長崎県民にとって、皿うどんはちゃんぽんと並ぶソウルフードなどといわれます。庶民の味と片づけられないほど、地元の人々に特別に愛されている料理なのです。ただ、他県の人にとっては、皿うどんとかた焼きそばの違いもよくわからないこともありますよね。そこで、この記事では皿うどんとはどのような料理なのか、皿うどんのルーツ、食べ方などを紹介します。
皿うどんは長崎県のソウルフード!かた焼きそばとは何が違う?
皿うどんは、すでに全国区の人気を獲得している庶民の料理と言えるでしょう。九州のメーカーであるマルタイの皿うどんなど、スーパーに行けばいろいろなメーカーから販売されています。そんな皿うどんは長崎県民にとってはソウルフードといわれるほどの料理。ちゃんぽんに匹敵するほどの人気を誇っています。
ただし、長崎県から離れていくほど、皿うどんとかた焼きそばは同じと思っている人の割合が増えるのではないでしょうか。たしかに、野菜、肉、イカ、エビなどの魚介類をあんで絡めていることや、麺がパリパリしているところなど似ていますよね。しかし、長崎の皿うどんの場合、実は細麺と太麺の2種類があります。
このうち細麺のほうが、かた焼きそばに近い見た目になっているのです。細麺は皿うどん専用で、そうめんのように細い麺を油で素揚げすることによって作ります。長崎県民にはその細さが好みのわかれるところであり「極細」や「普通」などいろいろなタイプの細麺が販売されているのです。
ちなみに諸説ありますが、細麺の場合もちゃんぽんがあくまでベースなので「小麦粉に唐灰汁(とうあく)が入ったものを使う」「白菜ではなくキャベツを使う」のが原則といわれています。また、かた焼きそばが一人一皿で食べるのに対し、皿うどんは大皿で分け合って食べるものという長崎県民の風習、こだわりもあるのです。そのため、出前などで皿うどんをかた焼きそば感覚で注文すると、3人分以上がたっぷり入った大皿を前にして、あぜんとしてしまう他県民もいるといいます。
太麺のほうは、おおまかにいうと「汁なしあんかけちゃんぽん」です。あんかけのベースとなっているのはちゃんぽんのスープのため、当然ながら、長崎県民のなかにはこちらが好きな人も多いといいます。しかしながら、細麺好きも負けてはいません。そのため、皿うどんに対する愛が深すぎる長崎県民のあいだでは、太麺派と細麺派の対立がヒートアップすることもしばしばです。
太麺の場合も、小麦粉に唐灰汁が入ったちゃんぽんの麺と同じものを使うのが基本です。ただ、唐灰汁を入れる製法は九州でも一部の製麺業者しか取り扱っていません。そのため、他県に出向くと普通のラーメンの麺が使われていることもあり、長崎県民は肩を落とすなり目をむくなりしているようです。
長崎皿うどんのルーツ!旬はあるの?
そんな皿うどんですが、ルーツは江戸時代にまでさかのぼります。当時、日本は鎖国状態であり、唯一の開港地であったのが長崎でした。そのような外来文化との交流のなか、皿うどんは中国人がもたらした食文化でした。もともと中国人が食べていたのは太麺のほうといわれます。その意味では、細麺に比べてよりオリジナルに近いと言えるかもしれません。
明治になると、中国人から皿うどんの作り方を学んだ日本人が営むお店で出される、野菜や肉、魚介類がたっぷり入った皿うどんは大変な好評となりました。その当時は、麺料理といえば、かけそばやもりそばといった素朴なものしかなかったので、具だくさんの皿うどんはとても食欲をそそる料理だったのです。
この頃の人気メニューは、もやしと肉の皿うどんだったということです。長崎県は豊かな海産物に恵まれた地でもありますから、現代では旬の海産物を使った皿うどんも人気が高い逸品です。また、大村市は野菜の名産地としても知られていますので、旬の春野菜をふんだんに使った皿うどんも人気があります。明治以後も、中国人と日本人の食文化が交流するなかで、細麺を含めた現代の皿うどんの形に徐々に近づいて行きました。よりパリパリとした食感となるように細麺が改良されたり、豚骨や鶏ガラをベースとした独特の柔らかな味になるように工夫されたりして発展してきました。
このように、長崎県は独自の文化と歴史を持つ地域です。たとえば、ポルトガルをルーツとするカステラも有名ですよね。オランダの医師シーボルトの活躍したオランダ商館の後に建てられたシーボルト記念館や、スコットランドの貿易商人グラバーが住んだ住居など、有名な観光名所もあります。おいしい皿うどんと、長崎観光を楽しんでみてはどうでしょうか。
皿うどんには絶対ウスターソース!長崎生まれの「金蝶ソース」とは?
