佐賀県の夏の食卓に昔から並ぶ酢の物「にいもじ」。使われる食材は、水イモのある部分です。一般的にはあまり知られていないその部位が、なぜ佐賀の郷土料理として根づいたのか、その歴史と背景を見ていきます。
にいもじの正体は水イモの「茎」!佐賀に根づく酢の物の歴史
水イモは、里芋の仲間に属する植物です。多くの人が「芋」と聞くと地下の球茎を連想しますが、水イモは地上に伸びる葉柄(ようへい)と呼ばれる、葉を支える細長い軸の部分が食用で、一般には「茎」として親しまれてきました。この部位は「ずいき」とも呼ばれており、シャキシャキとした歯ごたえが持ち味です。
佐賀では、お盆の時期にずいきを甘酢で和えた「にいもじ」が食卓に並ぶ習わしがあります。夏の暑い盛りに収穫できるずいきは、あっさりとした酸味と相性がよく、食欲が落ちがちな季節でも食べやすい料理です。先祖へのお供え物としても、家庭の味としてずっと食卓に並んできた一品です。
この地域を中心に作られていた「にいもじ」は、農家の間で日常的に食べられるうちに、やがて佐賀県全域へと広まっていきます。農業と結びついた食文化が、佐賀を代表する郷土料理として根づいた背景には、水イモを育てやすい環境がありました。
なぜ「にいもじ」は佐賀の夏に根づいたのか
ずいきは水分を多く含む食材で、酢と合わせることで独特の軽やかさが生まれます。夏の暑さで体が重く感じる時期でも、さらっと食べられる軽さが、佐賀の人々の食卓に自然と受け入れられてきました。酢には食欲を刺激する働きもあるため、暑い季節にも食べやすい組み合わせといえます。
さらに、収穫したずいきは、乾燥させることで長期間の保存が可能になります。干したずいきは「干しずいき」と呼ばれ、水で戻してから調理する方法が各家庭に伝わっていました。冷蔵設備のなかった時代、夏に採れた食材を無駄なく使い切るための生活の知恵が、にいもじとして今に受け継がれています。
にいもじの魅力と味わい方
にいもじの最大の持ち味は、ずいき特有の軽快な歯ごたえが、甘酢のやさしい酸味とよく合う点にあります。砂糖・しょうゆ・酢のシンプルな調味料で仕上げるため、素材そのものの食感が引き立ちます。食べ慣れた家庭料理で、さっぱりと食べやすい佐賀の夏の定番です。
佐賀の家庭では、作ったにいもじを冷蔵庫でしっかり冷やしてから食卓に出すのが一般的です。冷えることで甘酢が全体にいきわたり、よりすっきりとした口当たりになります。暑い日の昼食や夕食の副菜として、冷たいままさっと出せる手軽さも、長く続いてきた理由のひとつです。
ずいきは初めて口にする方にとって、あまりなじみのない食材かもしれません。ところが実際に食べると、クセがなく、甘酸っぱい味付けとよく合うことに気づきます。佐賀県外の方が「思ったより食べやすい」と感じるのは、素材自体に強い風味がなく、調味料の味がなじみやすい食材だからです。
にいもじをもっと楽しむ!アレンジレシピと作り方
基本のにいもじは、皮をむいたずいきを塩もみして水分を抜き、砂糖・しょうゆ・酢で和えるだけで完成します。特別な道具も手間もかからず、材料がそろえば短時間で仕上がるのも魅力です。佐賀の家庭で長く続いてきたシンプルな工程は、料理が得意でない方にも気軽に試せます。
甘酢和え以外にも、ずいきはさまざまな調理法で使いやすい食材です。ごま油で軽く炒めてから甘辛く味付けする炒め煮や、ポン酢とかつお節で和えるさっぱり系のアレンジも人気があります。火を通すことで食感が少しやわらかくなり、甘酢和えとはまた違うおいしさを味わえるのもずいきならではです。
また、基本の甘酢和えを作る際、酸味が苦手なお子さんには、酢の量を控えめにして砂糖をやや多めにすると、より食べやすくなります。仕上げに白ごまを散らすと見た目が華やかになり、食卓に彩りが加わります。にいもじは冷蔵庫で2〜3日保存できるため、まとめて作り置きしておくと毎日の副菜として役立つ料理です。
にいもじは、水イモの葉柄を甘酢で和えた、佐賀県の夏を代表する郷土料理です。土地の恵みを無駄なく活かした先人の知恵が、このシンプルな一皿に生きています。作り方はとても手軽なので、まだ食べたことがない方は、ぜひ今年の夏に手作りしてみてはいかがでしょうか。
ザ・ご当地検定の問題
Q.佐賀県の酢の物「にいもじ」に使われるのは、水イモのどの部分?
A.茎









