長崎には、遠い異国からもたらされた味が、鎖国の時代を迎えながら、今なお受け継がれている料理があります。ポルトガルの宣教師が伝えたシチューが、長崎の風土や土地の食材と出合い、独自の進化を遂げて長崎ならではの料理となりました。今回は、その成り立ちをひもといていきましょう。
長崎の郷土料理ヒカドとは?名前の由来はポルトガル語
戦国時代末期から安土桃山時代にかけて、長崎にはポルトガルから宣教師や貿易に携わる人たちが多く訪れていました。彼らは寒い時季になると、牛肉や豚肉を使ったシチューを口にしていたとされています。異国の味が地元の人々にも広まり、長崎で採れる野菜や鶏肉、魚を使う長崎独自の料理へと変わっていったと考えられています。
江戸幕府による禁教令や鎖国政策で、牛肉や豚肉、パンなどの食材は手に入りにくくなり、代わりに地元で採れる魚や野菜が使われるようになりました。とろみをつける材料も、もとはパンでしたが、すり下ろしたさつまいもを用いる方法へと切り替わったという記録が残っています。
江戸中期に記された料理本には、中国風の調理法を取り入れた南蛮料理の一種として紹介されています。当時の具材には、鶏肉やエビ、イカ、大根などが用いられていたそうです。長崎では家庭料理にとどまらず、長崎名物の卓袱料理に含まれる一皿としても供されるようになりました。
ヒカドが長崎で愛され続ける理由
ヒカドは、すり下ろしたさつまいもでとろみをつけた、具だくさんの汁物です。もともとは秋から冬にかけて気温が下がる時季に、体を温める家庭料理として親しまれてきました。大根や人参、鶏肉や魚介など、栄養バランスのよいさまざまな食材が入っているため、現在では季節を問わず食べられる定番料理になりました。
また、長崎県内の複数の学校では、給食のメニューにも取り入れられています。地元で採れる大根などの食材を使いながら、子どもたちに地域の味を知ってもらう取り組みが続けられています。家庭で食べる機会が少なくなった料理でも、給食を通じて郷土の味を感じられる大切な機会です。
卓袱料理は、円卓を囲んで和洋中の様々な料理を楽しむ、長崎ならではのおもてなし料理です。家庭では日常の汁物として食べられる一方、卓袱料理に加わることで、お祝いの席にも花を添える料理になります。
ヒカドの食べ方とアレンジレシピ
ヒカドの基本の具材は、大根や人参、干し椎茸、豚肉やブリなどです。食材はいずれも1.5センチほどの角切りにしてから、だし汁と椎茸の戻し汁を合わせた鍋でじっくり煮込んでいきます。仕上げにすり下ろしたさつまいもを加えてとろみをつけ、醤油や塩で味を調えれば完成です。
ヒカドに使う魚は、ブリのほかにマグロが選ばれることもよくあります。家庭によっては、比較的手に入りやすいビンチョウマグロなどを使い、身近な食材で独自の味に仕上げてきました。豚肉と魚を組み合わせて、旨みとコクを引き立てる作り方をする家庭もあります。
近年では、豆乳や牛乳を加えてまろやかさを出すなど、家庭ごとに工夫を取り入れた作り方も見られるようになりました。少量の生姜やこしょうを効かせた、洋風の風味も人気です。定番の作り方を大切にしながら、季節の野菜や旬の魚を取り入れ、一年を通して違った味わいを楽しむ人もいます。
ヒカドを味わう方法・購入方法
ヒカドはもともと家庭で作られてきた料理のため、ヒカドを専門に扱う店は多くありません。長崎市内の卓袱料理店や、郷土料理を扱う昔ながらの料亭では、コースに含まれる料理としてヒカドを味わえることがあります。
ヒカドを商品化した通販は、あまり見られません。長崎産の乾物やだし、すり下ろし用のさつまいもなど、地元ならではの材料を取り寄せて、ヒカドの味を再現できます。旬の魚は、近くのスーパーや鮮魚店でも購入できるため、家庭でも作りやすいでしょう。
家庭で作る際、すり下ろしたさつまいもは、皮をむいたあと10分から15分ほど水にさらし、アクを抜いておくと色よく仕上がります。具材は大きさをそろえて切ることで、火の通り方が均一になり、味のムラを防げます。とろみをつける際は煮立たせすぎないよう、弱火でゆっくり煮込むのがポイントです。
ヒカドは、ポルトガルから伝わったシチューが、長崎の食材と歴史を経て生まれた郷土料理です。栄養豊富な具だくさんの汁物として、給食や卓袱料理の場でも大切にされてきました。基本のレシピをもとに、魚や肉などのアレンジも試しながら、ぜひ自宅でも作ってみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q.ポルトガル宣教師が伝えた和風シチュー、長崎の郷土料理の名前は?
A.ヒカド









