甘すぎない餡子と、もっちりした皮が魅力の「阿闍梨餅」は、家族や親戚はもちろん職場への手土産としても人気です。食べたことのある方も多いのではないでしょうか。ここでは、意外と知らない阿闍梨餅の由来などをお伝えします。
「阿闍梨餅」ってんなお菓子?
阿闍梨餅(あじゃりもち)は京都の和菓子屋「満月」の看板商品のひとつです。1922(大正11年)に「満月」の二代目当主によって生み出されました。もともとは京都近郊の人以外にはあまり知られていないお菓子でしたが、口コミやメディアへの露出により、その美味しさに魅了される人が続出。すっかり定番のお土産になりました。京都の伊勢丹では行列ができるほど人気です。
和菓子の区分としては半生菓子で、餅米ベースの生地にたっぷりの粒餡が挟まった、モチモチの食感が特徴です。甘さが控えめながら味わい深く、ひとつ食べたらもうひとつ食べたくなる魅力があります。
粒餡に使われている「丹波大納言小豆」は、大粒で色艶がよく、甘さと風味が豊かで、そのうえ皮が薄く口当たりがいいという、和菓子作りに最適な品種です。ただし収穫できる量は少なくて、出回り量は一般的な小豆の1%とも言われている高級小豆なのです。阿闍梨餅の口当たりの良さや控えめなのにしっかりとした甘さは、この小豆にも秘密があったのですね。
名前の由来は?
阿闍梨餅(あじゃりもち)の名前の由来は、高僧を意味する梵語「阿闍梨(あじゃり)」です。日本では天台宗・真言宗の僧位を表します。修行中の僧が餅を食べて飢えをしのいだと言われていることから考案されました。円盤型で真ん中がぽこりと出ている阿闍梨餅の独特の形は、僧が修行時に被る「笠」を模しているそうです。比叡山のふもとにある「満月」だからこその着想ですね。
ちなみに「阿闍梨」が比叡山で行う修行の厳しさは生半可なものではなく、その内容を聞くと阿闍梨餅のありがたみが増すこと請け合いです。阿闍梨がおこなう「千日回峰」という修行は、比叡山の峰や谷を7年がかりでほぼ1千日かけて巡るというもので、歩行距離は地球1周分(約4万km)に相当するそうです。しかも、ただ歩くだけではありません。修行を始めて700日後には、水・食料、そして睡眠も断った状態で不動真言を10万回唱える「堂入り」という行が9日間課されます。そして山中だけでなく京都市内も礼拝して、ようやく満行になります。相当に過酷な内容ですが、そのうえ、この修行は「行が半ばで挫折するときは自ら生命を断つ」覚悟で挑むべきものとされています。
阿闍梨餅の落ちついた色彩のパッケージには、修行僧のストイックさが象徴されているのかもしれません。
こだわりの和菓子屋「満月」
阿闍梨餅を生み出した「満月」は1856年(安政3年)の創業です。幕末の動乱で京都府を出ましたが、明治初年に再び戻り、その後戦争による疎開で現在の店舗、左京区田中大堰町へ移ったという歴史があります。
この「満月」は「一種類の餡で一種類の菓子しかつくらない」という方針でお菓子を作っているそうです。お菓子という一つの作品を作り上げるために、最適な組み合わせを追求したら必然的にそうなるという考えです。阿闍梨餅(あじゃりもち)の皮と餡子のハーモニーが絶妙なのも納得ですね。
なお、本店では焼きたての阿闍梨餅を食べることができます。お土産用にパッケージされているものよりも、生地がしっとりしていて柔らかさを楽しめます。阿闍梨餅は京都駅や百貨店でも購入できますが、せっかくなので焼きたてを食べに本店へ寄ってみませんか?お茶と阿闍梨餅で一息つくのは、京都のよい思い出になりそうです。
京都土産に阿闍梨餅(あじゃりもち)
和菓子激戦区の京都には気になるお菓子がたくさんありますが、おいしくてクセのない阿闍梨餅(あじゃりもち)は、誰にでも差し入れやすくておすすめです。まだ食べたことのない人は、ぜひ一度おためしください。人気なのも納得の味ですよ。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 京都伊勢丹では行列ができるほど人気の京都土産の定番「阿闍梨餅」。何と読む?
A.あじゃりもち
Q. 京都の定番土産「あじゃりもち」を製造している店の名前は?
A.満月