三重県で昔から作られる漬物「くき漬け」は何の茎を使っている?

シャキシャキの食感がたまらない「くき漬け」は、三重県の紀北地域の便ノ山発祥の郷土料理です。この「くき漬け」、いったい何の茎を使っているかご存じですか?

芋だけじゃないサトイモの食べ方三種類

サトイモは食べ方によって三つに分けられます。芋として食べる種類と、茎をたべる種類、そして芋も茎も両方食べる種類があります。芋として食べることが多いので、茎を商品として見かけることは少ないかもしれません。

芋として食べるのは土垂れ(どだれ)やたけのこ芋、赤芽芋(あかめいも)などの種類になります。ジャガイモなどと同じように地下茎が成長したものを食べます。サトイモの茎だけを食べる種類としては、はす芋が代表的です。そして両方食べられる種類としては、八つ頭(やつがしら)と海老芋(えびいも)の二種類があります。くき漬けには、両方食べられる種類の八つ頭が使われています。

くき漬けに使われている八つ頭の名前は、親芋から出る子芋の形が八つの頭のように見えることからついたそうです。この芋ははっきりと分球せずくっついているので皮がむきにくいのですが、縁起物としておせち料理によく使われるそうです。

サトイモの茎の名前は「ずいき」

サトイモの茎は「ずいき」と呼ばれ、乾燥したものを芋がらと呼びます。芋がらとは、刈り取ったずいきを乾燥させた後、水でもどして食べるという保存食になります。煮物やみそ汁の具として食べます。芋がらを作るときは、ずいきの下から先の方へ向けて皮をむき、1本1本が重ならないよう、また雨に当たらないように丁寧に乾燥させることがコツです。ずいきの皮をむく作業をすると、手がアクで真っ黒になります。サトイモのずいきはこのアクの強さからあまり食べられていないようです。

ずいきも色によって種類分けされています。八つ頭など両方食べる種類は茎が赤く赤ずいきと呼ばれます。他に海老芋を遮光栽培して赤い茎を白くした白ずいき、はす芋の青ずいきがあります。くき漬けに使われているのは八つ頭の赤ずいきです。

くき漬けの作り方と食べ方

くき漬けは、八つ頭のずいきを長いまま、皮をむかずにそのまま漬けています。葉を落としたずいきを、塩と赤紫蘇で漬け込んでいます。葉っぱも食べることが出来るそうですが、漬けるとき葉っぱを一緒に入れると、赤い色が抜けてしまうので落としてしまうそうです。赤紫蘇を入れることで鮮やかな赤紫色になります。

食べ方ですが、長いずいきの1本漬け状態のものを取り出し、まず皮をむきます。ずいきの下から上に向かってむいたら、細かく刻んでそのまま食べても良し、かつお節をかけたり、お茶漬けにしてもおいしくいただけます。

八つ頭の栽培には、大量の水分と栄養分を必要とするそうです。くき漬け発祥の地三重県の紀北町便ノ山は、平野が少なく町の9割が森林となっていて、全国でも有数の雨の多い地域となっています。この雨の大さと森林からの栄養が、八つ頭を育てるのに適しているのだそうです。江戸時代から栽培されていたそうで、芋は商品として、ずいきはくき漬けとして家庭で消費されていました。しかし、古く歴史ある八つ頭のずいきの生産が、年々減りつつあるそうです。

八つ頭の芋は収穫するだけで終了ですが、くき漬けに使うずいきは手間がかかります。八つ頭の茎であるずいきを切り出す、葉を切り落とす、ずいきに塩を振って下処理をする、下処理したずいきを塩と赤紫蘇で漬け込む。漬物になるまでの工程は1本1本を手作業で行うのだそうです。こういった作業をする生産者の高齢化や、後継者不足によりずいきの生産が減少しているそうです。

ずいきの漬物「くき漬け」を食べてみよう

くき漬けの原料八つ頭を育んでいるくき漬け発祥の地、便ノ山には奇跡の川と呼ばれる透明度の高い川があります。その地で栽培されるホクホクとした八つ頭の芋と、シャキシャキとしたずいきの漬物「くき漬け」を、共に味わってみてはいかがでしょうか。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 三重県で昔から作られる漬物「くき漬け」といえば、何の茎を使う?

A. 八つ頭