平成のヒット曲『だんご3兄弟』に並ぶ昭和のお菓子系ヒット曲といえば、アニメや特撮ソングの名手として今なお語り継がれる子門真人が歌った『およげ!たいやきくん』です。そのモデルとなった和菓子店をご存じでしょうか。
元祖たい焼き店
『およげ!たいやきくん』は、『ひらけ!ポンキッキ』の中で流されたオリジナル曲です。主人公のたいやきくんは、毎日鉄板で焼かれる生活がいやになり、店のおじさんとけんかをして逃げ出します。逃げ出した海で自由を謳歌するたいやきくん。でも結局釣り師に釣り上げられて、食べられてしまうという内容です。ツッコミどころ満載ながら、今でいう「社畜」の悲哀を描いたようなこの曲は大人の心にも響いたらしく、現在に至るまでシングルレコードの売上日本一をキープしています。
この歌に登場するたい焼き屋さんのモデルとして知られているのが、現在では東京都内で一二を争う高級住宅街として知られる麻布十番の和菓子店「浪花家総本店」です。東京にあるのに浪花家なのは、創業者・神戸清次郎さんが大阪出身だからとのこと。
浪花家総本店は明治42年=1909年創業。100年以上の歴史を誇る老舗です。たいやきくん効果もあって今では行列ができるたい焼き店となっている浪花家総本店ですが、創業当時は今川焼きを売っていたといいます。しかしなかなか商売がうまくいかず、次に亀型をした「かめ焼き」を販売。これも振るわず、明治の当時、庶民には食べられなかった鯛をかたどった「たい焼き」を売り始めてから、やっと商売が軌道にのったようです。つまり、浪花屋総本店こそがたい焼きを開発した「元祖たい焼き店」なのですね。
浪花家総本店のたい焼きは、唯一無二の薄皮たい焼き
今ではどこでも食べられるたい焼き。その多くは、ふわっとした厚めの小麦の皮にあんこが包まれているというものです。でも元祖たい焼きの浪花家総本店のものは他とは違います。浪花家総本店のたい焼きは、数ミリ程度の薄い皮に、あんこがぎっしり詰まっているスタイル。焼き方もずいぶん違います。普通のたい焼きは、数個分の型が並んだ鉄板に生地を流し、上から挟み込んで焼きます。しかし、浪花家総本店では、型はたい焼き一つにつき一つ、こういう焼き方を「一丁焼き」と呼ぶようです。
今では有名たこ焼きチェーンで薄皮たい焼きを売っていたり、一丁焼きのたい焼き専門のフランチャイズたい焼き店もあります。でも、アルバイト店員でもできる普通のたい焼きの焼き方とは違って、一丁焼きで上手に薄皮たい焼きを焼くためには相当な技術力が必要となります。同じ薄皮たい焼きでも、技術がない人が焼くと皮の厚みにばらつきが出てしまい、あまりおいしくありません。
高い技術を持った職人さんを平均して揃えることが難しい、チェーン展開、フランチャイズ展開の店では、浪花家総本店の元祖薄皮たい焼きを超えるどころか、その味に近づくことすら無理だといえます。そこが、創業100年を超える老舗のすごみでもあるのでしょう。
浪花家総本店の絶品薄皮たい焼きを食べるには?
浪花家総本店は、麻布十番商店街にあります。最寄り駅は、東京メトロ東西線、もしくは都営大江戸線の麻布十番駅。麻布十番大通りを西に向かい、豆屋さんの「豆源」から北に向かって曲がった先にあります。ただし、曜日や時間帯によっては並ぶ覚悟が必要です。ほかに、浪花家総本店で修行をした職人さんが暖簾分けをされて開いている鎌倉浪花家、浅草浪花家、大阪浪花家があります。暖簾分けで開かれた店ならば、浪花家総本店と変わらぬ薄皮たい焼きを食べられるはずです。
浪花家総本店のたい焼きはたい焼きの概念が変わります
初めて浪花家総本店のたい焼きを食べたときは本当にびっくりしました。パリッと香ばしく焼けた薄皮に、しっぽの先までぎっしり詰まったあんこ。それは、それまでのたい焼きの常識をくつがえすものでした。浪花家総本店には「本物のたい焼き」があります。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 『およげ! たいやきくん』のモデルにもなった、東京都麻布十番にある和菓子店の名前は?
A. 浪花屋総本店