鹿児島の大衆和菓子のひとつで、小豆やヨモギをねりこみ、香りの良いサルトリイバラの葉で包んだ鹿児島の郷土菓子のことをご存じでしょうか。鹿児島では5月の節句に「あくまき」と呼ばれるもちと一緒に出される事が多いとされている和菓子です。
鹿児島の郷土菓子「かからん団子」
かからん団子とは、鹿児島県でつくられている草餅の一種です。
主にの薩摩半島中部~南部・大隅半島、種子島、屋久島でつくられており、小豆やヨモギをねりこんだ餅を黒餡などでつつみ、それを「かからんの葉」(サルトリイバラの葉)で包んだものをさします。
葉の中に入れる団子は小豆のさらしあんやよもぎいりの2種類が主ですが、さつまいもをふかしたものを入れたり、黒砂糖を入れる地域もあります。団子を包む葉も、地域で使われる種類や枚数も変わるようで、かからんの葉以外に、けせんの葉などを使用する事もあるようです。春に食べられる事が多いため、いずれの葉も春を感じさせるものになっています。
「かからん団子」はその見た目とは違い、甘さひかえめのやさしい味です。しっとりした舌触りで、口に入れると、よもぎの香りと共にやわらかく溶けていきます。また、あっさりとした甘さと食べた後にほんのりと残る塩味とのハーモーニが絶品です。
戦前の鹿児島の農村部では、「ふっきぃい餅」と共に一部で手作りされていました。また、これまでは家庭で作られることが多く、販売店も地元の和菓子店が細々と作っている大衆和菓子という位置でしたが、地元の特産品として見直され、鹿児島を代表する銘菓として広く販売されています。今日では、観光客などにも鹿児島のお土産として知られるようになりました。
かからん=かかわらない?
「かからん団子」は「かからんの葉」で包んでいるからそう呼ぶのだという事はお話しましたが、では何故「サルトリイバラ」の事を「かからん」と呼んでいるのでしょうか。
かからんの葉には殺菌作用があり、団子をくるむ事で「病気にかからん(かからない)」という鹿児島弁から来ているそうです。
この事から、伝統的に病気や災厄を避ける行事にも食されてきたお菓子なのです。
また、手で触るとトゲが刺さる事から「関わらない」「かかわらん」という「さわらないように」という意味である。という説もあります。
かからんの葉は若葉である5 – 6月頃に採取し、その後収穫される実も食べる事ができます。
かからんは「サルトリイバラ」
鹿児島県の方言で「かからん」の葉っぱ、「サルトリイバラ」の葉で包む草餅や草団子などにも使用されている葉っぱをかからん葉と呼んでいます。
「サルトリイバラ」は漢字ですと「猿捕り茨」となり、この植物のつるや茎にはとげがあり、「これではサルも思うようには動けず、人間に捕らえられてしまう」「猿をとるイバラ」という意味があるそうです。
サルトリイバラは別名が沢山あり、サンキライ、ガンタチイバラ、カラタチイバラ、カカラ、カメイバラ、コバンノキなど多数あります。
主に生け花の世界では「サンキライ」という名前で使用されており、水持ちの良い果実や葉、また節ごとにジグザグに折れ曲がる特徴的な枝が花材としてちょうほうされています。
ちなみにサンキライという名前は「山帰来」と書きますが、病気を患って村を追われた男が、このサンキライでなおり無事に村へ帰ってこれた。という説と、山の珍しい食糧を包む葉という意味の「山奇粮(さんきろう)」がなまったのではないかという説があるようです。
実際にサルトリイバラの根茎を乾燥させると、「和山帰来」という漢方薬になり、「にきびなどの腫れ物や、できもの、むくみのときの利尿作用等」などの効果が期待されているようです。
ザ・ご当地検定の問題
Q. ヨモギなどを練りこんだ、鹿児島の大衆和菓子は?
A. かからん団子