福島県は海の幸が豊富なことで知られていますが、常磐ものという言葉を聞いたことはあるでしょうか。常磐ものとは、いわき市の水産物と水産関係者が長年培ってきた技術の総称です。
世界3大魚場の常磐沖
「常磐もの」の常磐とは、福島県いわき市の沖合に広がる常磐沖を指します。岩手県から千葉県の沖までは世界3大漁場の一つに数えられており、常磐沖もその一部です。親潮である寒流と黒潮である暖流が合流する塩境なので、プランクトンが多く発生し、それを求めに多くの魚が押し寄せます。マコガレイを始めとして、ヒラメやホッキ貝、タラなど、200種類ほどの魚介類がさまざまな漁法で水揚げされます。豊洲市場においても常磐ものはブランドとして定着しており、東日本大震災前までは高値で売買されてきました。放射線問題で長年漁業が行えない状況が続きましたが、復興に向けての取り組みが始まると、福島県がモニタリングして安全が認められた魚介類から順に試験操業を実施。2019年6月6日時点で安全が認められた魚介類は211種と、以前と変わらない状況に戻っています。
豊洲市場の前身である築地市場に、常磐もののマコガレイが再び姿を現したのは、2014年のことでした。マコガレイは漢字で真子鰈と書き、やや楕円形で体長40~50cmほどの大きさです。夏に旬を迎える魚ですが、秋に食べても美味しく、さらに冬を迎えると卵を抱えたメスのマコガレイがたくさん水揚げされ、それも高値で売買されます。真子とは「卵巣」という意味で、真子持ちのカレイが大量に水揚げされるためにマコガレイと呼ばれるようになったという説があります。漁獲方法は、海底に潜んでいるマコガレイを袋状の網で引く沖合底引き網漁法が一般的です。
マコガレイはマガレイとイシガレイと一緒に「カレイ御三家」といわれるほど、味に定評があります。カレイは煮付けにされることの多い魚ですが、マコガレイは活け締めにしたものを刺身にすると絶品だといわれています。柔らかい肉質で生臭さもないため、魚が苦手な人でも食べやすいでしょう。栄養素は、ビタミンDやE、B12などのビタミン類が豊富に含まれており、ミネラルではカリウムやリンが豊富です。低カロリー高タンパク質なので、効率良く筋肉を付けたい人にも効果的です。
常磐ものは、地元の魚屋や加工品店などを中心に販売されています。マコガレイの刺身を目当てに訪れるなら、夏がベストです。いわき市勿来町にある「海楽亭」では、常磐沖で揚がった魚を社長が目利きをして仕入れ、店で加工しています。魚屋に食堂が併設されており、ランチの時間帯のみ食事できます。いわき市四倉町にある「食処くさの根株式会社」は22時まで営業しているので、夕食を取ることも可能です。食堂に海産物の加工場と直売所を併設しており、かまぼこなどの加工品を買う場合も便利です。
既に魚介類211種の安全性が確認されていても、福島県産の食材への抵抗感はゼロになっていません。福島県と福島県漁業協同組合連合会では、イオンリテール株式会社と「福島鮮魚便」という事業を2018年6月1日より実施し、常磐ものの完全復活を目指しています。2019年は5月10日から事業を再始動させ、東京都と埼玉県と茨城県のイオンとイオンスタイルで鮮魚販売を実施しました。売り場に映像モニターをセットしてレシピを紹介するなどして、販売意欲を掻き立てます。首都圏に住んでいる方であれば、イオンに足を運ぶとマコガレイが入手できるかもしれません。
世界に誇れる漁場で獲れるマコガレイを一度は食べてみて!
福島県は世界に誇れる漁場を持っており、なかでも暖流と寒流がぶつかる常磐沖で水揚げされる魚介類は、最高の品質と認められています。常磐ものの魚介類はどれも美味しいですが、マコガレイの刺身をぜひ一度は食べてみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 「卵巣」という意味がある、福島県で水揚げされる「常盤もの」が有名なカレイは?
A.マコガレイ