香川県の西部地域に古くから伝わり、婚礼の贈り物として親しまれてきた伝統菓子があります。小さくて丸くてカラフルな愛らしいお菓子は、今や香川だけでなく、SNS映えすると全国的にも大人気。見たことがある人も多いのでは?
香川のお嫁入り菓子
「おいり」は口に含むと、ふわっとすぐ溶けてしまうような、ほんのり甘くて、やわらかい食感の餅菓子です。香川県では結婚式の引き出物や、嫁入りした家の近所への贈り物として贈られたりと、欠かせない嫁入り道具のひとつとして受け継がれています。「おいり」を持って他家にお嫁入りするのには、「その家の家族の一員として入り、こころを丸くしてまめまめしく働きます」という意味が込められているのだとか。一部の地域では「着物を仕立てる数を減らしてでも、おいりは持参しないと恥ずかしい」と言われるほどなのだそうです。
おいりの由来
嫁入り道具としてのおいりの風習の始まりは、遡ること天正15年(1587年)、讃岐国・丸亀城主として生駒親正公(いこま ちかまさ)が任命されたことから。姫君のお輿(こし)入れが決まった時、領下の郡家郷(現在の丸亀市郡家町)のお百姓が、お祝いにと五色の煎りものあられを献上したところ、たいそう喜んだと言います。以来、婚儀の折にはおめでたい「お煎りもの」、略して「おいり」として、広く一般に知れ渡ったのだそうです。今日では、結婚をはじめとして出産や命名祝い、ひなまつり、新築祝いや長寿のお祝いなどにも用いられています。
おいりは昔ながらの職人技で作られています
まず餅米を蒸し、蒸し上がったものをついて平たく伸ばし、1日天日干しにしたあと5mm弱の賽の目に切りわけ、1週間ほど陰干しで乾燥させていきます。じっくり時間をかけることで、全体を均一に乾かすことができるのです。季節や天気によって温度や湿度が変わるので、見極めが難しいところ。乾燥後はいよいよ煎る作業です。四角い餅米のかけらが、1~2分煎るとまるくぷっくり膨らみます。煎り機を使いますが、球体に仕上げるには長年の経験と勘が必要なのだそう。煎り終わったら、蜜がけ機に色のついた蜜とともに入れ、ぐるぐると回転させてコーティングさせます。赤、黄色、ピンク、水色などなど彩り豊かに色が付いたら、再び乾燥させて完成です。完成するまでに約1週間。見た目がシンプルなお菓子なので簡単に作れそうに思いますが、実は時間も手間ひまもかけ、熟練の職人によって作られているのです。香川県にはおいりを製造しているところが数件ありますが、それぞれのこだわりから少しずつ作り方が違って、味や見た目も変わってくるそうです。
幸せになれる? かわいくておいしい「おいりソフト」
そのまま食べてもおいしいおいりですが、そのかわいさから色々なものにトッピングされて、かわいすぎるとSNSでも話題になっています。代表的なのは「おいりソフト」で、いまや香川県の名物のひとつ。おいりソフトの正式名称は「嫁入りおいりソフトクリーム」といい、名前の通りおいりソフトを食べると「幸せになれる」、「良縁に恵まれる」といったご利益があるのだそう。もちろんかわいいだけでなく、サクふわっとした甘さ控えめなおいりは、ソフトクリームのトッピングにぴったり。冷たいソフトクリームとよく合います。見た目もポップでかわいいおいりソフト、香川に訪れた際にはぜひ味わってみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 香川県で結婚式の引き出物として用いられる、カラフルな球状の見た目をしたお菓子は?
A. おいり