イオウの匂いが強いです。真菌や慢性膿皮症、慢性湿疹などの皮膚疾患に効能があり、糖尿病やリウマチ性疾患などにも効果があるとされています。
嶽きみで有名な嶽地区は観光名所もたくさん
嶽地区は青森県弘前市の西部に位置し、市中心部より車で30分ほどです。岩木山の8合目まで行ける津軽岩木スカイラインでドライブするのも気持ちが良いですよ。嶽きみを味わいながら、嶽地区の自然の魅力も味わってみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 青森県弘前市の名物「嶽きみ」とは、どんな野菜のブランド?
A.トウモロコシ