青森県の南部地方で栽培されている阿房宮という品種の花は、日常的に南部地方の食卓に並びます。青森県の特産品である阿房宮についてくわしく説明します。
伝統野菜として地域で親しまれてきた阿房宮
阿房宮は鮮やかな黄色が美しい八重大輪咲きのキクの花で、古くから食用として南部地方で栽培されてきました。秦の始皇帝が建てた宮殿・阿房宮が名前の由来で、「食用菊の王様」と称される花です。香りが良く甘味があり、シャキシャキとした歯ごたえが特徴です。さっと茹でておひたしや酢の物にしたり味噌汁に入れたりと、今も地域の伝統野菜として日常的に食べられています。青森県の南部地方は、県内でも一年を通して気温の寒暖差が激しい地域です。冬は連日最低気温を記録する割には降雪量が少なく、夏も連日最高気温を記録します。このような気候が農作物の栽培に適しており、阿房宮をはじめさくらんぼや長芋などの特産品が数多く生産されているのです。
阿房宮は10〜11月に収穫時期を迎え、ひとつずつ鎌で刈り取られます。鮮やかな黄色の阿房宮がびっしりと詰められた箱を贈答品としたり、農家からお裾分けされたりすることも多いそうです。花びらは生のままでも食べられますが、乾燥して「干し菊」にしてから食べるケースが一般的です。収穫された阿房宮の花びらをがくからはがし、蒸してから干し上げます。乾燥させることで旨みと香りが凝縮され、保存がきくので一年中菊料理を楽しめます。干し菊はスーパーや土産店で買うことができます。
おいしい阿房宮は効能もすごい
阿房宮は香りと甘味がある風味豊かな伝統野菜ですが、基本的にはクセが少ない淡白な味なので、どんな料理にも合わせやすい食材です。三杯酢やだいこんおろしとあえてさっぱりといただいたり、味噌汁に入れるのが定番の食べ方ですが、煮物や炒め物に加えてみるのもおすすめです。汁物に干し菊をそのままパラパラとまぶせば、椀の中が一瞬にして鮮やかに彩られます。即席麺に干し菊を散らせば、偏った栄養バランスも補うことができます。
日常野菜として手軽に食べられている阿房宮ですが、実は滋養効果に優れた栄養価の高い食材としても知られています。中国では古くから菊は薬草として扱われ、薬膳として用いられてきました。抗酸化作用があるビタミンEを豊富に含み、アンチエイジングや眼精疲労の緩和に効果的です。解毒作用のあるグルタチオンは体内のデトックスをうながし、カリウムは高血圧やコレステロールの抑制に役立ちます。また、豊かな菊の香りはストレスやイライラも解消してくれることでしょう。
干し菊や菊サイダーが買えるA-FACTORY
青森県の南部地方は、グルメの宝庫でもあります。日本屈指の漁港の町で知られる八戸市の郷土料理・せんべい汁は、B-1グランプリで常に上位に食い込み、2012年、遂にグランプリを獲得して一躍有名になりました。また2014年には十和田のバラ焼きもグランプリを獲得するなど、地域色豊かな食文化が育まれています。今は「珍しい食材」の阿房宮も、全国に知られる日がくるかもしれません。珍しいと言えば、阿房宮で作った「菊サイダー」なるご当地ドリンクがあるそうです。地元の青果店が開発したという菊サイダーは、淡いパステルイエローがさわやかで、フタを開けるとしゅわっとはじける炭酸の音とともに、阿房宮の甘い香りが漂います。菊サイダーは青森県の特産物や土産物が豊富に揃う青森市のA-FACTORYなどで購入できます。A-FACTORYではもちろん、干し菊も販売しています。
花を食する生活をもっと身近に
おしゃれなカフェやレストランでは、西洋の食文化を真似て、エディブルフラワーと呼ばれる食用花を料理に添え提供しています。味が良く目にも麗しい日本のエディブルフラワーが阿房宮です。機会があればぜひ一度食べてみてはいかがでしょうか。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 青森県で食べられている「阿房宮」といえば、どんな花の種類?
A.キク