富山県は立山連峰や黒部峡谷など、ダイナミックな自然景観が見所の一つです。雪が山から湧き出て栄養を蓄えながら水深1000m以上の富山湾に流れ込むので、様々な魚介類が育ちます。その内、特産品の赤ガニを紹介します。
赤ガニの特徴と富山ブランド・高志の紅ガニ
ベニズワイガニは北は北海道、南は島根県までと生息域が広いです。生息する水深帯は500~2700mと幅がありますが、中心は1000~2000mです。ズワイガニとの違いは、生息する水深が深いのと、火を通さなくても赤いところです。元々の生息域は、北極海のアラスカ沿岸やアメリカの太平洋および大西洋沿岸、グリーンランド西岸が中心でした。しかし、約1万年前に訪れた氷河期に対処するために南方に移動し、氷河期が終わっても暖流の影響によって日本海から出られなくなってしまいました。そして、冷たい海水を求めて深海域に移動するにつれ体が赤くなり、ベニズワイガニに進化したというわけです。
日本海でベニズワイガニを獲り始めたのは富山県で、1941年のことでした。当時は網にエサの魚を付けて、寄ってきたベニズワイガニを網に絡ませて獲るという刺し網漁が行われていました。けれども、網に絡まるベニズワイガニを取り外すのに時間を要し、鮮度が著しく落ちることと網が傷むのが問題だったため、かにかごなわ漁法に転換されます。かにかごなわ漁法はズワイガニを獲るために北海道が行っていた漁法で、魚津市で漁業を営んでいた浜多虎松さんがベニズワイガニ漁に応用できるようアレンジして漁法を確立させました。これが1962年のことです。その2年後には、全ての漁師がかにかごなわ漁法に転換します。さらにこの方法は、世界中のベニズワイガニ漁で採用されました。
ベニズワイガニ漁で使用されるカニカゴは鉄製で、直径1.5mです。これにエサを取り付け、水深800~1500m付近に沈めて、数日後に引き揚げます。引き揚げ後は水分が抜けるのを防止するために、甲羅を下向きにして並べます。漁港から漁場までの距離が短く鮮度が良い、豊かな水で育つプランクトンのお陰で栄養価が高いという点をアピールすべく、富山県と漁業関係者はベニズワイガニのブランド化を推進しています。ブランド名は「高志の紅ガニ」です。この名称は、漁業関係者の間でベニズワイガニが「赤ガニ」、「紅ガニ」と呼ばれており、昔北陸地方が高志と呼ばれていたところから来ています。また、漁業者の高い志という意味も込めました。
特に品質の良いものは、トップブランド「極上 高志の紅ガニ」としてタグが付けられ、出荷されます。条件は、概ね1kg以上で甲羅は14cm以上、身入りが良く、脚が全て付いているものです。富山湾でベニズワイガニ漁が解禁されるのは、例年9月1日です。漁は5月一杯まで続くので、長い期間流通します。
富山は日本の定置網漁業発祥の地
富山湾は昔から日本一の漁場といわれ、かにかごなわ漁法以外にも多くの漁法が発達してきました。現代では定置網漁を用いた沿岸漁業が中心に行われていますが、この定置網は約400年前に富山湾の漁師が開発した越中式定置網が基になっています。ですから、漁業関係者の間で富山湾は日本の定置網漁業発祥の地として有名です。
定置網漁は、獲りたい魚の種類や潮の流れを読んで、沿岸から2~5km離れたところに網を仕込みます。使う網は垣網と身網(袋網)の2種類です。垣網で回遊魚を捉え、それを追って来た魚を身網(袋網)で捕まえます。富山湾周辺では約160の定置網が仕込まれており、ブリやスルメイカ、マグロなどが水揚げされます。生きたまま水揚げできるため、魚の鮮度が抜群なのがメリットです。このほかにも、八艘張り漁やイカ釣り漁、小型機船底引き網漁など、様々な漁法があります。
例年2月に格安販売が行われるイベントを開催
かにかごなわ漁法を開発した浜多虎松さんの功績を称えて、魚津市では例年2月にイベント「かにの陣」が開催されます。会場は海の駅 蜃気楼という観光物販施設です。格安でベニズワイガニが販売されるので、これに合わせて富山観光に行くのがおすすめです。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 富山湾でよく水揚げされ「赤ガニ」とも呼ばれるズワイガニの一種は?
A.ベニズワイガニ
Q. 富山湾で水揚げされる「ベニズワイガニ」。特に高品質のものは何と書かれたタグが付けられる?
A. 極上 高志の紅ガニ