富山県のお土産としてよく売られているどらやきは、丸ではなく、どんな形をしている?

どらやきといえば、丸い形のものを想像します。そもそも「銅鑼」焼きですから、銅鑼のような丸い姿を考えるのは正しいわけです。でも、丸以外の形をしたどらやきがあるとしたらどう思いますか?実は富山県には、そんなちょっと変わったどらやきがあるのです。

丸くないどらやきを売っているのはどこ?

三角形どらやきがあるといっても、富山のどらやきがすべて三角形のわけではありません。三角形のどらやきがあるのは、富山市の北部、「岩瀬」と呼ばれるエリアです。富山駅から電車「富山ライトレール」で20分ほどの場所で、終電も日付が変わる前くらいと、かなり遅くまであります。岩瀬は水辺を思わせる名前の通り、富山湾にほど近い港町。江戸時代より、日本海から瀬戸内海を通って大阪・江戸へ向かう北前船の寄港地として栄えてきました。今でも町を運河が流れ、運河クルーズを楽しめる富岩水上ラインが走っています。

三角どらやきは、そんな岩瀬の町で売られているお菓子。国の重要文化財である「北前船廻船問屋 森家」の近くにある、「大塚屋」で売られているものが有名です。三角どらやきは大塚屋の店舗だけではなく、運河に隣接する「岩瀬カナル会館」でも、大塚屋の差ナックどらやきをおみやげとして販売しています。また、「今枝福助堂」という和菓子屋さんでも取り扱っています。名物おみやげでありつつ、手に入る場所は意外と限られるので、入手したい時は場所の下調べが大切です。

三角どらやきはどんな姿?どんな味?

三角どらやきといっても、いわゆる正三角形ではありません。あんこを生地で巻いた四角いどらやきを、斜めに切った姿をしています。このため、普通の丸いどらやきと違い、端が閉じておらず、きらきらしたあんこが断面から覗いています。こぶりな三角形をしているのでとても持ちやすく、つまんで食べるのに最適。どらやきの正しい形は、この形なのでは?そんなふうに思えてきます。

では、そんな三角どらやきの味はどうなのでしょうか?あんはつぶあん。丁寧に炊かれたやわらかな甘みです。普通に想像する丸いどらやきと比べると、かなり皮がもっちりしています。丸いどらやきは端のほうにあんこが詰まっていないことが多いものですが、端のぎりぎりまであんこが来ているところを切り落とした三角どらやきは、たっぷりとしたあんこの食感を味わえます。

一見びっくりする形ですが、よく見れば整然としてすっきり、味も上品でお土産にぴったり。小さな袋に小分けになって入っているので、相手の驚く顔を見たいなら、おもたせとして並べるのもいいかもしれません。あんこの存在感こそありますが、それほど甘みが強いわけではないので、苦みの強くないお茶が合うでしょう。

岩瀬のどらやきはなぜ三角になった?

では、三角どらやきはなぜ三角になったのでしょうか?先述したように、岩瀬は日本海に臨む富山県の港町です。日本海の荒波、という表現があるように、日本海の波はとても荒いものです。特に冬の日本海の波は激しく、打ち寄せるしぶきと厳しい寒風、突き立つように伸びる岩々は、自然の厳しさをひしひしと感じさせます。冬の日本海の波が荒くなるのは、大陸のほうから日本列島に向けて吹く季節風の影響を受けるためです。海面が風でゆさぶられて、荒い波が立つわけですね。

三角どらやきの三角形は、諸説ありますが、この日本海の荒波を表現したものだといわれています。冬の寒い日に甘いあんこのお菓子を食べる、そんななか、沖のほうでうなりを上げている荒々しい日本海は、岩瀬の人たちにとって身近なものでした。港町ですから、お菓子を買っていく客には、町の人だけではなく船乗りたちもいたでしょう。海を身近なものとして生きている船乗りたちにとって、珍しい三角形のどらやきは、自分たちが歓迎されているかのように感じられたことでしょう。

富山に行ったらぜひ三角どらやきをお土産に

富山県は岩瀬の名物、三角形のどらやき。ここでしか買えない、珍しい形のものですが、伝統的な和菓子の製法にのっとった正統派のお菓子です。富山駅からのアクセスも便利なので、富山へ行くことがあったらぜひ手に入れたいお土産のひとつです。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 富山県のお土産としてよく売られているどらやきは、丸ではなく、どんな形をしている?

A.三角