三重県では郷土料理として食用にされる、漢字で「翻車魚」と書く生き物は?

癒し系の魚代表と言えるくらい平和な姿形をしている翻車魚。ふぐが進化した魚で、正面から見ると似ています。全国的に流通している魚ではありませんが、三重県には翻車魚の肝和えという郷土料理があり親しまれているので紹介します。

漁師食だった翻車魚の肝和え

翻車魚(マンボウ)の肝和えは、三重県の南部に位置する人口約15,000人の紀北町に伝わる郷土料理です。マンボウは元々漁師の間でだけ食べられており、定置網に引っかかったものを仲間内で分け合っていたと言います。連日食卓に上がることも珍しくなかったというほど、よく網に引っかかったそうです。それがいつの間にかスーパーでも販売されるようになり、地元の人にも食用の魚として親しまれるようになっていきました。漁獲される時期は12~4月頃、特にマンボウを目当てに漁をするわけではなく、ブリなどと一緒にかかったものを食用にしています。

マンボウは時間が経つと水分が抜けて半分くらいにサイズダウンしてしまう上に、アンモニア臭がしてくるので、水揚げ後すぐに捌いて食すか、冷凍します。マンボウの体内を占めるのは、身と肝、腸です。腸も食すことができ、焼肉のミノみたいな食感が楽しめます。内臓の3分の1は肝と言われるほど大きな肝は、淡白な身とは対照的に脂が乗っています。最も美味しい部位と言われており、酢味噌和えや共和えにして食しても美味です。マンボウの肝和えは、湯通しした肝を鍋で溶いて砂糖と味噌で味付けし、手で裂いて湯がいた身と和えれば完成です。獲れたての場合は、生のまま肝と和えて食べることもできます。火を通したマンボウは鶏のささみのような食感で、肝と和えることでまろやかな味になります。

紀北町の「道の駅紀伊長島マンボウ」では、様々なマンボウ料理を提供中です。おすすめ料理は、屋台で焼いているマンボウの串焼きとから揚げ串です。どちらも弾力ある食感で、食べ応えがあります。店内にはマンボウのみりん干しやマンボウナゲット、マンボウのスタミナ焼きなどの加工品が販売されており、マンボウ料理をお土産に購入することも可能です。さらに店の奥にある食堂では、マンボウフライなどが食べられます。

まんぼうの名前の由来は、「丸い」を表現した「まん」と「魚」を表す「ぼう」を組み合わせたという説が有力です。漢字で書くと「満方」や「円魚」、「萬方」などです。しかし、マンボウを漢字表記すると「翻車魚」と書きます。しかし、どう工夫しても「マンボウ」とは読めませんよね。それもそのはず、昔中国語を持ってきてマンボウに当てはめたそうなので、読めなくても当たり前なのです。

マンボウはふぐの仲間ではありますが、体の短いサメに見えることから、富山県ではクイサメと呼ばれています。しかし、サメは軟骨魚類であり、マンボウは硬骨魚類である点が絶対的な相違点です。それでも、大型のマンボウでは全長3mくらいまで育つのですから、海中で出会ったらサメと勘違いして逃げたくなるかもしれませんね。もちろん人間を食べることはなく、通常はプランクトンやクラゲを食して過ごしています。ただ、近年の研究で深海にいるイカや蟹も捕食していることがわかってきました。

マンボウの生態で有名なのが、海面を1mくらいジャンプする動きです。寄生虫を振り落とすためと考えられてきたものの、寄生虫と魚類は共存関係にあるという説も有力なため、はっきりした理由はわかっていません。この他の生態についてもまだまだ判明していないことが多く、今後出てくる研究結果が楽しみなところです。

地元民にも愛される肝和え

三重県では定置網にマンボウがよくかかることから、漁師の間では定番の魚でした。白身に旨味が加わるマンボウの肝和えは地元の人にも親しまれており、スーパーでは身と肝がセットで販売されています。三重県に行った際は、ぜひ食してみてくださいね。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 三重県では郷土料理として食用にされる、漢字で「翻車魚」と書く生き物は?

A.マンボウ