東を有明海に面し、干拓地としても知られる佐賀県白石町。この白石町の須古地区に古くから伝わる、お祭りや祝いの席で振舞われてきた郷土料理があります。今回は佐賀県の名物であるムツゴロウを使った見た目も華やかなこの伝統料理をご紹介しましょう。
農林水産省選定「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれた郷土料理
「須古寿司」は、もち米を加えて作られた酢飯に、有明海で獲れたムツゴロウの蒲焼きをはじめとした、さまざまな具材をのせたお寿司です。「もろぶた」と呼ばれる長方形の木箱に、すし飯を敷き詰めて作る「はこ寿司」で、食べやすい大きさに正方形に切り分けて、切り分けたひとつひとつの酢飯に具材をのせていきます。長い歴史を持つという須古寿しは、現在でも祭事やお祝い事には欠かせない料理で、農林水産省選定「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれています。
須古寿司の発祥と歴史
須古寿司の歴史は古く、500年以上前の室町時代、須古を治めていた領主の平井氏は領内の農民をことのほか大事にしていました。米の品種改良をすすめて生産性を向上させ、須古を米の名産地にする事に尽力したのです。こうして須古地区の米は味の良さから「すし米」や「酒造米」としても高い評価を得ることができました。そのことに感謝した領民が領主に寿司を献上したのが、須古寿司のはじまりと言われています。「もろぶた」の中で区切られたひとつひとつのお寿司は田んぼ、酢飯の切り目の筋は、田んぼのあぜ道、中央に丸く置かれた黄色い錦糸卵は田毎の月(たごとのつき)を表しているものといういわれもあるそうです。
家庭で作られる素朴な須古寿司
須古寿司の酢飯は、うるち米に1割ほどのもち米が加えられるのが特徴です。昆布と少量の塩を加えて炊き上げたご飯に、やや甘めの寿司酢を混ぜ込んで冷まし、もろぶたに5mmから1cmほどの厚さになるよう、うすく敷き詰めていきます。やさしく押しをかけながら四隅まで均一にならします。須古寿司を作る時「須古寿司を『つける』」と言い、手で軽く押さえてやさしく作る様子を表しているそうです。そして、敷き詰めた酢飯を「寿司切り」と呼ばれる道具を使っておおよそ10cm四方に切り分けます。
白石須古ずし振興協同組合では「須古寿司」の具材が意匠登録されており、ムツゴロウ、卵、エビ、奈良漬、紅ショウガ、かまぼこ、ゴボウ、シイタケ、でんぶ、の九品と決められています。具材を重ねて真ん中が高くなるように盛り付けますが、特にのせる順番に決まりはなく、見栄えが良く見えるよう盛り付けられます。具材については、厳密にこちらの九品でなければならないうものではなく、季節やシチュエーション、そして地域によって異なる場合もあるようです。法事などで精進料理でつくる場合にはムツゴロウやエビといったものは入れずに、麩などで代用する事もあるということです。
須古寿司のお味は
でき上がった寿司は、1切れずつ皿に盛り分けていただきます。もち米が加えられた酢飯の少しもちもちとした食感、滋味豊かなムツゴロウに、塩味と歯ごたえが小気味いい奈良漬け、甘辛く味付けされた椎茸・ごぼうとさまざまな味わいが口の中に広がります。素朴でありながら、ご馳走感もしっかり感じられるおいしいお寿司です。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 佐賀県の郷土料理「須古○○」。○○に入るのは?
A. すし