「太平燕(タイピーエン)」熊本の名物料理で、とってもヘルシーな中華料理です。その理由は、たっぷり入った野菜に白湯(パイタン)スープ、そして使われている麺は……この麺にもヘルシーの秘密の理由の1つなのです。
熊本発祥の不思議な中華料理
太平燕の麺は春雨です。具材のうま味たっぷりのスープをほどよく吸った、つるつるとした春雨の味わいと食感がクセになります。熊本県民のソウルフードのひとつである太平燕は、熊本で誕生した中華料理で県内にあるほとんどの中華料理店のメニューにあります。そのため、県外で太平燕を注文し怪訝な顔をされて初めて「太平燕は熊本にしかなかった」ということに気付く、なんていう話もあるくらいです。
熊本名物・太平燕のルーツ
中国の福建省に「太平燕」という料理はあるのですが、現地では豚肉の団子、アヒルの茹で卵、ワンタンが入った、旅立ちなどお祝いの席で食べられるハレの日の料理で、熊本の「太平燕」とは別のものだそうです。
1930年代ごろに中国・福建省から熊本に渡ってきた華僑の方が作り始めたのが、熊本の太平燕の始まりと言われています。お祝い料理の1つとして食べられており、麺に使われる春雨が高級食材のツバメの巣に似ているのと、「太平(平和)」というおめでたい名前が組み合わさって、この名前になったとされています。そうして、熊本の中華料理店で定番の麺メニューの1つとして広まっていったのだとか。その後、熊本で誕生した太平燕は多くの人に愛され、給食にも提供される身近な郷土料理として根付いていきました。
熟練のワザで作られる太平燕
太平燕の作り方は、まず中華鍋で野菜や肉や魚介類を炒めます。そこにスープを入れ煮立たせて、具材のうま味をしっかりとスープへ移したら、春雨を加えて味を調え、盛り付けて出来上がりです。一般的に食感の良い緑豆春雨が使われることが多く、食べ応えもあるのにヘルシー。太平燕で欠かせないトッピング、茹で卵を揚げた虎皮蛋(フーピータン)も食感にアクセントを与えています。
おいしい太平燕が食べられるお店
太平燕を食べるのに外せないのは熊本市の中心街・上通り(かみとおり)アーケード内にある「紅蘭亭」。1934年の創業当時から太平燕を提供しています。鶏ガラと豚骨のコクを加えたスープがベースとなり、イカ、エビの魚介類に豚バラ、キャベツや青ねぎなどの具材のうま味を加え、塩のみというシンプルな味付けです。この塩は昔ながらの天日干しの製法で作られている福建天然塩で、ミネラル分が多く含まれ甘みを感じられるもの。紅蘭亭の太平燕には欠かせません。食べてみると、魚介類の香りに野菜の甘みが口いっぱいに広がります。あっさりとした上品な味に仕上がっているスープは、飲み干せてしまうほどのおいしさです。
熊本城下町・新町にある「会楽園 (カイラクエン)」は、中国・福建省出身の方がお店を構え、本場の料理を味わえる名店として地元の人々から愛されてきました。こちらの太平燕は野菜のメインに白菜が使われます。細切りにされた白菜はだしの効いたスープを十分に含んで豊かな風味を感じます。鶏ガラを煮込んでしっかり味を出した白湯スープはあっさりなのに、うま味が濃厚に感じられる味わい。一番の特徴である一般的な太平燕より太めの春雨は、さつまいもとじゃがいものデンプンで作られた特別製です。スープをたっぷり含んでもちもち、ぷるぷるの食感で白菜と鶏ガラのやさしい味わいがしみこんでいます。
熊本県第二の都市である八代市には、ちょっと変わった太平燕が食べられるお店があります。「チャイニーズレストラン 王張(わんちゃん)」の「とまぴぃえん」は真っ赤。辛そうですが、八代産トマトをたっぷり使われているからなので、辛くはありません。鶏ガラスープとトマトの酸味は相性抜群。リコピンたっぷりでさらにヘルシーですね。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 熊本のご当地麺料理「タイピーエン」の麺に一般的に使われるのは?
A. 春雨