東京下町のグルメ「文化フライ」といえば、何が入ったフライ?

フライというと、ハムカツやアジフライなどの具材が入っているものを思い浮かべるでしょう。しかし東京都の下町グルメ「文化フライ」はひと味違います。東京が生んだ文化フライについて紹介しましょう。

下町の子どもに大人気だった「文化フライ」

文化フライが他のフライと一線を画すのは、中に具材が何も入っていない点です。見た目はハムカツのような楕円形で厚みもありますが、実はその中には何も入っておらず、衣だけなのです。割り箸や串に刺さった楕円形のフライはたっぷりのソースをかけて食べる、いわゆるB級グルメと言うにふさわしい佇まいをしています。衣だけなんて食べ応えもないんじゃないか、と思うかもしれません。しかし文化フライが登場した昭和30年代の下町の子どもたちには大好評で、発祥地である東京都足立区のみならず、松戸市や船橋市などの千葉西部他、関東各県にも人気が広がりました。今なお根強い人気を誇る下町グルメの1つなのです。

衣だけで中身はなし、縁日で子どもでも気軽に買える、となると気になるのはその値段でしょう。昭和30年代当時は5円で販売されていました。物価の値上がりに伴って10円、30円、100円、150円と値上がりしましたが、それでも縁日で子どもが気軽に買える値段と言えるでしょう。子どもが気軽に買え、満腹感を味わえる縁日での特別なローカルフードとして文化フライは広がっていったのです。

文化フライの「文化」って何だろう、と思った人も少なくないでしょう。同じく「文化」がつくものとして「文化包丁」や「文化鍋」を聞いたことがあるという人もいるのではないでしょうか。戦後「文化」という言葉が流行り、新しいものには「文化」をつけて売る流れがありました。「文化包丁」や「文化鍋」同様、「文化フライ」もまたこの流行の波にのり、「文化」を冠して名付けたと言われています。そんな昭和30年代に登場した新しいローカルフードである文化フライですが、気になるのはその味ではないでしょうか。衣だけでソースをつけたフライは、一体どんな味がするのでしょう。

本来のレシピは明かされていないため正確なレシピは不明ですが、大体の作り方は分かっています。まず小麦粉を練ったものをワラジ形に整え、パン粉をまぶして揚げます。特製のソースをかけて食べるため味付けはソースだけ、と思うでしょう。実は衣にも味がついているのです。衣にはガムシロップで味がつけられており、ガムシロップのほのかな甘みとソースの酸味が絶妙な味わいをもたらしてくれます。この文化フライを考案したのは、東京都足立区の「長谷川商店」です。主に関東三大師の1つである西新井大師の縁日で露店を出し、根強い人気を誇っていましたが、2000年頃に縁日での販売は止め、店舗のみの販売となりました。しかしその後考案者が亡くなり、レシピも明かされていないため幻の食べ物となりかけています。

今はどこで食べられる?

かつては縁日で気軽に食べられた文化フライですが、現在は考案者が亡くなり、レシピも不明のままとあって絶滅寸前となっています。しかし熱烈なファンにより、現在では東京都足立区のお好み焼き店で提供されています。このお店では文化フライを仕入れてメニューにのせていた過去があり、その記憶をもとに復刻版の文化フライを作り出したのです。また、足立区発祥のローカルフードとして、足立区立郷土博物館には文化フライの食品サンプルが展示されていたり、特別展として文化フライについての講演会や試食会を行ったりなど、足立区を挙げて文化フライを後押ししています。

文化フライは、東京都の知る人ぞ知る下町グルメ

東京都の下町グルメの1つ「文化フライ」は、1度は絶滅しかけたものの、熱烈なファンや発祥の地である足立区を挙げての後押しもあり、現在にも生き続けています。揚げたてを頬張り、子どもの頃に味わった縁日の気分に浸ってみてはいかがでしょうか。

ザ・ご当地検定の問題

Q. 東京下町のグルメ「文化フライ」といえば、何が入ったフライ?

A.何も入っていない