皿うどんを語るにあたっては、長崎県民が絶対に外せないものがあります。それが、ウスターソースです。おそらく、皿うどんに何をかけるかと質問した場合、100%近くの長崎県民はウスターソースと答えるといいます。このあたり「すでに味がついているのになぜ」とか「お酢がおいしいのに」といった他県民の常識は一切通じません。
そんなわけですから、出前を頼んだ際には、ウスターソースが入った容器が何もいわなくても付いてきます。プラスチックの容器が身近でなかった時代には栄養ドリンクが入るような瓶にウスターソースが入っていたほど皿うどんに欠かせない存在なのです。こんな話を聞くと、今度皿うどんを食べるときはウスターソースをかけてみようと思う人もいるかもしれません。それはそれでかまいませんが、できれば本場長崎のウスターソースを使ってみてはどうでしょうか。長崎県民が愛する皿うどん用のウスターソースは「金蝶ソース」です。
金蝶ソースは、昭和16年以来「チョーコー」が販売してきた長崎生まれのソースです。金蝶ソースは長崎の中華料理店の料理人たちと試行錯誤を繰り返して完成したウスターソースであり、皿うどんと同じく異文化交流の歴史によって誕生して地元に根付いてきた調味料と言えます。味はスパイスが効いた辛さが特徴で、これは皿うどんの餡と絡むことを計算して作られています。昔はレシピを残さず、代々、味と感覚で作り方を伝えてきて今に至っているといいますから、歴史を感じますよね。
本場皿うどんを食べるならココがおすすめ!
長崎を訪れたなら、有名店で本場の皿うどんを食べたいという人も多いかもしれません。それなら、長崎県大村市にある「協和飯店」が一番人気です。このお店は、歌手で俳優の福山雅治さんが来店することでも知られており、ポスターには直筆のサインがありますよ。皿うどんだけでなく、ちゃんぽん、そして福山さんが必ず頼むというチャーハンを味わえます。ほかにも、森山直太郎さんなど数多くの芸能人が来店しているお店なので、長崎県に足を運んだ際はぜひ行ってみてはどうでしょうか。
ちなみに、皿うどんをお土産に持って帰るという人も多いでしょう。この場合、近所のスーパーやお土産ショップなどで金蝶ソースを購入しておきましょう。金蝶ソースは、長崎県以外にあまり出回らないウスターソースなので、九州にある他県などでも一般的に見かけることが少ないようです。もし、購入し忘れてしまったら、オンラインショッピングという手段もありますが、そこはやはり現地で購入したいところですよね。長崎空港でも金蝶ソースを買えます。
本場皿うどんを食べに長崎県に行こう!
長崎県の皿うどんは、単なるB級グルメとしては語れないほど歴史を持った庶民の食べ物です。並々ならぬ長崎県民の皿うどんに対する愛を理解するためにも、一度、長崎を訪れてはどうでしょうか。有名店で本場の皿うどんを堪能するもよし、ふらっと定食屋にも入るのもよしです。ただし、少人数で旅行した際などは間違って大皿を頼んでしまわないように気を付けましょう。もちろん、皿うどんにはウスターソースをかけてみてくださいね。今までと違った皿うどんのおいしさをきっと発見できるでしょう。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 本場長崎の「皿うどん」の食べ方。何をかけるのが一般的?
A.ウスターソース
Q. 長崎名物「皿うどん」は、どこの国から伝わった料理?
A.中国
Q. 長崎名物「皿うどん」。「かた焼きそば」との違いは?
A. 細麺と太麺の2種類がある