室見川(むろみがわ)は、福岡市内を流れ博多湾にそそぐ川です。この川に、ある魚を獲るための「梁(やな)」と呼ばれる仕掛けが現れると、福岡市民は博多に春が来たと感じるそうです。「踊り食い」という珍しい食べ方で食べられるこの魚は一体何でしょうか。
ノドで味わう「シロウオ」の踊り食い
福岡市の春の風物詩のひとつ「シロウオ」。白魚は体長約4~5センチほどのハゼの仲間で、白くて透き通った小さな魚です。シロウオの他には見ない変わった食べ方が「踊り食い」というもの。水が張られた大きな器の中で泳ぐ生きたままのシロウオを、あく取りのような網ですくって自分の器に入れ、酢じょうゆなどかけていただきます。口の中でシロウオがピチピチと飛び跳ね、動きまわるのをそのまま呑みこみ、そののどごしを楽しみます。噛んでみると思いのほか歯ごたえがあり、ほろ苦さとほのかな甘さを感じることができます。シロウオの身は淡白な味わいなため、天ぷらや佃煮などにしてもおいしくいただけます。
シロウオは博多湾で成魚となり、鮭と同じように産卵のため室見川へ帰ってきます。満潮で川をのぼってきたシロウオを捕らえるのが、「梁(やな)漁」です。梁漁は300年以上も前から伝えられてきた伝統的な漁で、現在、福岡県で行なわれているのは室見川だけだそうです。
シロウオについて
シロウオはハゼ科の小魚で、太平洋側では北海道から岡山県、日本海側ではサハリンから熊本までと、朝鮮半島からウラジオストックまで広い範囲で生息しています。ちなみに、よく間違われるのですが、シロウオを漢字で書くと「白魚」ではなく「素魚」と書きます。シロウオは産地によって様々な名称があり、茨城や徳島では「氷魚(ヒウオ)」、福井あたりの北陸の地域では「イサザ」と呼ばれています。また、広島や関西では「白魚(シラウオ)」と呼ばれ、本来のシラウオと混同されやすくなっています。
シロウオもかつては各地でたくさん獲れたようですが、近年はその漁が激減し、現在では高級魚のひとつとなっています。収穫量が減った大きな原因のひとつとしてシロウオが遡上し産卵できるきれいな水と砂利のある川、そして孵化した稚魚が過ごせるきれいな海岸などが開発によって減少してしまったからだといわれています。
福岡市でシロウオが食べられるお店
室見川に面して建つ「お魚会席 三四郎」は、比較的リーズナブルに割烹料理がいただける人気のお店。隣で営業している、水炊きが食べられる老舗「とり市」の姉妹店です。2月頃からシロウオが提供され、コースでいただくのがおすすめ。シロウオの踊り食いはもちろん、玉子とじ、天ぷら、佃煮、お吸い物とシロウオ料理を満喫することができます。
「シラウオ」とは違う魚
名前が似ているので混同しがちですが、「シロウオ」と「シラウオ」は別種の魚。
シラウオは漢字では「白魚」と書き、シラウオ科の江戸っ子になじみの深い魚。江戸前寿司でも昔から握られ、軍艦巻きに豪快にのせられていることが多いです。春になると産卵のために川に入り、昔は隅田川にも姿を見せたので江戸の春の風物詩だったようです。かの徳川家康がこの魚が好物だったという記録もあり、池波正太郎の著書によく描かれている江戸っ子の食卓にもよく登場します。旬は冬から早春で、シロウオと同じく春を知らせる魚です。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 福岡市を流れる室見川でよくとれる、踊り食いの定番となっている魚は?
A. シロウオ